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1月, 2022の投稿を表示しています

「Collings」を語る。その④:マーティン・オーセンティック・シリーズとの比較

  今回は、皆さんが興味を持たれているであろうコリングスのトラディショナルシリーズと同じコンセプトである本家マーティンのオーセンティックシリーズや、最近話題のプリウォーギター(ブランド名)との比較をしてみたいと思います。 また私自身、ゴールデンエラ期の再現としては最高峰と言われるメリルであったり、マーティンの D-18(1937年製) ※マホガニー図鑑「Martin D-18(1937年製)」 00-18(1938年製) ※マホガニー図鑑「Martin 00-18(1938年製)」 000-18(1938年製) ※マホガニー図鑑「000-18(1938年製)」 000-28(1938年製)※たまにはローズの話でも(近日公開予定) を所有して弾き込んだ経験がありますので、そのあたりの経験もまじえて比較してみようと思っています。 Martin Authentic Series コンセプトとしては、当時の材料、設計、工法を再現するというもの。 まさに、「マーティンの伝統の継承」ではないでしょうか。 ネックの補強材に、当時使われていたスチールTバーやエボニーロッドを復刻したり、ヴィンテージサウンドの要といわれるニカワ接着を再現したことで話題になりましたね。 メーカーの製品ではありますが、ハンドメイドにこだわって製作されており、高品質で良いギターだと思います。 ただし、カタログスペックとしての再現性は高いものの、ある程度の量産体制を意識しているためか、内部のブレーシングの組み方など、細部では再現性が低い部分もあるようですね。 また、音色に関してもゴールデンエラ期のサウンドを突き詰めているというよりは、80年前に作られたギターが新品の頃はこんな音色だったかもねという仕上がりです。 これは別に悪い意味ではなく、あえてヴィンテージ風の鳴りを再現していないというだけの話です。 むしろ現代的な楽曲にも合わせやすく、使いやすい音色だと思います。 結論としては、本家マーティンとしては間違いなく最高峰のギターですので、新しいマーティンを所有したいという方にはベストな選択肢だと思います。 次回はPre War Guitarsとの比較を予定しています。 ■関連記事 ・ 「Collings」のすすめ。 ・ 追悼:ビル・コリングス(1948-2017) ・ コリングス、おそるべし(トラディショナル・

「Collings」を語る。その③:トラディショナルシリーズの評価

  私が衝動買いしてしまったOM-2HT(Authentic Style)です。 何が凄いって、本当に音色が自然で、レスポンスも極めて素直なのです。私がローズウッドのOMに求めるもの全てが備わっています。 もちろん、個人製作家の作るギターや、ヴィンテージのような強烈な個性はありませんが、私の弾き方に応じて、様々な表情を見せてくれるのです。 当然のことながらこれ以上に素晴らしいギターも存在しますが、これさえあれば他には何もいらないとさえ思えるほどに素晴らしいギターだと考えています。 とはいえ、極めてベーシックなシトカスプルースとインディアンローズウッドの組み合わせですからね。 材フェチの方からすると、つまらないギターと思われるかもしれません。 でも、音だけは抜群に良いのです。 もしかすると、初期ロットということもあり、選びに選び抜かれた材が使われていたり、もしかすると、優秀な技術者が製作している可能性もあります。 ただ、その後に出たトラディショナルシリーズを弾く限り、いずれも素晴らしい仕上がりだと感じています。 言いかえると、シトカ、インドローズの組み合わせであっても、良質な材が選定され、優れた設計思想と、卓越した製作技術があれば、圧倒的な音色を作り出せるのだなと。 これは、ちょっとやそっとのハンドメイドギターでは太刀打ちできないなと。音は材で決まるなどと言う方もいますが、その常識を覆された気がしました。 ちなみにこのOM-2HTですが、初期ロットということもあり、ネックの形状がかなり肉厚のオーセンティック仕様となっています。 これだと弾き難いなどと言われる方もいらっしゃるとは思いますが、この肉厚なネックでないと出せない音があるんですよね。 例えるならば初期のGibson J-45も、通称ベースボールバットなどと呼ばれる極太ネックで有名ですね。もちろん、コリングスはそこまで太くありませんが。 その後、トラディショナルシリーズのネックは、レギュラーシリーズに近い細身なものに変更されています。 でも、ビル・コリングスがこだわって設計したであろう初期のオーセンティックネックが奏でる音色は素晴らしいですので、機会があれば是非試していただきたいと思います。 などと、いろいろと書いていますが、結局のところ皆さんが気になるのは同じコンセプトのギター、例えば、マーティンのオーセンティ

「Collings」を語る。その②:トラディショナルシリーズの誕生

  実物はもっと美しい、Traditional Case! 今回は2016年に発表されたトラディショナル・シリーズの話題です。 ヴィンテージサウンドの要と言われるニカワ接着に、オールラッカー塗装の復活、そして今となっては貴重となったトラディショナル・ケースなどで話題になりましたね。 ケースに至っては、ビル・コリングスが開発に4年もの歳月をかけたそうで、気合のほどがうかがえます。 ※むしろ、採算が合わなかったのか、すぐに製造終了となってしまいましたが。 実際に弾いてみるとわかるのですが、そういったヴィンテージ的な仕様だけではなく、それ以上に細かいこだわりを随所に感じることができるんですよね。 私が気付いただけでも、レギュラーシリーズと比べて全体的に軽量化されていること、ブレーシング(内部の補強材)の削り方、質量のある太めのネックシェイプ、ノータンブレーシングの採用、ブリッジ側の弦間隔が広げられるなど様々な違いが見られました。 きっとそれ以外にもこだわりがたくさん詰まっているはずで、仕様だけではなく「ヴィンテージサウンドの追求」こそが真のコンセプトであることが伝わってきます。 当時、ビル・コリングスも語っていましたが、このヴィンテージサウンドの追求という点では、コリングスのサブブランドであるウォータールーで得られた経験が大きかったようですね。 ウォータールーですが、カラマズー(ギブソンのサブブランド)等のような古き良きギターが持つ魅力を再構築することが狙いだったのかなと私は感じています。 良い意味での粗さと、コリングスの精緻さが絶妙にブレンドされたヴィンテージ感溢れる素晴らしいギターでした。 私的には、このヴィンテージ的な感覚(音の柔らかさ、優しさ、奥深さ)が、コリングスがマーティン寄りの音色に近づいたと感じさせる一因だったりもするんですよね。 また開発に当たっては、ジャズギターの鬼才ジュリアン・レイジが関わっていたそうですね。 ジュリアンがコリングスを訪問した際に、OM-1A※の製作を依頼したことがはじまりで、たまたまコリングス側でも、トラディショナル・シリーズの開発に着手した頃だったこともあり、その流れで企画に参加することになったようです。 ※サイドバックがマホガニー、トップがアディロンダックスプルースのOM(オーケストラモデル) ジュリアン曰く、 「新品の時から僕

「Collings」を語る。その①:楽器としての魅力

前回の「Collingsのすすめ」は、楽器と言うよりもブランド・製品としてコリングスがいかに優れているかに着目していましたので、今回は「Collingsを語る」として、楽器としての魅力について触れていきたいと思います。 普通はブランドの成り立ちや、創業者ビル・コリングスのことから語りはじめるものだとは思いますが、それは「Collingsを語る。その⑤」くらいで備忘録的にまとめておくつもりです。 まずは私が語りたいことから語らせて下さいw 私がコリングスの凄さをはじめて体験したのは、2014年に行われた「Varnish弾き比べツアー」の時でした。 この頃、コリングスが力をいれていたヴァーニッシュ塗装の良さを広めるため、コリングスを取り扱っている様々な店舗にて試奏会のようなものを開催していたんですよね。 私自身は残念ながらタイミングが合わず、この企画に参加できなかったのですが、ドルフィンギターズ恵比寿店さんにお邪魔した際に、この企画を真似た弾き比べをさせてもらったんですよね。 この時は、塗装方法の異なるドレッドノートとOMを弾かせてもらいました。塗装の違いによる変化、特に音の広がりや倍音感の違いなどを体感し、塗装だけでこんなにも変わるのかと驚かされたものでした。 ただ、この時点では私の経験や技術がまだまだ未熟でした。もちろん、楽器としての素晴らしさは理解できたものの、この楽器がもつ真の魅力までは気付くことができていなかったと思います。 その後、コリングスについても勉強を重ね、どうやら創業当初はマーティンと同じラッカー塗装を用いており、それがまた素晴らしい音色だということを知りました。 またその中でも、シリアルナンバーが三桁のものが「三桁コリングス」などと呼ばれ、プレミアが付いていることも学びました。 ※ラッカー塗装は1000番台前半でも存在します。 ということもあり、「ラッカー時代のコリングスが最高なはず!」という思い込みのもと、90年代半ば頃までのモデルを狙って試奏をしていました。 そうすると、何本弾いてもクッキリ、カッチリのコリングスサ・ウンドなんですよね。 いくらマーティン・スタイルではあっても、コリングスは別の楽器なんだなという印象を持っていました。 私の演奏スタイルとしては、ちょっと扱いにくい硬い音に感じていたわけです。 でも、たまにですが、柔らかなニュアンス

「Collings」のすすめ。

ブログをはじめて8年目となりましたが、私自身、それなりの経験を積んできたと思います(思っています)。そういった中で、これだけは間違いないと言えることがあります。 それは「コリングスはやはり凄かった」ということです。 これは昔から変わらずに感じてきたことではありますが、その時期によって感じる凄みが変わってきていたりします。 今回はその辺をお話していきたいなと。 (第一波) はじめてコリングスを弾いた時の衝撃。今でも鮮明に覚えています。 良いギターとはこのことを言うのかと、、、実力の違いを見せつけられました。 ただ、あまりの精度の高さと、鳴りの良さで、この頃の私には、とても使いこなせる道具ではないとも思いました。 (第二波) その後、私自身、様々なギターを弾いてきました。 ヴィンテージならではの味わい深さを知ったり、個性豊かなルシアものを学んだりと、いろんなギターを体験し、学習してきました。 そうやって、経験値を上げたからこそ見えてきた、コリングスの凄さというものもありました。 私がようやく、コリングスの楽器としての完成度の高さを理解できるようになったのかもしれませんね。 この頃には、私の演奏面での技術力が上がってきたことで、道具としてのコリングスの優秀さが見えてきた時期でもありました。 (第三波)・・・今です。 そしてさらに凄いと思わされたのが近年モノのコリングスなんですよね。 もう既に最高峰、完成形と思っていたギターが、成長を止めることなく、更なる進化を遂げていくのです。 なんなんだ、このメーカーはと。 現時点の感想ではありますが、結局、コリングスであれば、自分の表現したい音楽を全てカバーできるのではないか、あとは自分の技術を高めるだけなのではないか、と思うようになりました。 私がここまでべた褒めするコリングス、一体何が凄いのか。 一般的によく言われている、 高品質(ハズレ個体がない) 丈夫(トラブルもない) 木工精度の高さ については、あえてここでは触れませんが、私ならではのコリングスをすすめる3つの理由をお話ししたいと思います。 ①メーカーならではの強み 単に高品質なギターというだけであれば、個人製作家のギターでもいいでしょう。 でも、コリングスにはそれ以上の強みがあるのです。 個人製作家にはなくて、コリングスにあるもの。 それは、研究開発に使える予算すなわち「