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マホガニー図鑑「Collings OM1T Traditional Series(2019)」

今回はマホガニー図鑑「Collings OM1T (Traditional Series)」となります。 以前、ご紹介した「Collings OM2HT」があまりにも気にいったため、サイドバックがマホガニーのコリングスが欲しい、という衝動に駆られ、思わず購入してしまったんですよね。この辺りは、以前のコリングス特集でも軽く触れていたかと思います。 個人的な感想ですが、このトラディショナル・シリーズの衝撃はかなりのもので、マーティンスタイルのギターということであれば、これさえあれば足りないものは自分の技術だけ、と思わせるほどのものでした。 どこが素晴らしいのかと言われると、具体的な言葉で表すのが難しかったりもするのですが、様々な要素がかなりのハイレベルな状態にまで高められたバランス型のギターと言えるのではないかと考えています。 言いかえると、弾き手の様々な要求に応えてくれるギターといったところですかね。本当にあとは技術を磨くだけで、いかようにも使える万能型のギターなのです。 ブログを初めてから、かれこれ8年ほど色々なギターを弾いてきましたが、ギターを弾けば弾くほど、こういったバランス型のギターを好むようになってきている気がします。 バランス型というと、近年モノのマーティンの名器と言われるローレンス・ジュバーモデル(OM-18LJC)を思い浮かべる方も多いかもしれませんが、それとの違いがこのコリングスとの最大の違いかもしれません。 それは音の立ち上がりの早さです。粒立ちの良さ、分離の良さといった表現でも良いかもしれません。とにかく、一音一音が明確で、分離感、音程感が素晴らしいのです。 音の立ち上がりを良くしすぎると、ストローク時の音のまとまり感が出にくいのですが、この難しいバランスを精度の高い設計と製作技術で両立できているのがコリングスのOMと言うわけです。まさに、フィンガーでもストロークでも使えるギターと言うわけですね。 ジュバーモデルも、フィンガーでもストロークでも使いやすいギターとは言われていますが、全体的にコンプレッションをかけたような印象(振動を制御しているイメージ)で、どちらかというとストローク寄りに作られている印象なんですよね。 ただ、このOM1Tを購入して失敗したなと思う点もありまして…。 ローズウッドのOM2HTとマホガニーのOM1Tを揃えてしまったわけ

キース・リチャーズ(Keith Richards)の使用ギター:「Gibson HummingbirdとCollings OM2H」

  昨年(2021年)、チャーリー・ワッツが亡くなってしまいましたね。遂にローリング・ストーンズが終わる日が来るのかと心配していましたが、名手ステーヴ・ジョーダンを代役としてツアーを継続していました。 それどころか、今年(2022年)に入ってからも「SIXTY TOUR」としてヨーロッパ各国で精力的にライブを行っていました。現時点で、ミック・ジャガー79歳、キース・リチャーズ78歳ですからね、もはや超人の域ですね。 今回は、そんなキースが使っているギターの話題となります。 キースのアコギいうと、やはり「Gibson Hummingbird」ですよね。 ネイティブ・アメリカンの中で「愛と美と幸せのシンボル」と言われるハチドリ(Humming Bird)をピックガードにあしらったこのハミングバード。当時のキースの風貌も合わせて、ロックギタリストが持つアコギとしては最高峰のカッコ良さですよね。 このハミングバードですが、それまでの「J-45」のようなラウンド・ショルダー型から、更なる音量を求めて開発されたスクエア・ショルダー型が採用されています。ボディ容積をより大きくすることで、より大きな音を目指したと言われていますね。 でも、実際にハミングバードを弾いてみると、「J-45」と比べて音量が大きいと言うよりは、ハミングバード特有のジャキジャキした癖の強さが感じられてしまうので、いまいちスクエア・ショルダーにした狙いがわからなかったりするんですよね。 ただ、このジャキジャキ感が、かき鳴らし系ギタリストにはぴったりはまる感じで、多くの愛好家のいる名器とされていたりもします。仕様はさておき、結果論としてこの狙ったのか、狙ってないのかわからない独特なサウンドというのがギブソンの魅力のひとつですかね。 「マホガニーのすすめ」ということでは、サイドバック材にマホガニーが使われているハミングバードの紹介で十分だとは思うのですが、今年のツアーではコリングスのOM2Hを使っていることで話題になっているんですよね。ちょうど前回の記事でOM2HTを紹介したこともあり、合わせて紹介しておきたいなと思います。 キースの使用しているギターは、トップ材がシトカスプルース、サイドバックがインディアン・ローズウッドのOM2Hをベースに、ネックからヘッド部分にかけてアイボロイド・バインディングが施された特別仕

たまにはローズの話でも「Collings OM2HT Authentic Style(2016)」

 きまぐれ企画の「たまにはローズの話でも」です。 今回は私がイチオシしているCollingsのOM2HT Authentic Styleを紹介します。 まず、コリングスのネーミング体系について馴染みのない方もいらっしゃると思いますので、簡単にまとめておきますね。 OM …ボディの形状(OM:オーケストラモデル、D:ドレッドノートなど) 2 …ローズウッドモデル(マーティンでいうところのStyle-28) H …ヘリンボーン付き(黒と白の縁取りの部分) T …トラディショナルシリーズ その他、主なオプションとしては、以下のような感じですね。 ■トップ材のオプション A …アディロンダックスプルース G …ジャーマンスプルース E …イングルマンスプルース ■サイドバック材のオプション Mh …マホガニー MR …マダガスカルローズウッド Baa …ブラジリアンローズウッド ■その他 Varnish …ヴァーニッシュ塗装 CW  …クラレンスホワイト・モデル Style-1 …サイドバックがマホガニー(マーティンのStyle-18) Style-3 …インレイ付き(マーティンのStyle-40系) またコリングスも年代によって音作りが変化していますので、そのあたりから整理したいと思います。 大きく分けると、オースティンでファクトリーを拡充する1992年以前と、ファクトリーでの生産が軌道に乗った1993年以降にわけられます。 1992年以前のコリングスは滅多にお目にかかることもなく、私も数本しか弾いたことがないので、その時期固有の特徴を捉えきれてはいないのですが、比較的マーティン寄りな音色という印象です。 そこから1993年以降になると、一気にカリカリ・コリコリのコリングスサウンドが確立されていきます。 その後の変化ですが、、、 ①ラッカー塗装が施された1993年~1997年 ②UV塗装に変更された1997年~2009年のマイナーチェンジまで ③2009年からトラディショナルシリーズが開発される2016年頃まで ④トラディショナルシリーズで得られた経験が取りこまれた2016年以降 に分けられると思います。「年」については、おおよその目安と考えてください。 今回のOM2HTは④の時期に該当します。この頃のコリングスはカ

岸部眞明さんのオンライン・ライブ&国産OEMアコギの実力について

  ソロギターの世界でも、オンライン配信が定着しつつありますね。先週末はイケベ楽器さんのイベントで、岸部眞明さんのインストアライブがありました。 渋谷に行けば「生キシベ様」を拝むこともできたのですが、台風の影響による悪天候もあり、私はオンラインで失礼しました。 今回は、中国のギターメーカーNaga Guitars主催のイベントで、ギタリストの岸部眞明さんと、Water Roadのルシアである増田さんがゲストとして呼ばれていました。 Naga Guitarsは「リーズナブルでプレイヤーがいつも最高のパフォーマンスを発揮できるクオリティと美しい音色を備えたギター」を製作することをコンセプトとしているようですね。 今回は特に、増田さんが設計し、中国の工場にて作られたHana Series(岸部さんのシグネチャー・モデル)を中心にした販促イベントだったようです。 Naga Guitarは中国のメーカーで中国の工場での製作ではありますが、Hana Seriesという視点で見るとWater Roadを中国の工場でOEMで作りました的な位置付けですかね。廉価版のWater Roadとも言えるかもしれません。 ※OEMとは、Original Equipment Manufacturingの略語で、委託者のブランドで製品を生産することを言います。 肝心の音色ですが、岸部さん自身はエフェクトで音を作るスタイルですので、ライブの動画で見る限りではいつも通りの岸部サウンドに仕上がっていましたね。 またライブの前にはWater Roadの増田さんが材や設計について語っている動画もアップされてますので、興味のある方は是非ご覧になってください。 で、今日、実は語りたいと思っていたのはこのライブの話ではなく、最近OEMのギターが増えてきていますよね、というお話だったりします。 OEMなんかで良いギターが作れるのか?と疑問に思う方もいらっしゃるとは思いますが、エレキギターのフジゲンさんなどと同じで、実は品質がとても良かったりするんですよね。 アコギで言うと、例えば三木楽器さん主導のギブソン系のCreek、マーティン系のSeagull by M.Shiozaki、ドルフィンギターさんのSwitch、Greven Japanなど。詳しいことは話しませんが、これらはいずれも国内の製作所のOEMなんですよね

『続・オールマホのすゝめ』オールマホの音色の魅力とは。

前回の記事では見た目の話題に終始してしまったので、オールマホの音色についてもまとめておこうというのが今回のテーマになります。 オールマホはもともとサイドバックの材として多く使われている材ですからね。振動特性が優れているわけではありません。そのため、帯域が狭く、倍音が少ない音色が特徴となります。 私が今まで弾いてきたオールマホで考えると大きく分けると「もちっと系」と「ガシャガシャ系」に分類できると考えています。 もちっと系は、柔らかい音、暖かい音と形容されることが多いですね。フィンガースタイルで優しいタッチで弾いてあげると他の材では決して出すことのできない美音を奏でてくれます。 例えば私が以前所有していた0-17などはまさにこのタイプで、優しく弾くととんでもなく美しいもちっとサウンドを響かせてくれました。硬質な材を使ったギターでは決して出すことのできない音色です。 また、小型のパーラーギターとして人気の高い2-17などもテンションの弱いコンパウンド弦を張ってあげるとなんとも言えない優しい音色を奏でてくれますよ。ピッキングした時のエッジ感は弱いのですが、その分、ジャジーなフレーズなどによく合う音色だと思います。 一方、ガシャガシャ系は真逆の音色で、倍音が少なく、箱なり感も弱いので弦鳴り感がより強調されるイメージでしょうか。ピッキングした時のエッジ感やザクザク感で勝負するような感じですね。 余計な倍音はありませんので。この方が歌に合わせやすいという方もいらっしゃると思います。また、エレアコとして使うのであれば、余計な倍音がないので、エフェクターなどで音作りもしやすいかもしれません。 多くの方がイメージされるオールマホの音色は後者のガシャガシャ系なのかと思います。前者はマーティンにしろ、ギブソンにしろ戦前のギターに多い特徴ですね。オールマホという要素に加えて何十年も熟成されたヴィンテージ・マホガニーというのも理由のひとつなのかもしれません。 いかがでしたでしょうか。オールマホだからと言って全てが同じ音でもないし、もちっと系とガシャ系の中間に位置するようなギターもありますし、弾き方を変えるだけでもちっと系にもガシャ系にもなるギターもあります。 オールマホ=泥臭いみたいな先入観に囚われることなく、唯一無二の圧倒的なビジュアルと持ちつつ、自分の出したい音色のギターを見つけられると

『続・オールマホのすゝめ』オールマホを選ぶ理由。

  クロサワ楽器さんの企画で00-17 Authentic 1931を弾く藤原さくらさん 今年に入って、Blue-GさんやHobo'sさんに戦前モノのオールマホガニーの名器「Gibson L-0」や「Martin 0-17」の入荷が続いたためか、オールマホで検索された方のアクセスが増えているんですよね。ありがたい話です。 とはいえ、人気のギターですからね。入荷したらすぐにホールド、ソールドアウトとなってしまうわけで。お茶の水に通っている私でさえ、なかなか実物を見ることもできませんし、ましてや遠方の方となると、なおさらですよね。 そこで、私自身が「Martin 0-17(1935年製)」や「Martin 2-17(1927年製)」を所有していたこともありますので、何かの参考にでもなればいいかなと思い、オールマホを選ぶポイントについて、考えをまとめておきたいなと思いました。 実際に自分で所有してみて、そして色々なギターを弾いてきて思ったこと、それは突き詰めると「見た目のインパクト=オールマホを選ぶ理由」なのかなと考えるに至っています。 一般的には「オールマホ=渋い、素朴」といったイメージからブルースに合うと思われる方が多いように感じていますが、私的にはそんな印象はないんですよね。むしろ、「お洒落でかわいらしいギター」だと思っています。 というのも、ブルースに求められるサウンドでは、ピッキングしたときのエッジ感であったり、低音のグルーヴ感などが重要になると思うのですが、そういった音を出せるギターは、スプルーストップのものでも存在するんですよね。いや、むしろスプルーストップの方が合うのではないかとさえ個人的には思っています。 やはりオールマホは、独特の帯域の狭さや倍音の少なさが特徴だと思いますし、それをどう活かして使っていくのかがポイントになるのだと思うわけです。 そして、歌モノとの相性としてはソフトなヴォーカルに合うと思います。使用ギターの例としては、海外だとジャクソン・ブラウン(1950年代のMartin 00-17)、国内だと藤原さくら(1943年製のMartin 00-17)が愛用していますね。 偶然、二人ともダブルオーサイズを選んでいるわけですが、弾き語りでの合わせやすさという意味でコダワリのボディサイズかもしれませんね。シングルオーよりもストロークがまと

朴 葵姫(パク・キュヒ)「ギター・リサイタル」に行ってきました。

  実は私、クラシックギターが苦手なのです。厳密にいうと、クラシックギターと言うよりは、クラシック音楽そのものが苦手なんですが。 オマエは音楽がわかってないとか言われたくないですし、きっといつか理解できる日が来るのではないかと、何度も何度も挑戦してきたのですが、もう諦めました。 そんな中、今回はなぜか聞ける、なぜか大好きなパク・キュヒ(Kyuhee Park)さんのリサイタルに行ってきましたというお話です。 会場はトッパンホール。実際に行ってみてビックリ。信じられないくらい不便な場所にありました笑。しかも真夏の 14 時開演ですからね。汗ダクダクでした。 そして自分の席に着席し、開演前に配られたパンフレットに書かれていた演目を見ると、、、素人向けの曲がひとつもない、辛口なセットリスト。とても不安な気持ちになりました笑 地方公演などでは、分かりやすいポピュラーな楽曲を演奏しているようなので、よく言えば耳の肥えた、悪く言えば口うるさい東京の観客が求めるものに応えているのでしょうが、かなりビビりました。もちろん、演奏がはじまってしまえば、そんな心配は全く不要な素晴らしいものだったのですが。 この人の演奏を聴くと『表現力』という言葉の意味を考えさせられます。よく、感情を込めて弾きなさいとか、情景をイメージをしながら弾きなさいみたいなことを言われますが、私的にはそうじゃないと思うんですよね。 私が思うに、パク・キュヒさんは決してフィーリングだけでは弾いておらず、かなりアナリスティックに音楽を突き詰めているんじゃないかと思うんですよね。 感情や情景をどう表現すればいいのか、その方法論を完全に理解しているのだろうと。そして、それを完璧に弾きこなす演奏技術もあるわけで。 いやー、本当に素晴らしいのです。 そんなパク・キュヒさんの素晴らしいところをいくつか書き連ねておこうかと思います。 ①とんでもない美音 使用ギターは 2009 年製の Daniel Friederich (ダニエル・フレドリッシュ)。正直、信じられないような音を出します。音響の優れた開場での生音なら尚更です。よくギターのことをたった一本のオーケストラみたいな表現をしますが、むしろ、この人の演奏を聴くとオーケストラなんて必要ない、素晴らしい演奏家とギターの 6 本の弦があればそれでいいと思わせてくれるほどです。 ②完

ニール・ヤング(Neil Young)の使用ギター:「Martin D-45(と、D-18)」

マーティンのフラグシップ・モデルであるD-45。 オリジナルのD-45は1933年に製造が開始され、1942年までに91本が作られました。有名な話ではありますが、光り輝くインレイが日本から輸入していたパールを使用していたんですよね。そのため、太平洋戦争の激化と共に輸入が困難になり、製造を断念したと言われています。 そんなD-45も1968年に復刻されます。でも、オリジナルは91本しか作られておらず、このギターの持つ音色というのはほとんど知られていなかったのではないかと思うんですよね。ただ、見た目のインパクトという点では人気は継続していたようで、D-28にインレイをつけるカスタマイズが施されたギターもあったりしますよね。 でも見た目だけではなく、唯一無二な煌びやかな豪華な音色もD-45の魅力な訳です。では誰が、音色としてのD-45の魅力を知らしめたのか。やはりそれは、CSN&Y(クロスビー・スティルス・ナッシュ&ヤング)の存在ではないでしょうか。D-45サウンドを駆使し、オープンチューニングを多用したアンサンブルには今なお圧倒されます。 でも、私は思うのです。D-45のようにギター一本だけでも十分と思えるほどに完成された音色は、アンサンブルよりもシンプルな弾き語りでこそその魅力が発揮されるのではないかと。すなわち、ニール・ヤングの弾き語りこそがD-45の真髄なのではないかと思うわけです。 で、なぜ突然ニール・ヤングの話題かと言うと、遅ればせながらOBS(オフィシャル・ブートレッグ・シリーズ)を大人買いしたからなんですけどね。 ・CARNEGIE HALL 1970(1970年12月4日) ・DOROTHY CHANDLER PAVILION 1971(1971年2月1日) ・ROYCE HALL 1971(1971年1月30日) ・CITIZEN KANE JR. BLUES(1974年5月16日) さらには、少し前にでた「YOUNG SHAKESPEARE(1971年1月22日)」と名盤「Live At Massey Hall(1971年1月19日)」も含めると、この時期近辺で6タイトルもリリースされています。ニール本人が、いかにこの時期を特別なものとして捉えているかが伝わってきますね。選曲的にも、1970年の「After The Gold Rush」と、1

「Collings」を語る。その⑨:Collings、Martinの歴史を振り返る。

  青がCollings、赤がMartinの製作本数 「Collingsを語る。」として、8回にわたって記事を書いてきました。思っていたよりも長い連載になってしまいましたが、私のコリングスに対する熱量は伝わりましたでしょうか。今回は最終回ということもあり、コリングスの歴史を振り返りつつ、まとめていきたいと思います。 歴史を振り返るにあたって、コリングスとマーティンの製作本数をグラフにしてみました。製作本数の伸び率をみるために、左軸がコリングス、右軸がマーティンとして二軸のグラフにしています。 これを見ると、製作本数の伸びが驚くほど類似していることが分かりますね。むしろ、マーティンの方がバックパッカーやエド・シーランの使用で有名になったLX1/LX1Eなどの廉価版ギターで製作本数を水増ししているところがあると思いますので、コリングスの成長は目を見張るものがあります。 その他にグラフから読み取れることとしては、アコースティックギターの転機となったのは、やはりエリック・クラプトンのアンプラグド(1992年)の影響が大きかったことがわかりますね。 また、グラフからは判別できませんが、ヴィンテージギターの魅力というのも、この時クラプトンが使用した000-42(1939年製)からはじまったと言われています。それを確かめるべく、今度は年表で整理してみたいと思います。 1988年:ビル・コリングスによって、テキサス州オースティンにCollingsを設立 1992年:エリック・クラプトンがMTVアンプラグドに出演⇒クラプトンが使用した1939年製の000-42により、ヴィンテージギターの魅力が広まる 1995年:Martin Vintage Seriesが開始 1996年:Martin 000-28EC(Eric Clapton Signature Model)が開始 1999年:Martin Golden Era Seriesが開始⇒初代はD-18GE、ゴールデンエラ仕様の追求がはじまる 2000年:Collingsの製作本数がはじめて1000本を超える 2005年:Collingsがヴァーニッシュ・フィニッシュを開始⇒NAMM SHOW 2005にてビル・コリングスが自ら製作したD-1A Varnishを発表 2005年:Martin Authentic Seriesが開始⇒初代

「Collings」を語る。その⑧:トップ材のベイクド加工。焼くか、焼かないか。

  悩みに悩んで選んだ焼いてないOM-1T 木材のベイクド加工(熱処理)がギターに使われはじめたのは、マーティンがVTSを導入した2015年のこと。 その前から取り組んでいたメーカーもあるかもしれませんが、やはり本家マーティンが開始すると市場へのインパクトが違いますよね。 その後、コリングスは遅れること一年、2016年から開始しています。コリングスではTorrefied(トリファイド)加工という呼び方ですね。 日本でもHEADWAYなどが積極的に導入していますね。 マーティンがVTS(Vintage Tone System)と名付けたこともあり、どうしてもヴィンテージ・サウンドの追求的な感覚でとらえてしまうのですが、、、 このベイクド加工はギター用として開発された技術ではなく、そもそもは建築などで使われる材用に開発されたものです。 ちょっとネーミングに騙されている気もしますね。 で、焼いたのと、焼いていないの、どちら派ですか? と聞かれたら、私は焼いてない派と答えます。 なぜ、焼いてない方が好きかと言うと、単純に音色が好みだからです。 ここで自分の立ち位置を明確にしておこうと思いますが、やはり実際のヴィンテージギターと、ベイクド加工したギターの音は似て非なるものと考えています。 ただ違うとは言っても、良い悪いの話ではなく、好みの差なのであしからず。 ※この記事の画像でも使用していますが、近々、マホガニー図鑑として「Collings OM-1T」を紹介する予定なのですが、、、 実はそれを購入する際に、同じトラディショナルシリーズで焼いたものと焼いてないものの新品が揃うという奇跡があったんですね。 で、どちらも素晴らしいギターで、めちゃくちゃ試奏させていただいて、悩んだ末に「焼いてないもの」を選んだのです。 ということもあり、ここでその時に感じたことをまとめておきたいなと考えています。 まず、私が弾くことを前提にしていますので、フィンガースタイルのソロギター用として評価をしています。 私の評価ポイントとしては、低音域から高音域までのバランスの良さや、ピッキングの強弱による反応を主にみています。 音はコリングスなので間違いありませんから。 私自身、焼いたのと焼いていないので一番大きな差として感じたのは、ピッキングの強弱に対する追随性でした。 焼いてない方が指弾きでは反応が

「Collings」を語る。その⑦:進化したスタンダード・シリーズ、そして塗装による音色の違い

どれがスタンダード・シリーズなのか定義はないですが、多分これ全部だと思います。 本家Martin、PREWAR GUITAR、そしてCollingsといずれもマーティンの黄金期を目指したギターを比較してきました。 どれも明確なコンセプトのもとに製作された素晴らしいギターですので、正直なところどれを選ぶのかは好みの問題だと思います。 ただこういった高度な復刻を目指す動きがある一方で、更なる進化を遂げているギターがあるんです。 それは、Collingsのスタンダード・シリーズです。いたって普通のCollings、実はこれがまた凄いというお話になります。 私がスタンダード・シリーズに変化を感じたのはちょうどトラディショナル・シリーズが出始めた頃だったと思います。 某店にて、サイドバックがマホガニー、トップがシトカスプルースのドレッドノート「D-1(2016年製)」を試奏させてもらった時に、これさえあれば十分だと感じたんですよね。 もしくは、あまりの素晴らしさに「負けた」って感じさせられたって方が私の本音に近いかもしれません。 もちろん、他にも良いギターはたくさんありますが、多くのギタリストが望む要素がかなりの高次元で満たされているなと見せつけられたわけです。 そしてそれが確信に変わったのが、ダブルオーサイズが出回りはじめた頃だったかなと。 で、私がどのような変化を感じたかというと、 Collingsの特徴だった重厚感のある低音はやや軽やかになり、いろいろな音楽に合わせやすいバランスにシフト エッジの効いた高音域(倍音)もやや抑えられ、相対的に中音域の倍音が前面に出てきた。これにより、プレーン弦の太さ、艶が以前よりも感じられるようになった 音のヌケが良くなり、レスポンスも向上 変化の方向性としては、2009年頃のマイナーチェンジの延長線上だと思います。 仕様変更があったわけでもないので、不思議ではあるのですが、他の方々の意見などを聞いてみても同じような感想を持たれている方が多いように感じます。 トラディショナル・シリーズの開発により得られた知見をスタンダード・シリーズに 反映させたのか、それともトラディショナル・シリーズとの差別化のために音色を変えたのか色々考えられますが、、、これらは私の憶測の域を出ません。 ただひとつ言えることは、現代的なフィンガースタイル向けに対応した

最近話題?「マーティンのノンテーパード・ブレーシング」とは。

今回は、アコースティック・ギター・マガジンのVol.92を取り上げます。久しぶりの書籍ネタですね。 私のブログの方針としては、実際に自分の目で見て、手で触って、経験したことを書いていきたいと考えているので、極力、雑誌は見ないようにしているのですが(影響されやすいもので・・・)、今回はどうしても気になるネタがあったので取り上げてみました。 巻頭特集は「弾き語りの美学」。両国国技館で行われた「J-Wave TOKYO GUITAR JAMBOREE 2022」とその出演者による弾き語りへのコダワリを紹介。 その他にも、「サウンドポート月アコギの徹底検証」などマニアックで興味をそそられる内容もあるのですが、私が着目した記事はこれですね。 「買えるアコギの博物館 Blue-Gに行こう!」 Blue-Gと言えば、東京を代表するアコースティックギター・ショップですね。 店舗が渋谷に移転したことで、個人的には少し足が遠くなってしまっているのですが、 日本が世界に誇れる楽器屋のひとつではないかと。 その中で私が注目したのは、「テーパード・ブレーシング」という新しい単語です。正直なところ、なんだそれって感じでした。 記事を読んでみますと、1945~1948年頃に使われていたブレーシングで、最近になって発見?されたとのこと。 戦前のスキャロップ・ブレーシングのようにパッと見でわかるような削り方ではなく、ボディのリム側に向かって滑らかな削り込みがされているようですね。 ※今度、実物を見させてもらったときにアップデートします。 従来の情報だと、この時期の仕様はノンスキャロップ・ブレーシングとされていましたからね。かなり判別しにくい削り方なのだろうと推察します。 ここで、個人的にちょっと思ったことが。これは私の邪推にすぎませんが、、、 マーティンとしては、本当はこれくらいの軽い削り込みをいれたかったのではないかと思うんですよね。 今となっては、これもまたひとつの個性のようにノンスキャロップ・ブレーシングも人気がありますが、仕様変更した当時としては楽器として鳴りにくい方向にシフトしたわけですからね。 ※あくまでも、狙いは強度の向上だったはず。 そう考えると、、、ノンスキャロップというのは大量生産に向けた妥協策で、マーティンが本当に使いたかった強度と音色のバランスを備えているのはこの40年代後半

「Collings」を語る。その⑥:では、トラディショナルシリーズはどうなのか。

  マーティンが伝統の継承、プリウォーギターがゴールデンエラの再現とした場合、コリングスのコンセプトとは一体何なのでしょう。 いろいろあるとは思いますが、私は「ビル・コリングス自身が本当に作りたいギターを作る」だったのではないかと考えています。 マーティンスタイルを踏襲しながらも、彼オリジナルのくっきり、はっきりのコリングスサウンドを発明したわけですが、それでもやはり常にオリジナルのマーティン(特にゴールデンエラ期)への憧れがあったのではないかと思うわけです。 単純にマーティンの復刻を目指したのではなく、彼なりに徹底的に研究し、独自のコリングスサウンドとして再構築してきたわけですよね。 そして更なる探求の結果として、近年モノのコリングスや、トラディショナル・シリーズに見られるようなマーティン寄りのサウンドに辿り着いたのではないかと私は考えるのです。 また、音色の再現というよりは、ゴールデンエラ期のギターが持つ特性の再現を目指していると感じています。 それはまさに、コリングスの売り文句である「基音の強さと優れたレスポンス」ですね。つまり、同じゴールデンエラ期のギターを目指しつつも、プリウォーギターとは狙うポイントが異なるわけですね。 コリングスの場合は、さらに楽器としての精度の高さ、例えばピッチの正確さであったり、演奏性、メンテナンス性、堅牢性などを極限まで高めたものだと考えています。 また、ヴィンテージの「枯れた音」が素晴らしい的な表現をされる方がいらっしゃいますが、実は私的にはあまり枯れた音というのに興味はなく、それよりもこのコリングスが再現してくれた要素(基音の強さと優れたレスポンス)が重要なのですよね。 まぁ、私自身、コリングスを選んで購入しているので褒めるのは当たり前ではあるのですが。 まさに、私が求めるヴィンテージギターの要素が詰め込まれているのです。 また、癖のない素直な音色が様々な用途(ジャンル)に活用しやすいという点も、このトラディショナルシリーズの魅力ではないでしょうか。 ちなみに、コリングスでもトラディショナルシリーズとレギュラーシリーズとを比べると、前者がダーク、後者がブライトな印象になります。 最後にメリルと比べた場合ですが、2010年代のブライトな音作りに近いと思います。 ■関連記事 ・ 「Collings」のすすめ。 ・ 追悼:ビル・コリ

「Collings」を語る。その⑤:Pre War Guitarsとの比較

  前回の本家マーティンのオーセンティックシリーズとの比較に続き、最近話題のプリウォーギターとの比較をしてみたいと思います。 Pre War Guitars(プリウォーギター) コンセプトとしては、間違いなくゴールデンエラ期の再現でしょうね。 エイジド加工(長年弾き込んだかのような傷をわざと付ける加工)も含め、その徹底ぶりは他社を圧倒しています。 これぞゴールデンエラ期のアコースティックギターだ!と言える、ダークで深みのある音色。 ただしその分、音のヌケが悪い印象がありますね。これはあまり弾き込まれていないものしか試奏したことがないので、それが原因の可能性もあります。 この辺は今後弾き込んでいくことで改善する可能性もありますが、トップ材が高熱処理を施したものなので今後どのように変化していくのかが未知数というのが唯一の不安材料かもしれませんね。 また、オリジナルのヴィンテージを知っている人からすると、凄い再現度だと驚かされる部分と、「この部分を再現してしまったのか」と感じる人もいるかもしれません。 この「再現してしまったのか」ですが、あまりにも徹底的に再現しているため、ヴィンテージ的な味付けが強すぎて、音楽的に使える用途(ジャンル)が制限されてしまうという意味です。 決して楽器としての善し悪しではないのであしからず。 マーティンとの比較でいうと、80年前の作りたてのゴールデンエラ期のギターを再現しているマーティンと、80年経った後のサウンドを再現しているプリウォーギターといったところでしょうか。 そして、メリルと比べてどうなのかと気になる人もいると多いですかね。 私の感覚だと、メリル自体も2000年代と2010年代とでは音作りが変わっていて、ダークからブライトな方向にシフトしているイメージです。 プリウォーギターに関しては、2000年代のメリルのダーク寄りな音色をもっと濃く仕上げたものと思ってもらえば良いかなと考えています。 次回は、トラディショナルシリーズをオーセンティック、プリウォーギター、メリルと比較してみたいと思います。 ■関連記事 ・ 「Collings」のすすめ。 ・ 追悼:ビル・コリングス(1948-2017) ・ コリングス、おそるべし(トラディショナル・シリーズ)!!! ・ 「Collings」の試奏で学んだこと。Martinの魅力を再認識。 ・ 「

「Collings」を語る。その④:マーティン・オーセンティック・シリーズとの比較

  今回は、皆さんが興味を持たれているであろうコリングスのトラディショナルシリーズと同じコンセプトである本家マーティンのオーセンティックシリーズや、最近話題のプリウォーギター(ブランド名)との比較をしてみたいと思います。 また私自身、ゴールデンエラ期の再現としては最高峰と言われるメリルであったり、マーティンの D-18(1937年製) ※マホガニー図鑑「Martin D-18(1937年製)」 00-18(1938年製) ※マホガニー図鑑「Martin 00-18(1938年製)」 000-18(1938年製) ※マホガニー図鑑「000-18(1938年製)」 000-28(1938年製)※たまにはローズの話でも(近日公開予定) を所有して弾き込んだ経験がありますので、そのあたりの経験もまじえて比較してみようと思っています。 Martin Authentic Series コンセプトとしては、当時の材料、設計、工法を再現するというもの。 まさに、「マーティンの伝統の継承」ではないでしょうか。 ネックの補強材に、当時使われていたスチールTバーやエボニーロッドを復刻したり、ヴィンテージサウンドの要といわれるニカワ接着を再現したことで話題になりましたね。 メーカーの製品ではありますが、ハンドメイドにこだわって製作されており、高品質で良いギターだと思います。 ただし、カタログスペックとしての再現性は高いものの、ある程度の量産体制を意識しているためか、内部のブレーシングの組み方など、細部では再現性が低い部分もあるようですね。 また、音色に関してもゴールデンエラ期のサウンドを突き詰めているというよりは、80年前に作られたギターが新品の頃はこんな音色だったかもねという仕上がりです。 これは別に悪い意味ではなく、あえてヴィンテージ風の鳴りを再現していないというだけの話です。 むしろ現代的な楽曲にも合わせやすく、使いやすい音色だと思います。 結論としては、本家マーティンとしては間違いなく最高峰のギターですので、新しいマーティンを所有したいという方にはベストな選択肢だと思います。 次回はPre War Guitarsとの比較を予定しています。 ■関連記事 ・ 「Collings」のすすめ。 ・ 追悼:ビル・コリングス(1948-2017) ・ コリングス、おそるべし(トラディショナル・

「Collings」を語る。その③:トラディショナルシリーズの評価

  私が衝動買いしてしまったOM-2HT(Authentic Style)です。 何が凄いって、本当に音色が自然で、レスポンスも極めて素直なのです。私がローズウッドのOMに求めるもの全てが備わっています。 もちろん、個人製作家の作るギターや、ヴィンテージのような強烈な個性はありませんが、私の弾き方に応じて、様々な表情を見せてくれるのです。 当然のことながらこれ以上に素晴らしいギターも存在しますが、これさえあれば他には何もいらないとさえ思えるほどに素晴らしいギターだと考えています。 とはいえ、極めてベーシックなシトカスプルースとインディアンローズウッドの組み合わせですからね。 材フェチの方からすると、つまらないギターと思われるかもしれません。 でも、音だけは抜群に良いのです。 もしかすると、初期ロットということもあり、選びに選び抜かれた材が使われていたり、もしかすると、優秀な技術者が製作している可能性もあります。 ただ、その後に出たトラディショナルシリーズを弾く限り、いずれも素晴らしい仕上がりだと感じています。 言いかえると、シトカ、インドローズの組み合わせであっても、良質な材が選定され、優れた設計思想と、卓越した製作技術があれば、圧倒的な音色を作り出せるのだなと。 これは、ちょっとやそっとのハンドメイドギターでは太刀打ちできないなと。音は材で決まるなどと言う方もいますが、その常識を覆された気がしました。 ちなみにこのOM-2HTですが、初期ロットということもあり、ネックの形状がかなり肉厚のオーセンティック仕様となっています。 これだと弾き難いなどと言われる方もいらっしゃるとは思いますが、この肉厚なネックでないと出せない音があるんですよね。 例えるならば初期のGibson J-45も、通称ベースボールバットなどと呼ばれる極太ネックで有名ですね。もちろん、コリングスはそこまで太くありませんが。 その後、トラディショナルシリーズのネックは、レギュラーシリーズに近い細身なものに変更されています。 でも、ビル・コリングスがこだわって設計したであろう初期のオーセンティックネックが奏でる音色は素晴らしいですので、機会があれば是非試していただきたいと思います。 などと、いろいろと書いていますが、結局のところ皆さんが気になるのは同じコンセプトのギター、例えば、マーティンのオーセンティ

「Collings」を語る。その②:トラディショナルシリーズの誕生

  実物はもっと美しい、Traditional Case! 今回は2016年に発表されたトラディショナル・シリーズの話題です。 ヴィンテージサウンドの要と言われるニカワ接着に、オールラッカー塗装の復活、そして今となっては貴重となったトラディショナル・ケースなどで話題になりましたね。 ケースに至っては、ビル・コリングスが開発に4年もの歳月をかけたそうで、気合のほどがうかがえます。 ※むしろ、採算が合わなかったのか、すぐに製造終了となってしまいましたが。 実際に弾いてみるとわかるのですが、そういったヴィンテージ的な仕様だけではなく、それ以上に細かいこだわりを随所に感じることができるんですよね。 私が気付いただけでも、レギュラーシリーズと比べて全体的に軽量化されていること、ブレーシング(内部の補強材)の削り方、質量のある太めのネックシェイプ、ノータンブレーシングの採用、ブリッジ側の弦間隔が広げられるなど様々な違いが見られました。 きっとそれ以外にもこだわりがたくさん詰まっているはずで、仕様だけではなく「ヴィンテージサウンドの追求」こそが真のコンセプトであることが伝わってきます。 当時、ビル・コリングスも語っていましたが、このヴィンテージサウンドの追求という点では、コリングスのサブブランドであるウォータールーで得られた経験が大きかったようですね。 ウォータールーですが、カラマズー(ギブソンのサブブランド)等のような古き良きギターが持つ魅力を再構築することが狙いだったのかなと私は感じています。 良い意味での粗さと、コリングスの精緻さが絶妙にブレンドされたヴィンテージ感溢れる素晴らしいギターでした。 私的には、このヴィンテージ的な感覚(音の柔らかさ、優しさ、奥深さ)が、コリングスがマーティン寄りの音色に近づいたと感じさせる一因だったりもするんですよね。 また開発に当たっては、ジャズギターの鬼才ジュリアン・レイジが関わっていたそうですね。 ジュリアンがコリングスを訪問した際に、OM-1A※の製作を依頼したことがはじまりで、たまたまコリングス側でも、トラディショナル・シリーズの開発に着手した頃だったこともあり、その流れで企画に参加することになったようです。 ※サイドバックがマホガニー、トップがアディロンダックスプルースのOM(オーケストラモデル) ジュリアン曰く、 「新品の時から僕

「Collings」を語る。その①:楽器としての魅力

前回の「Collingsのすすめ」は、楽器と言うよりもブランド・製品としてコリングスがいかに優れているかに着目していましたので、今回は「Collingsを語る」として、楽器としての魅力について触れていきたいと思います。 普通はブランドの成り立ちや、創業者ビル・コリングスのことから語りはじめるものだとは思いますが、それは「Collingsを語る。その⑤」くらいで備忘録的にまとめておくつもりです。 まずは私が語りたいことから語らせて下さいw 私がコリングスの凄さをはじめて体験したのは、2014年に行われた「Varnish弾き比べツアー」の時でした。 この頃、コリングスが力をいれていたヴァーニッシュ塗装の良さを広めるため、コリングスを取り扱っている様々な店舗にて試奏会のようなものを開催していたんですよね。 私自身は残念ながらタイミングが合わず、この企画に参加できなかったのですが、ドルフィンギターズ恵比寿店さんにお邪魔した際に、この企画を真似た弾き比べをさせてもらったんですよね。 この時は、塗装方法の異なるドレッドノートとOMを弾かせてもらいました。塗装の違いによる変化、特に音の広がりや倍音感の違いなどを体感し、塗装だけでこんなにも変わるのかと驚かされたものでした。 ただ、この時点では私の経験や技術がまだまだ未熟でした。もちろん、楽器としての素晴らしさは理解できたものの、この楽器がもつ真の魅力までは気付くことができていなかったと思います。 その後、コリングスについても勉強を重ね、どうやら創業当初はマーティンと同じラッカー塗装を用いており、それがまた素晴らしい音色だということを知りました。 またその中でも、シリアルナンバーが三桁のものが「三桁コリングス」などと呼ばれ、プレミアが付いていることも学びました。 ※ラッカー塗装は1000番台前半でも存在します。 ということもあり、「ラッカー時代のコリングスが最高なはず!」という思い込みのもと、90年代半ば頃までのモデルを狙って試奏をしていました。 そうすると、何本弾いてもクッキリ、カッチリのコリングスサ・ウンドなんですよね。 いくらマーティン・スタイルではあっても、コリングスは別の楽器なんだなという印象を持っていました。 私の演奏スタイルとしては、ちょっと扱いにくい硬い音に感じていたわけです。 でも、たまにですが、柔らかなニュアンス

「Collings」のすすめ。

ブログをはじめて8年目となりましたが、私自身、それなりの経験を積んできたと思います(思っています)。そういった中で、これだけは間違いないと言えることがあります。 それは「コリングスはやはり凄かった」ということです。 これは昔から変わらずに感じてきたことではありますが、その時期によって感じる凄みが変わってきていたりします。 今回はその辺をお話していきたいなと。 (第一波) はじめてコリングスを弾いた時の衝撃。今でも鮮明に覚えています。 良いギターとはこのことを言うのかと、、、実力の違いを見せつけられました。 ただ、あまりの精度の高さと、鳴りの良さで、この頃の私には、とても使いこなせる道具ではないとも思いました。 (第二波) その後、私自身、様々なギターを弾いてきました。 ヴィンテージならではの味わい深さを知ったり、個性豊かなルシアものを学んだりと、いろんなギターを体験し、学習してきました。 そうやって、経験値を上げたからこそ見えてきた、コリングスの凄さというものもありました。 私がようやく、コリングスの楽器としての完成度の高さを理解できるようになったのかもしれませんね。 この頃には、私の演奏面での技術力が上がってきたことで、道具としてのコリングスの優秀さが見えてきた時期でもありました。 (第三波)・・・今です。 そしてさらに凄いと思わされたのが近年モノのコリングスなんですよね。 もう既に最高峰、完成形と思っていたギターが、成長を止めることなく、更なる進化を遂げていくのです。 なんなんだ、このメーカーはと。 現時点の感想ではありますが、結局、コリングスであれば、自分の表現したい音楽を全てカバーできるのではないか、あとは自分の技術を高めるだけなのではないか、と思うようになりました。 私がここまでべた褒めするコリングス、一体何が凄いのか。 一般的によく言われている、 高品質(ハズレ個体がない) 丈夫(トラブルもない) 木工精度の高さ については、あえてここでは触れませんが、私ならではのコリングスをすすめる3つの理由をお話ししたいと思います。 ①メーカーならではの強み 単に高品質なギターというだけであれば、個人製作家のギターでもいいでしょう。 でも、コリングスにはそれ以上の強みがあるのです。 個人製作家にはなくて、コリングスにあるもの。 それは、研究開発に使える予算すなわち「