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マホガニー図鑑「Martin 000-18(1941&1963年製)」②

Martin OOO-18(1941年製)

続いて、1941年製です。

'41年ということもあって、紛れも無いプリウォーなのですが、このプリウォーという言葉の定義にも、諸説あるようですね。

歴史的に見れば、日本の真珠湾攻撃や、米国が連合国に加わった'41年までをプリウォーと定義できると思います。

ただ、難しい歴史の話をしたいわけではなく、単純にギターの仕様を分類したいだけですからね。

ですので、このブログでは、ネックのロッドが鉄製のTバーが使われているものをプリウォー、戦争によって鉄の使用が制限され、エボニーで代替していた時期をウォータイムと呼びたいと思います。

もちろん、この'41年製はTバーロッドです。



また、プリウォーというと、近年のオーセンティックシリーズやゴールデンエラシリーズの影響で、ブリッジと指板にはエボニーが使われているというイメージがありますよね。

でも、この'41年製にはハカランダが使われているんです。

というのも、ドレッドノートを除くマホガニーのStyle 18では、'39年以降は全てエボニーからハカランダに変更されたのです。

実際には、'35年頃からエボニーからハカランダへの移行が始まっていたそうで。

そのため、過渡期にあたる'35年から'39年までは、エボニーとハカランダの仕様のものが混在しているそうです。

音色的には、ハカランダはエボニーに比べ、柔らかくて軽やかな印象がありますね。

エボニーの方が重くて、引き締まった質感です。



ナット幅も、プリウォーというと、44.5ミリのワイドネックというイメージがありますが、'39年頃からは42〜43ミリの細身のシェイプに変更されています。

そのため、ワイドネックが苦手な人には、この年代が狙い目となるわけですね。

また、'38年以前のものよりも、ネックが軽量化された影響で、より軽やかでヌケの良い音色になっています。

よくいう、ヘッドの先まで振動するかのようなヴィンテージ感は、この仕様が一番味わえます。

さらに、トップ材のアディロンダックスプルースが美しい響きを生みだします。

ブレーシングもスキャロップですので、軽く爪弾いただけでも、部屋中に美音が広がっていきます。

素晴らしい。

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