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8月, 2015の投稿を表示しています

マホガニー図鑑「Martin 000-18(1941&1963年製)」④

左が1941年製、右が1963年製。ブレーシングの違いがよくわかります。 もうひとつの大きな違いはブレーシングです。 '41年製はスキャロップブレーシング、'63年製はノンスキャロップです。 画像で比較すると、違いがわかりやすいですね。 スキャロップは、トップを支える力木を削ることで、トップを振動しやすくしてあります。 そのため、軽く爪弾いただけでもよく鳴るし、響くのですね。 Style 45のようなダイナミックレンジの広い「鈴鳴り」の倍音感とは違いますが、スキャロップとアディロン・マホの組み合わせが生み出す、この濃厚な倍音感は極上です。 と、一見良いところばかりに見えるスキャロップですが、'44年になると廃止されてしまいます。 なぜかと言うと、、、 この頃になると、演奏する環境や音楽のスタイルが変わってきて、より大きな音量が求められるようになっていたんですね。 それによって、ギターが大型化してきたという歴史があるわけですが、それと同時に、弦もより太いものが求められるようになっていきました。 そして、弦が太くなることで、テンションが強くなり、ギターの故障の原因になってしまったのです。 そこで、スキャロップを廃止し、ギターの強度を高めようと考えたわけです。 また、'38年以前のものと比較すると、Xブレーシングのクロス位置がブリッジ側にシフトしています。 そのため、'38年以前をフォワードシフト、'39年以降をリアシフトと呼んでいます。 この仕様は、近年のゴールデンエラや、オーセンティックシリーズなどで再現されていますね。 このリアシフトですが、強度を高めるための仕様変更ということもあって、鳴りは弱まっています。 それでも、スキャロップ特有の響きは、十分に感じることができると思います。 一方、ノンスキャロップですが、音の「芯」が特徴になります。 「芯」というのはわかりにくい表現かもしれませんが、スキャロップのように音が広がるのではなく、基音がしっかりとしていて、まっすぐに伸びるようなイメージです。 ただ、PAシステムが発達した今となっては、

マホガニー図鑑「Martin 000-18(1941&1963年製)」③

左が1941年製、右が1963年製。驚異的な'41年製の美しさ! 1941年製と1963年製の最大の違いはトップ材です。 '41年製はアディロンダックスプルース、'63年製はシトカスプルースが使われています。 なんとなくですが、、、 「アディロントップのプリウォー最高!シトカトップの'60年代普通!」 といった予想をしていたのですが、意外や意外。 実際に弾き比べてみると、、、 やはり、プリウォーは素晴らしかったです(笑) でも、トップ材やスキャロップの有無による音色の違いというものも感じられますが、不思議とこの二本の共通点というものが見えてきたんですよね。 それは、バランスの良さです。 ヴィンテージの魅力というと、材の乾燥や、弾きこまれたことによって熟成された音色というのが一般的ですよね。 特に、プリウォーともなると「激鳴り!爆鳴り!極太!」なんて音量に関する表現が多い気がします。 幸運なことに私は、それなりの本数のプリウォーを試奏させて頂いたことがありますが、個人的には、そういった音量的なことよりも、バランスの良さに惹かれることが多いんですよね。 6本の弦の音が全て繋がっているというか、単音だけでも十分に個性的で魅力的な音色が、和音になっても、とてつもなく高度にバランシングできているというか。 文章だけではうまく表現できない、不思議な体験です。 そういった、プリウォーの魅力の秘密について、あらためて考えてみたいなと。 今では手に入れることのできない、素晴らしい材もひとつの理由ですよね。 でも、同等の材が使われているはずの'40年代のヴィンテージと比較しても、明らかに音色に違いがあるんですよね。 しかも、'40年代であれば、弾きこまれた年月もそれほど大きな差はないはずですからね。 もちろん、仕様の違いがあるので、単純に比較することはできませんよ。 でも、スキャロップの有無やロッド材の違い(エボニーロッドとスチールTバー)といった違いを差し引いたとしても、大きな差を感じるんですよね。 となると、残されているのは「作りの違い」ではないかと。 これは近年のルシアもののブームとも一致していますね。 つまり、行きつ

マホガニー図鑑「Martin 000-18(1941&1963年製)」②

Martin OOO-18(1941年製) 続いて、1941年製です。 '41年ということもあって、紛れも無いプリウォーなのですが、このプリウォーという言葉の定義にも、諸説あるようですね。 歴史的に見れば、日本の真珠湾攻撃や、米国が連合国に加わった'41年までをプリウォーと定義できると思います。 ただ、難しい歴史の話をしたいわけではなく、単純にギターの仕様を分類したいだけですからね。 ですので、このブログでは、ネックのロッドが鉄製のTバーが使われているものをプリウォー、戦争によって鉄の使用が制限され、エボニーで代替していた時期をウォータイムと呼びたいと思います。 もちろん、この'41年製はTバーロッドです。 また、プリウォーというと、近年のオーセンティックシリーズやゴールデンエラシリーズの影響で、ブリッジと指板にはエボニーが使われているというイメージがありますよね。 でも、この'41年製にはハカランダが使われているんです。 というのも、ドレッドノートを除くマホガニーのStyle 18では、'39年以降は全てエボニーからハカランダに変更されたのです。 実際には、'35年頃からエボニーからハカランダへの移行が始まっていたそうで。 そのため、過渡期にあたる'35年から'39年までは、エボニーとハカランダの仕様のものが混在しているそうです。 音色的には、ハカランダはエボニーに比べ、柔らかくて軽やかな印象がありますね。 エボニーの方が重くて、引き締まった質感です。 ナット幅も、プリウォーというと、44.5ミリのワイドネックというイメージがありますが、'39年頃からは42〜43ミリの細身のシェイプに変更されています。 そのため、ワイドネックが苦手な人には、この年代が狙い目となるわけですね。 また、'38年以前のものよりも、ネックが軽量化された影響で、より軽やかでヌケの良い音色になっています。 よくいう、ヘッドの先まで振動するかのようなヴィンテージ感は、この仕様が一番味わえます。 さらに、トップ材のアディロンダックスプルースが美しい響きを生み

マホガニー図鑑「Martin 000-18(1941&1963年製)」①

Martin OOO-18(1963年製) マホガニー図鑑の第四弾として、今回は友人所有の1941年と1963年の「Martin 000-18」を紹介したいと思います。 まずは、トリプルオー・サイズのおさらいをしてみましょう。 トリプルオーが初めて作られたのは1902年のこと。 それまでの最大サイズだったダブルオーから、ボディの横幅を広げることで容積を広げ、より大きな音量を出力できるように改良されたものでした。 そのため、その後、さらに大音量が出せるドレッドノートが開発されてからは、人気は下火となり、ストロークプレイ中心のフォークブームが訪れると、より一層、製造本数が落ち込んでしまいました。 それが1992年のこと。 エリック・クラプトンがMTVアンプラグドで「000-42」を使用したことで状況が一変します。 インターネットもなく、情報が少ない時代でしたからね。 あの凄い音のギターは何なんだと、話題になったわけです。 そしてトリプルオーを実際に弾いてみると、、、 フィンガーでもストロークでも使える万能さ 弾き方ひとつで、ロック・ポップスから、ブルースやジャズまで対応できる表現力 スモールボディならではの弾き手の思い通りに反応する優れたレスポンス 低音から高音までのバランスの良さと、マイク乗りの良さ などなど。 トリプルオーの能力が再評価されることになったわけですね。 そして、その後に発売された「000-28EC」が爆発的なセールスを記録しました。 かく言う私も、初めてのマーティンはクラプトンモデルだったわけですが。 というところで、1963年製のトリプルオーから紹介したいと思います。 以前にも紹介しましたが、この'60年代は様々な仕様変更が行われた年代です。 ということもあって、まずは、仕様の確認をしておきましょう。 Style 18ですので、トップはシトカスプルース、サイドバックはマホガニーです。 '60年代の特徴としては、ハカランダが使われたブリッジと指板があげられます。 今でこそ高価なハカランダですが、この当時は、普通の材として扱われていたんですね。 そして