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「Collings」を語る。その①:楽器としての魅力


前回の「Collingsのすすめ」は、楽器と言うよりもブランド・製品としてコリングスがいかに優れているかに着目していましたので、今回は「Collingsを語る」として、楽器としての魅力について触れていきたいと思います。


普通はブランドの成り立ちや、創業者ビル・コリングスのことから語りはじめるものだとは思いますが、それは「Collingsを語る。その⑤」くらいで備忘録的にまとめておくつもりです。


まずは私が語りたいことから語らせて下さいw


私がコリングスの凄さをはじめて体験したのは、2014年に行われた「Varnish弾き比べツアー」の時でした。


この頃、コリングスが力をいれていたヴァーニッシュ塗装の良さを広めるため、コリングスを取り扱っている様々な店舗にて試奏会のようなものを開催していたんですよね。


私自身は残念ながらタイミングが合わず、この企画に参加できなかったのですが、ドルフィンギターズ恵比寿店さんにお邪魔した際に、この企画を真似た弾き比べをさせてもらったんですよね。


この時は、塗装方法の異なるドレッドノートとOMを弾かせてもらいました。塗装の違いによる変化、特に音の広がりや倍音感の違いなどを体感し、塗装だけでこんなにも変わるのかと驚かされたものでした。


ただ、この時点では私の経験や技術がまだまだ未熟でした。もちろん、楽器としての素晴らしさは理解できたものの、この楽器がもつ真の魅力までは気付くことができていなかったと思います。


その後、コリングスについても勉強を重ね、どうやら創業当初はマーティンと同じラッカー塗装を用いており、それがまた素晴らしい音色だということを知りました。


またその中でも、シリアルナンバーが三桁のものが「三桁コリングス」などと呼ばれ、プレミアが付いていることも学びました。

※ラッカー塗装は1000番台前半でも存在します。


ということもあり、「ラッカー時代のコリングスが最高なはず!」という思い込みのもと、90年代半ば頃までのモデルを狙って試奏をしていました。


そうすると、何本弾いてもクッキリ、カッチリのコリングスサ・ウンドなんですよね。


いくらマーティン・スタイルではあっても、コリングスは別の楽器なんだなという印象を持っていました。


私の演奏スタイルとしては、ちょっと扱いにくい硬い音に感じていたわけです。


でも、たまにですが、柔らかなニュアンスを持つ個体と巡り合ったりもして。


それはきっと個体差かな、とか、前の持ち主が相当弾き込んでいたに違いない、などと勝手に想像していました。


ただ、その後も試奏を続けていくと、その柔らかなニュアンスは、2009年以降のモデルに採用されたマイナーチェンジによるものと言うことがわかってきました。


基音の強さはそのままに、ウッディでマーティン寄りのサウンドに変更されていたのです。


以前の記事でコリングスを試奏することで、マーティンの魅力を再認識したと書いていましたが、実はそのコリングスそのものがマーティンの寄りのサウンドに変化していたわけですね。


個人的な感覚ですが、この変化は2010年代後半からはさらに強まっているように感じています。


そして2016年、トラディショナルシリーズとして更なる進化を遂げるわけですが、そのあたりは次回にでも。




・「Collings」を語る。シリーズ 

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