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『続・オールマホのすゝめ』オールマホの音色の魅力とは。

前回の記事では見た目の話題に終始してしまったので、オールマホの音色についてもまとめておこうというのが今回のテーマになります。 オールマホはもともとサイドバックの材として多く使われている材ですからね。振動特性が優れているわけではありません。そのため、帯域が狭く、倍音が少ない音色が特徴となります。 私が今まで弾いてきたオールマホで考えると大きく分けると「もちっと系」と「ガシャガシャ系」に分類できると考えています。 もちっと系は、柔らかい音、暖かい音と形容されることが多いですね。フィンガースタイルで優しいタッチで弾いてあげると他の材では決して出すことのできない美音を奏でてくれます。 例えば私が以前所有していた0-17などはまさにこのタイプで、優しく弾くととんでもなく美しいもちっとサウンドを響かせてくれました。硬質な材を使ったギターでは決して出すことのできない音色です。 また、小型のパーラーギターとして人気の高い2-17などもテンションの弱いコンパウンド弦を張ってあげるとなんとも言えない優しい音色を奏でてくれますよ。ピッキングした時のエッジ感は弱いのですが、その分、ジャジーなフレーズなどによく合う音色だと思います。 一方、ガシャガシャ系は真逆の音色で、倍音が少なく、箱なり感も弱いので弦鳴り感がより強調されるイメージでしょうか。ピッキングした時のエッジ感やザクザク感で勝負するような感じですね。 余計な倍音はありませんので。この方が歌に合わせやすいという方もいらっしゃると思います。また、エレアコとして使うのであれば、余計な倍音がないので、エフェクターなどで音作りもしやすいかもしれません。 多くの方がイメージされるオールマホの音色は後者のガシャガシャ系なのかと思います。前者はマーティンにしろ、ギブソンにしろ戦前のギターに多い特徴ですね。オールマホという要素に加えて何十年も熟成されたヴィンテージ・マホガニーというのも理由のひとつなのかもしれません。 いかがでしたでしょうか。オールマホだからと言って全てが同じ音でもないし、もちっと系とガシャ系の中間に位置するようなギターもありますし、弾き方を変えるだけでもちっと系にもガシャ系にもなるギターもあります。 オールマホ=泥臭いみたいな先入観に囚われることなく、唯一無二の圧倒的なビジュアルと持ちつつ、自分の出したい音色のギターを見つけられると...

『続・オールマホのすゝめ』オールマホを選ぶ理由。

  クロサワ楽器さんの企画で00-17 Authentic 1931を弾く藤原さくらさん 今年に入って、Blue-GさんやHobo'sさんに戦前モノのオールマホガニーの名器「Gibson L-0」や「Martin 0-17」の入荷が続いたためか、オールマホで検索された方のアクセスが増えているんですよね。ありがたい話です。 とはいえ、人気のギターですからね。入荷したらすぐにホールド、ソールドアウトとなってしまうわけで。お茶の水に通っている私でさえ、なかなか実物を見ることもできませんし、ましてや遠方の方となると、なおさらですよね。 そこで、私自身が「Martin 0-17(1935年製)」や「Martin 2-17(1927年製)」を所有していたこともありますので、何かの参考にでもなればいいかなと思い、オールマホを選ぶポイントについて、考えをまとめておきたいなと思いました。 実際に自分で所有してみて、そして色々なギターを弾いてきて思ったこと、それは突き詰めると「見た目のインパクト=オールマホを選ぶ理由」なのかなと考えるに至っています。 一般的には「オールマホ=渋い、素朴」といったイメージからブルースに合うと思われる方が多いように感じていますが、私的にはそんな印象はないんですよね。むしろ、「お洒落でかわいらしいギター」だと思っています。 というのも、ブルースに求められるサウンドでは、ピッキングしたときのエッジ感であったり、低音のグルーヴ感などが重要になると思うのですが、そういった音を出せるギターは、スプルーストップのものでも存在するんですよね。いや、むしろスプルーストップの方が合うのではないかとさえ個人的には思っています。 やはりオールマホは、独特の帯域の狭さや倍音の少なさが特徴だと思いますし、それをどう活かして使っていくのかがポイントになるのだと思うわけです。 そして、歌モノとの相性としてはソフトなヴォーカルに合うと思います。使用ギターの例としては、海外だとジャクソン・ブラウン(1950年代のMartin 00-17)、国内だと藤原さくら(1943年製のMartin 00-17)が愛用していますね。 偶然、二人ともダブルオーサイズを選んでいるわけですが、弾き語りでの合わせやすさという意味でコダワリのボディサイズかもしれませんね。シングルオーよりもストロークがまと...

私がマホガニーに惹かれたもう一つの理由『オールマホのすゝめ』

友人のオールマホ『Gibson L-0(1928年製)』 私がマホガニーに惹かれたきっかけは、マーティンのゴールデンエラシリーズでした。 まさに「開眼」というやつで、アディロンダックスプルースとマホガニーの組み合わせに可能性を感じてしまったんですよね。 ↓↓↓ マホガニーのすゝめ その後、同じアディロン・マホの組み合わせであるオーセンティックシリーズや、 ギブソンのレジェンドシリーズ、 さらには貴重なヴィンテージのギターを試奏していくうちに、 その思いは確信に変わっていきます。 アディロントップならではの艶、コシ、音の太さは、音響特性に劣るマホガニーの短所を補い、長所を引き出す組み合わせなのだなと。 その一方で、純粋にマホガニーの甘さや優しさといった個性を「もっと濃く」味わえる組み合わせはないのかなと、考えるようになっていきました。 それは「オールマホガニー」のギターでした。 もともと、ブルースやラグタイムといった音楽が好きだったこともあり、いつか、渋いオールマホのギターを手に入れたいと思っていたんですよね。 ということもあって、昔からオールマホのギターを見つけるたびに、試奏をするようにしていました。 でも、なかなか良いものに巡り合えなくて。 ところが、ある日、凄いオールマホと出会ってしまったのです。 それまで、オールマホのギターといえば、とにかく軽い音というイメージでした。 悪く言うと、チープでスカスカな音ですね。 これが一般的なオールマホに対する認識ですし、そもそも廉価版という位置づけのギターなので、これがオールマホが目指した音作りなのでしょう。 でも、私が出会ってしまった個体からは、全く違う音色が飛び出したのです。 艶やかで、濃密で、気品すら感じさせる美しい音色。 少しダークで陰りがあり、でも、ウッディーで温かい質感もある。 ダイナミックレンジは狭いですが、その狭い帯域の中での圧倒的な存在感。 「なんだこれは!」となったわけです。 マホガニーの種類が違うのか、作りによるものなのか、熟成のされ方が違うのか。 その理由はわかりません。 でも、音だけは確実に違うのです。 ある意味、アディロンマホ以上の衝撃を感じてしまったのです。 次回は、そんなオール...

エボニーロッドの「OM-18 Authentic」に惹かれる。

「Martin OM-18 Authentic 1933」 エボニーロッドの素朴で明るいキャラクターがあまり好みではない私。 でも、最近、気になっているエボニーロッドがあるのです。 それは「 OM-18 Authentic 1933 」です。 オーセンティックというと、 Tバーロッドの復刻 というイメージがありますね。 でも、このギターには エボニーロッド が使われているのです。 というのも、、、 オリジナルのOM が作られていたのは 1930~33 年ですからね。 まだ、 エボニーロッドが使用されていた時期 なのです。 新品のエボニーロッドはどのような音なのか、興味深いですよね。 というわけで、実際に試奏してきました。 軽やかで、ウッディ―な質感が素晴らしい! そこに、いかにもマーティン!といった 美しい倍音 が乗ってきます。 ロッドが軽い分、サステインは弱くなってしまいますが、 明るいサウンドキャラクター と OMならではのエッジの強さが、とても魅力的です 。 とりあえず、こちらのYouTubeを見て下さい。 ↓↓↓ 「 OM-18 Authentic 1933 」 いやー、新品でこの音には参りました。 今まで、 D-18 Authentic 1937 D-18 Authentic 1939 000-18 Authentic 1937 といったマホガニーのオーセンティックを試奏したことがありますが、 ビンテージ感という意味ではこの「OM-18」が別格ですね 。 きっと、軽量のエボニーロッドの特性が、ギター全体の振動効率をあげて、良い鳴りを引き出しているのだと思います。 これから年月を経ることで、この若いエボニーロッドがどのように成長していくのか、楽しみですね!

ヴィンテージのアディロン・マホを考える その②

アディロントップの「Sakata Guitars 00-28B」 1950~60年代のトップ材は、基本的には シトカスプルース です。 そのため、アディロントップのギターは「 稀に存在 」するレアな存在なのです。 ただ、J-Guitarを丹念にチェックしていると、たま~にですが見かけることがあります。 当然のことながら、人気があるので、良い個体はすぐにHOLDされてしまうのですが。 その際、ちょっと気になっていたことがあります。 それは「 やけに、スモールサイズが多いな 」ということです。 そういえば。。。 昨年の夏に、坂田さんの工房にお邪魔した時のことを思い出しました。 過去記事 ↓↓↓ 坂田ギター(Sakata Guitars) 私がトップ材を選んでいた時のことです。 「 ドレッドノート用になると、良い材は限られてくるんだよね 」 と坂田さんが仰られていたんです。 どういう意味かというと、、、 良い材でも、板のサイズや木目の関係で、 ドレッドノートを作るだけの面積をとれないことがある 。 でも、OMやダブルオーといった小さいサイズであれば、 少ない面積で済むので、良い材の選択肢が増える可能性がある 。 ということです。 もしかすると、当時のマーティン社でも、ドレッドノートサイズで使える材は枯渇してしまったが、 スモールサイズであれば、使えるアディロンが残っていた のではないかと。 この仮説が正しければ、スモールサイズ好きの私にはチャンスが広がります。 そして、1950~60年代以降であれば、値段も落ち着いてきますし、アディロントップであっても、通常のシトカスプルースに少しプレミアが付いた程度ですみます。 というわけで決めました。 1950~60年代のアディロン・マホを手に入れようと!

ヴィンテージのアディロン・マホを考える その①

アディロントップの「Martin D-18GE」 私は、マーティンのゴールデンエラシリーズで、アディロンダックスプルースとマホガニーの魅力を知ってしまいました。 そうなってくると ヴィンテージのアディロン・マホが欲しい! と考えてしまうのが、人間の性というものですよね(笑) ということで、 ヴィ ンテージのアディロン・マホ探し を今年のもうひとつのテーマにしたいと思います。 早速、調査開始です! 伝統的にマーティンでは、トップ材にアディロンダックスプルースを採用していたんですね。 でも、乱伐によってアディロンは枯渇してしまったので、1946年からシトカスプルースを使うようになりました。 つまり、、、 「 ヴィ ンテージのアディロン・マホ=1946年以前のもの 」 ということになります。 その中でも、仕様違いがいくつかあるので、整理してみましょう。 ①「~1934年」   エボニーロッド、スキャロップブレーシング、12Fジョイント、ナット幅46~47ミリ ②「1934~1938年」   Tバーロッド、スキャロップブレーシング、14Fジョイント、ナット幅44.5ミリ ③「1938~1941年」   Tバーロッド、スキャロップブレーシング、14Fジョイント、ナット幅42~43ミリ ④「1941~1944年」   エボニーロッド、スキャロップブレーシング、14Fジョイント、ナット幅42~43ミリ ⑤「1944~1945年」   エボニーロッド、ノンスキャロップブレーシング、14Fジョイント、ナット幅42~43ミリ ⑥「1945~1946年」   Tバーロッド、ノンスキャロップブレーシング、14Fジョイント、ナット幅42~43ミリ などなど。 これ以外にも、ブレーシング位置や、トップ・プレート・ブレイスの有無、ペグやフレットなどの変更もありますね(1945年のTバーは、過渡期ということもあり、諸説あるようです)。 この中で、私がポイントだと考えているのが「 ロッドの材質の違い 」です。 従来、マーティンでは、 木製のエボニーロッド を採用していました。 それが、スチール弦の流行により、ギターに堅牢性が求められるようになって、1934年に採用されたのが 鉄製のTバー...

ショートスケールのアコギについて考える その③

ロングスケールのD-18GE(2004年)とショートスケールのOOO-18GE(2006年) 今回はショートスケールのデメリットについて、考えてみたいと思います。 ※過去記事はこちら ↓↓↓ 「 ショートスケールのアコギについて考える その① 」 「 ショートスケールのアコギについて考える その② 」 私が尊敬する中川イサト師匠、岸部眞明氏などなど。 ギターインストの世界では、変則チューニングを使われる方が多いですよね。 ギターは、チューニングを変えることで、演奏しやすくしたり、独創的な響きを作り出すことができる楽器ですので、その特性を活用しているわけですね。 でも、私にはそれが厳しかったりします。 なぜならば、これがショートスケールのデメリットだからです。 変則チューニングは、スタンダードチューニングから音階を落とした設定が基本になります。 というのも、ギターはスタンダードチューニングを前提に設計されているので、音階を上げるとテンションがきつくなって弦が切れたり、ギターに負荷がかかってしまうからです。 そのため、弦を緩めた時に、演奏できるだけのテンションを保てるのかが、変則チューニングでは重要になります。 変則チューニングにした場合、弦のテンションが強いロングスケールであれば問題はありませんが、ショートスケールだとテンションを保てない場合があります。 テンションを保てないと、弦の鳴りが弱くなりますし、チューニングも不安定になります。 定番のダドガド(DADGAD)やオープンG(DGDGBD)くらいであれば影響はないと思いますが、それ以上、チューニングを落とす場合は、厳しい場合もあります。 たった13ミリのスケールの違いで、響きや演奏性まで変わってくるからアコギは面白いのですが、、逆にそれだけシビアな世界ということでもあります。 個人的には、ショートスケールはメリットが多いと思っていますが、当然のことながらデメリットもあるわけで、アコギを選ぶ際には、その点に注意して頂きたいと思います。

ショートスケールのアコギについて考える その②

比較のため、友人から借りた「Martin OM-18GE(2003年)」です。 前回に引き続き、ショートスケールのアコギについて考えたいと思います。 ↓↓↓ 「 ショートスケールのアコギについて考える その① 」 今回は検証のために、下記の3本を弾き比べました。 ドレッドノート「D-18GE(2004年)」 OM「OM-18GE(2003年)」 トリプルオー「000-18GE(2006年)」 比較にあたって、可能な限り条件を揃えるために、製造された年代が近くて、トップにアディロンダックスプルース、サイドバックにマホガニーが使われたマーティンのゴールデンエラシリーズで揃えてみました。 ちなみに、ドレッドノートとOMはロングスケール、トリプルオーはショートスケールです。また、ボディサイズはドレッドが大きく、OMとトリプルオーは同じ大きさです。 1.ロングスケールのドレッドノートとOMの比較 ドレッドには力強さがあり、低音がとても豊かで、ストロークにまとまりがあります。 OMは、ドレッドよりも低音の量感が減って、スッキリとした印象を受けます。 それによって、音の粒立ちが明確になり、キレが出て、レスポンスも向上していますね。 この違いは、同じロングスケールでの比較なので、ボディサイズによるものだと考えられます。 2.ロングスケールのOMとショートスケールのトリプルオーの比較 OMは音に張りがあり、低音が前面に出てくる印象ですね。 トリプルオーは、OMと比べると低音が弱い印象はありますが、その分、音が太くて柔らかく、バランスも良く感じられます。 この違いは、同じボディサイズでの比較なので、スケールの違いによるものですね。 3.ロングスケールのドレッドノートとショートスケールのトリプルオーの比較 スケールの異なるものでの比較ですので、ご参考程度に。 ドレッドのまとまり感はストロークに向いていますが、このまとまり感や、強い低音によって、相対的にメロディラインが埋もれてしまいます。 一方、トリプルオーは、音の粒立ちがいい分、ストロークでは音にまとまりがでにくいですが、フィンガーピッキングでは、メロディを際立たせたり、音をコントロールしやすいですね。 ※ まとめ この違い...

ソロギターに合うマホガニーを考える。

Sakata Guitars OO-28B 坂田ギターをオーダーするにあたり、テーマを考えてみました。それは「ソロギターに合うマホガニー」です。 一般的にソロギターでは、ローズウッド系のアコギが使われることが多いですね。それは、マホガニーに比べて、低音から高音までのダイナミックレンジが優れているからだと考えています。では、ダイナミックレンジの劣るマホガニーで、ソロギターを演奏する場合には、どのようなアコギが向いているのでしょうか。マホガニーの特性から考えてみたいと思います。 マホガニーの最大の魅力は、美しい高音域にあると考えています。そのため、美しいプレーン弦やハイポジションでの響きをどこまで引き出せるのかがポイントになります。これには、トップ材を変えたり、ブレーシングでも調整できますが、単純にボディサイズを小さくするだけでも、低音の量感を抑えることができるので、相対的に高音域の存在感を高めることができますよね。 続いて、マホガニーの欠点について考えてみます。マホガニーは、軽くて柔らかい素材ですから、どうしても、低音域のダイナミックレンジが落ちてしまい、音に柔らかさや甘さが出てしまいます。そのため、張りのある低音や、深く沈み込むような質感は期待できません。そういった低音を求めるのであれば、マホガニーではなく、重くて硬いローズ系の素材を選ぶべきです。 低音の量感であれば、ボディサイズを大きくすることで増幅できますが、しまりのない低音を増幅するのは、あまり好みではありません。ですので、逆にボディサイズを小さくすることで、量感を押さえ、キレのある低音にした方が、マホガニーの特性を活かせるのではないかと考えました。そう、私にとって、ソロギターに合うマホガニーのキーワードは「スモールボディ」なのです。 さまざまなボディサイズの試奏を行った結果、私はダブルオーが好みだという結論に達しました。ダブルオーは、音の透明度の高さや、レスポンスの速さ、そして6本の弦のバランスの良さが特徴で、通好みのギターと言われたりもします。そして何よりも、お気に入りの「00-28B」の兄弟のようなマホガニーが欲しいと思ったんですよね。

ショートスケールのアコギについて考える その①

ショートスケールの「000-18GE(2006年)」 以前からアコギについて、考えていたことがありました。 それは、、、 「 ショートスケールのアコギが、ソロギターに向いているのではないか 」ということです。 私の演奏が下手なせいもあるのですが、、、 ドレッドノートやOMといったロングスケール(645mm)のアコギでソロギターを演奏すると、どうしても低音が強く出過ぎてしまい、 メロディラインが埋もれてしまう んですよね。 特に、私の好きなマーティン系でロングスケールのものだと、構造上、どうしても低音が強く出てしまうんです。 でも、ショートスケール(632mm)のアコギに持ち替えると、同じ弾き方をしていても、音のバランスが変わってきます。 「 低音は抑えられ、自然とメロディラインが浮き出てくる 」のです。 倍音は減ってしまいますが、その分、 ひとつひとつの音がくっきり明確になります 。 これって「 メロディラインが重要なソロギターに向いているんじゃないか 」と思ったわけです。 もちろん、ショートスケールのアコギが、全てのソロギターに適しているわけではありません。 そして、変則チューニングが必要な場合に、弦のテンションが足りなくなることもあるかもしれません。 でも、楽曲や演奏方法によっては、このショートスケールの強みを活用できるのではないかと思うわけです。 まあ、演奏技術さえあれば、ドレッドノートでも上手くコントロールして、何でも弾きこなせるのでしょうが。 ショートスケールでのソロギターについては、今後も研究していきたいなと思っています。

ハンドクラフトギターフェス 2014に行ってきました(後編)。

SUMI工房 S-00MC 「 ハンドクラフトギターフェス2014に行ってきました。 」の続編です。 試奏をして、とても気になっていたアコギがありました。 それは、SUMI工房さんの「S-00MC」、「S-00LM(ラージサウンドホール)」と、Sakata Guitarsさんの「CW-28B」です。 でも、フェスの会場は盛り上がっていますからね。 残念ながら、アコギの音色をしっかり確認できるような環境ではないんです。 ということもあって、いつか静かな環境で試奏してみたいなと思っていたんですよね。 ある日、友人と楽器屋巡りをしていた時のことです。 本当に偶然なのですが、そのお気に入りのアコギ達と再び出会ってしまったのです。 それは「S-00MC」、「CW-28B」です。 「S-00LM」も他店に入荷されたようなのですが、すぐに売れてしまったそうです。 やはり、いいアコギは足が早いですね。 というわけで、思いっきり試奏してきましたよというお話です。 まず、SUMI工房の「S-00MC」ですが、やはり素晴らしいアコギでした。 トップの赤蝦夷松とサイドバックのホンジュラスマホガニーの相性が良く、マホガニーらしい温かい音色が秀逸でした。 また、ダブルオーサイズということもあって、レスポンスが良く、自分の思い通りにギターが反応してくれます。 派手さはありませんが、素材と設計と作りの良さが揃った素晴らしいアコギだと思いました。 そして自分的に衝撃だったのが、Sakata Guitarsの「CW-28B」でした。 深く沈みこむ低音に、濁りのない美しい高音に思わず絶句。 以前から評判は聞いていましたが、マスターグレードのアディロン・トップと、プレミアムグレードのハカランダ・サイドバックを使って作られた坂田ギターが、これほどまで凄いとは。 今まで、ビンテージも含め、ハカランダのアコギは何本も弾いたことがありましたが、新品の状態でこれだけの音が出るものははじめてでした。 とその時、、、 店員さんが、まだ店頭に出していなかったハカランダの「00-28B」を私にそーっと手渡したんですよね。 というわけで、友人宅にはSUMI工房の「S-00MC」が、、、 そして私の家にはSak...

ネック材としてのマホガニーを考える。

ネックはプレイヤーにとって最も重要な演奏性に関わる部分です。そのため、最高のフィーリングを作り出すために、細かな調整ができるよう、製作者にとって加工しやすい素材である必要がありました。それに加えネック材には、軽さ、弾力性、剛性といった特性が求められるため、それらの特性を備えるマホガニーは、最良のネック材として扱われてきたのです。 それが2005年頃のことでした。Martin社のネックの表記が「Genuine Mahogany」から「Select Hardwood」に変更されてしまったのです。エントリークラスのモデルだけならばまだしも、Style 40系やAuthentic Seriesといった上位モデルでさえも変更されてしまったので、正直、驚かされました。もしかすると、それ以前にもマホガニー以外の素材が使われていた可能性もありますが。 ちょうどよい年代のアコギがありますので、比較してみましょう。画像左が「D-18GE(2004年製)」、右が表記が変更された後に販売された「000-18GE(2006年製)」です。木目から判断して、両方ともマホガニーネックですね。ただ、トリプルオーは、塗装が厚く、写真だとわかりにくいかもしれませんが、実物ではうっすらとマホガニー特有の黒い導管が確認できます。そのため「Select Hardwood」だからと言って、マホガニーが使われなくなったというわけではないのです。 これは人から聞いた話ですが、Martinでは「Select Hardwood」として、マホガニーや、その代替材として期待されているサペリ、クラシックギターなどでも使われているスパニッシュシダー(セドロ)を使用しているそうです。私がマホガニー以外で見たことがあるのは、スパニッシュシダーのネックで、明るめの色合いと木目から、それとなく判断できるものでした。一応、試奏はしてみましたが、音色の違いまでは感じられませんでした。 というのも、音だけの観点であれば、ネック材よりも、トップやサイドバックの個体差の方が影響は大きいですし、ネックに限定した場合でも、多くのルシアーが重要なのはネックの種類よりも密度だと言っていますからね。ですので「音」よりも「モノ」としてどこまでマホガニーにこだわるのかということになりますね。

近年モノのアディロンを考える(ゴールデンエラのススメ)。

アディロントップの「D-18GE(2004年」、「OOO-18GE(2006年)」 最近、トップ材に希少材と言われる 「アディロンダック・スプルース」 を使用したアコギを頻繁に見かけるようになりました。 このアディロンですが、、、 その軽くて強い特性から、かつては飛行機の部材として使われていたそうです。 そのため、第二次大戦での戦況の拡大に伴い、乱伐され枯渇してしまったんですね。 その後、長い間、希少材とされてきましたが、植林による効果でしょうか。 アコギ材として一般に流通できるまで、環境が回復したようですね。 そのため、マーティンのアディロントップを手に入れるには、 「1946年以前のビンテージ」 を入手するしか方法がありませんでした。 それだけに、新品でもアディロンを入手できるようになったことは、ありがたい話ですよね。 若いアディロンには、ビンテージほどの味わい深さはないかもしれませんが、それでも十分にアディロンの魅力を堪能できると思います。 そんなアディロンの魅力を知る上で、オススメしたいのが、 この「 ゴールデン・エラ・シリーズ 」です。 マホガニーに限定した話をすると、、、 1999年のドレッドノートの「D-18GE」にはじまり、2003~2005年にはオーケストラモデルの「OM-18GE」、2006~2013年にはオーディトリアムの「OOO-18GE」が発売されています。 1995年にも「D-18 Golden Era」といったモデルが発売されましたが、これはGuitars Of The Monthとして製作されたもので、トップにシトカスプルースが使用された別モノです。 このゴールデン・エラ・シリーズですが、面白いもので、仕様上は黄金期の再現を目指しているのですが、 音作りは極めて現代的 なんですよね。 「 タイトで力強い低音に、アディロン・マホならではの主張のある中高音 」が特徴です。 また、アディロントップに加え、 フォワードシフテッドスキャロップドXブレイシング ですので、レスポンスが良く、軽く爪弾いただけでもめちゃくちゃ鳴ります。 ですので、フィンガースタイルには最適ですね。 ストロークでは、むしろ、鳴りすぎるくらいかもし...

マホガニーに合うトップ材を考える。

アディロンダックスプルースの木目 アコギの音はトップ材で決まると言われます。 それだけに、、、 マホガニーの魅力を最大限に引き出すことのできる トップ材を選びたい ですね。 毎度のことですが、マーティンのStyle 18を例にして考えてみたいと思います。 Style 18は、サイドバックにマホガニー、トップにスプルースの組み合わせです。 トップ材には、1945年までがアディロンダックスプルース、それ以降はシトカスプルースが使われています。 音の傾向としては、、、 シトカはスッキリとした端正な音色 、 アディロンは太くて艶のある音色 が特徴になります。 ここで代表的なトップ材の比重をチェックしてみましょう。 アディロン(0.32~0.35) イングルマン(0.32~0.35) レッドシーダー(0.36~0.40) シトカ(0.41~0.45) ジャーマン(0.41~0.45) シトカに比べ、アディロンは軽いんですね。 この軽さが「 レスポンスや鳴りの良さ 」に繋がっているのでしょう。 つまり、、、 マホガニーの特徴のひとつであるレスポンスの良さを伸ばす組み合わせが「 アディロン・マホ 」なわけですね。 また、マホガニーの柔らかさの中に、アディロンの腰の強さや艶のある音色を加えることで、絶妙なサウンドが作られるわけです。 ちなみに、見方を変えると、、、 重い素材を鳴らすには、強い力が必要ですので、ハカランダやローズウッドのような音響特性の優れた素材の方が向いているわけですね。 そういえば、ジャーマンスプルースとマホガニーの組み合わせって見かけないですよね。 などと、アディロン好きな私ではありますが、シトカスプルースとの組み合わせも十分に魅力的だと考えています。 特に 「ビンテージの枯れたシトカの音色」 は堪らないものがあります。 ただ、シトカのビンテージも、決して安くはないですし、コンディションの良いものになかなか巡り合えないですからね。 とりあえず、音の良いマホガニーに触れてみたいのであれば、近年モノのアディロンをオススメしたいと思います。

サイドバック材としてのマホガニーを考える。

マホガニーのサイドバック アコギのサイドバック材には、マホガニーとローズウッドが多く使われています。 それぞれの音の傾向ですが、、、 マホガニーは、「 軽くて軟らかい素材 」です。 そのため、傾向としては「 軽やかで暖かい音色 」が特徴となります。 一方、ローズウッドは「 重くて硬い 」素材です。 音響特性に優れ、「 深い低音と、煌びやかな高音 」が特徴になります。 どちらを選ぶかは、好みの問題ですし、結局は、どのような音楽に演奏したいのかによるのですが、私のブログでは当然のことながら、マホガニーをお薦めします。 マホガニーの種類については、以前にも記事にしています。 ↓↓↓ 「 赤い黄金:マホガニー 」 現在手に入るものの中では「 オオバマホガニー 」が最高品質とされていますね。 特に、アコースティックギターの世界では、ホンジュラスで採られたオオバマホガニーを「 ホンジュラスマホガニー 」と呼んでブランド扱いしていますね。 ただ、マホガニーは、個体差の大きい素材ですので、木目だけで見分けることは難しく、とりあえず弾いてみないとわからないというのが正直なところです。 また、マホガニーは、経年による音色の変化も大きいです。 ブルースやラグタイムに合いそうな「 枯れた音色 」に変化するものもあれば、ソロ・ギターに使えそうな「 甘くて官能的な音色 」に変化するものもあります。 それだけに、じっくりと自分にあったマホガニーを探す必要があります。 それもまた、マホガニーの醍醐味だと考えています。

「赤い黄金」マホガニー

最上級の木材として評価されるオオバマホガニー アコギの世界では、 ハカランダの人気が根強いですね。 一方、木材の世界では 「 赤い黄金 」と呼ばれるほど、 最上級の木材としてマホガニーは 取り扱われています。 そのため、 乱伐が横行し、 マホガニーは 枯渇してしまいました。 マホガニーを巡る最近の動きとしては、、、 2001年にブラジル政府がオオバマホガニーの伐採を停止したことから、 最近では、ペルーがマホガニーの輸出国として脚光を浴びていたのですが、 そのペルーでさえ、既に枯渇してしまったそうです。 つまり、、、 「 良質なマホガニーは、もう手に入らない 」のです。 それにも関わらず、世の中には「マホガニー」と呼ばれるものがたくさんあります。 どうしてなんでしょう。 調べてみると、生物分類学上で マホガニーと呼べるのは、 センダン科マホガニー属の3種類だけのようです。 キューバマホガニー オオバマホガニー(ホンジュラスマホガニー) メキシコマホガニー しかもこれらには、 輸出規制が かけられているため、 現時点でマホガニーは、既に入手困難なはずなんです。 ということは、、、 世の中に出回っている マホガニーの大半が、 実は 「 なんちゃってマホガニー 」だったということなのです。 ここで、 ちょっと 気になったので、 マホガニーと呼ばれる材 の 比重を 調べてみました。 アフリカンマホガニー( 0.46~0.50) フィリピンマホガニー(0.51~0.56) オオバマホガニー(0.51~0.63 ) サペリマホガニー(0.64~0.71) キューバマホガニー(0.72~0.80) 比重だけで音が決まるわけではないのですが、 ローズウッドは0.72~0.80、ハカランダは1.01~1.12ということからも この「 軽さ 」がマホガニーの音色のポイントだということがわかります。 また、なんちゃってとは言っても、 テイラー が採用している サペリは、 同じセンダン科ですし、オオバ マホガニーと比重や特性が 似ているので、 良い代替材だということがわかりますね。 でも、フィリピンマホガニーに至っては、 見た目こそ似ています...

マホガニーのすゝめ

私をマホガニーに目覚めさせた「Martin D-18GE」 つい最近まで、 マーティンといえば、 ローズウッドの 「 D-28 」 だと思っていたし、 アンプラグド 世代の私としては プリウォーの「 000-42」 が憧れだったりするわけです。 ですので、マホガニーの「Style 18」に 興味がありませんでした。 そんな私の偏見を正すきっかけとなったのが、 とあるギタークリニックで の出来事でした。 何本か試奏させて頂きながら、ギター談議をしていると、 マホガニーの「D-18GE」が 合うのではないか と薦められたのです。 で、後で調べたのですが、、、 この「GE」というのはゴールデンエラの略称で、 マーティンの黄金期と言われる1930年代の復刻を目指したモデルだということを知りました。 トップには希少材の 「 アディロンダックスプルース 」が採用され、ブレーシングや指板、ブリッジ、ネックに至るまで、「 黄金期の仕様を再現したこだわりのギター 」だったのです。 で、話は戻りますが、弾いて驚いたわけです。 この濃厚な中音域と 「あま~い」高音域は何なんだと。 それは、 ローズウッドでは 決して出すことのできない、 魅惑的な音色だったのです。 この時から、私の マホガニーへの 探求が はじまったのです。