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9月, 2015の投稿を表示しています

「乾燥対策としてのオイル塗布」アコースティックギターのメンテナンスについて考える③

今回は、もうひとつメンテナンスで話題になりやすいオイル塗布について。 よく言われるのは、、、 ブリッジや指板は塗装されていないから、オイルを塗って、乾燥を避けるべきという考え方です。 なんとなく理解はできるものの、オイルの効果を実感するのは難しいですよね。 ちなみに、この本を監修している小倉よしおさんは、オイル塗る派ですね。 また、楽器屋さんもオイル塗る派が多いように感じています。 この両者に共通しているのは、奏者や顧客に綺麗な状態で楽器を渡す必要があるということです。 つまり、楽器を綺麗にできて、、、 なおかつ、木材の割れ防止に効果がある可能性があるのであれば、塗る方が合理的なわけです。 では、我々一般人はどうすべきなのか。 簡単なのは、面倒だし、オイル代もかかるので、オイルなんて不用と割り切ってしまうことです。 実際のところ、塗らなくても問題ない人もいるし、塗っても割れちゃう人もいますからね。 ただ、指板を綺麗にしておきたいと、少しでも思うのであれば、手垢で汚れた夏の終わりや、冬の乾燥期にオイルで掃除をするのが良いと思います。 ギターは綺麗な方が良いですし、都市伝説かもしれない割れ防止に効果があるかもしれませんからね。 ただ、極論をいうと、、、 乾燥対策としてオイルを塗るくらいなら、何よりもまず、部屋の湿度をコントロールすべきです。 オイルを塗ったところで、室内が乾燥していれば割れやすくなりますし、それ以前に、ネックやトップなど、他の箇所にも影響が出るはずです。 そのため、湿度が難しいのであれば、塗装されていない部分にはオイルを塗り、サウンドホールには黒澤楽器のGuitar Breathのような調湿グッズを付ける。 これが、望ましい対応方法になります。 つまり、保管する環境によって、望ましい対応方法が異なるわけです。 このオイルの記事は、良い例だと思って取り上げてみたのですが、大切なのは、人によって答えはひとつではないということなのです。 自分の環境にあったメンテナンス方法を見つけるためにも、この本をベースにすることが有意義なのではないかと。 そう言った意味で、とても使える本

「弦を緩めるか、緩めないか」アコースティックギターのメンテナンスについて考える②

前回に引き続き、メンテナンスについて考えます。 その中でも、よく議論になる「弦を緩めるか、緩めないか」を取り上げてみたいなと。 昨年お邪魔した鷲見工房でのこと。 色々お話をさせていただいたのですが、、、 なんと、日本を代表するルシアの鷲見さんは、弦を緩めない派だということを知ったのです。 「むしろ緩めないで下さい!」とまで言われたので、正直、驚いてしまいました。 でも、色々話しているうちに、その理由がわかってきました。 というのも、あくまでも「鷲見ギターの場合は」ということなんですよね。 ではなぜ、鷲見ギターは、弦を緩めてはいけないのか。 それを知るためには、鷲見ギターの設計思想を理解する必要があります。 鷲見ギターの設計思想は以下の通り。 木(ネック)は動くものである 弦を緩めなければネックは純反り方向に動く 純反りしたら、トラストロッドを回して、戻してやればいい 弦の張力でブリッジ付近が膨らむことを避けるため、力木で補強する 実にシンプルで合理的な考え方ですよね。 つまり、鷲見さんは緩めない派ではありますが、、、 ネックは曲がるし、弦を張りっぱなしの状態では、ブリッジ付近が膨らんでしまうことを前提にして、設計しているわけです。 てば、マーティンの場合はどうなのか。 ネックのロッド材の歴史から紐解いてみましょう。 エボニーロッド(~1934) スティールTバーロッド(1934-1967) スクエアロッド(1967-1987) アジャスタブルロッド(1987) つまり、マーティンの歴史から学べることとしては、 木製のエボニーロッドよりも、頑丈な鉄製のTバーロッドが求められた 同じ鉄製でも、さらに強固なスクエアロッド(SQ)が求められた それでもネックは反るので、調整可能なアジャスタブルロッド(AJ)を採用した と言った、ネックトラブルに対応してきた歴史がわかるわけです。 AJロッドの採用には、ネック材として使われているマホガニーの材質が低下してしまったことも一因とされていますね。 そして、AJロッドにして、調整できるようになったからといって、弦を緩めなくていいの

「点検方法&セッティング」アコースティックギターのメンテナンスについて考える①

ありそうでなかったアコギのメンテナンス本 アコギのメンテナンス方法って本当に十人十色、千差万別です。 その中でも「弦を緩めるか、緩めないか」は、よく議論になるテーマのひとつですよね。 ギターの設計や作りによって違いがあるはずなのに、ずーっと平行線の議論が続いています。 今回はそんな混迷極めるアコースティックギターのメンテナンスに、一定の指針となるであろう本をご紹介したいと思います。 それは「アコースティック・ギター・メインテナンス・ガイド プロの現場の調整術」です。 結論から言うと「良い本」だと思います。 ただ、目新しい情報を期待すると、ちょっと裏切られるかもしれません。 書かれていることは極めてオーソドックスで、常識的なことばかりですからね。 しかも、ネットにこれだけ情報が溢れている時代です。 探そうと思えば、同じ情報はいくらでも手に入れることができます。 でも、メンテナンスについて、これだけ体系だってまとまっているものってなかなかないんですよね。 しかも、日本語版は初めてではないでしょうか。 というわけで、ありそうでなかったメンテ本を紹介しておきたいなと。 この本ですが、3つのテーマに分かれています。 点検方法 セッティング(弦交換含む) メンテナンス(保管と運搬) 点検方法については、かなり詳しく載っています。 どれくらい詳しいかというと、無精者の私では、絶対にやらないレベルの細かさです(笑) しかも、いくら点検したところで、異常に気付いた時には「時既に遅し」ですからね。 だったら、点検よりも、日々のメンテナンスに力を入れた方がいいと、個人的には考えます。 ということもあって、どちらかというと、楽器を購入する時に使える知識かなと思いました。 ヴィンテージや中古を買う時はもちろんのこと。 個人的には、むしろ、新品のギターでも確認することをお勧めします。 新しいギターの方が木が、木が動きやすかったりしますからね。 続いて、セッティングです。 この章を読むにあたって、注意した方が良いと思うことがあります。 それは、この本を監修された小倉よし

伊藤賢一「ギター・リサイタル」に行ってきました(2015年)

左から、小川さんのLowden、Larrivee、伊藤さんのKen Oya、Hermann Hauser II 遅くなりましたが、伊藤賢一さんのライブに行ってきました。 会場は、新宿の東京オペラシティにある「近江楽堂」。 普段はクラシックの室内楽で使われるようなホールです。 とても音響が良く、拍手をするだけでも、会場全体に音が響き渡ります。 伊藤さん曰く、、、 「 過去にガット弦での演奏会はあったが、スチール弦での独奏は初めてではないか 」とのことです。 いやが上にも期待が高まります。 会場も100人ほどのキャパでしたが、満員御礼でした。 結論から言うと、 完全に好みな内容 でした。 もちろん、伊藤さんの演奏や楽曲の良さもあります。 でも、それ以上に 「生音」に対するこだわりに感銘を受けた んですよね。 今は、エレアコ全盛ですからね。 こういった音響の良い会場での生音ライブは堪らないものがあります。 そして、、、 クラシックギターを学ばれていた伊藤さんだからからこそ出せる、 表現力豊かな色鮮やかな音色 。 深く、美しく、どこまでも澄んだ音色の 大屋ギターと、ハウザー二世。 独特な世界観のある素晴らしい音色でした 。 また、音楽を聴く、観ることの意味も考えさせられました。 伊藤さん曰く「 音楽は耳で聞くだけではなく、体でも感じるものだと 」 よくよく考えてみると、アコースティックな楽器ってそういうものですよね。 特に、自分でもギターを弾かれる方であれば、普段からその音を全身で感じているわけですからね。 私もギタリストのはしくれとして、 スピーカーやヘッドホンでは再現できない「アコースティックギターの音色」の素晴らしさをもっと伝えていきたい と思いました。 そして、奏者の緊張感や息遣い、手の筋肉の動きから表情の変化まで、鮮明に伝わるこの小規模なホールならではの距離感。 こういった視覚的なものも、ライブでは欠かせない要素のひとつだなと再認識させられました。 また、小川倫生さんもゲスト出演されました。 二人の馴れ初めや、先日発売された伊藤さんとのデュオL