今回は、アコースティック・ギター・マガジンのVol.92を取り上げます。久しぶりの書籍ネタですね。
私のブログの方針としては、実際に自分の目で見て、手で触って、経験したことを書いていきたいと考えているので、極力、雑誌は見ないようにしているのですが(影響されやすいもので・・・)、今回はどうしても気になるネタがあったので取り上げてみました。
巻頭特集は「弾き語りの美学」。両国国技館で行われた「J-Wave TOKYO GUITAR JAMBOREE 2022」とその出演者による弾き語りへのコダワリを紹介。
その他にも、「サウンドポート月アコギの徹底検証」などマニアックで興味をそそられる内容もあるのですが、私が着目した記事はこれですね。
「買えるアコギの博物館 Blue-Gに行こう!」
Blue-Gと言えば、東京を代表するアコースティックギター・ショップですね。
店舗が渋谷に移転したことで、個人的には少し足が遠くなってしまっているのですが、
日本が世界に誇れる楽器屋のひとつではないかと。
その中で私が注目したのは、「テーパード・ブレーシング」という新しい単語です。正直なところ、なんだそれって感じでした。
記事を読んでみますと、1945~1948年頃に使われていたブレーシングで、最近になって発見?されたとのこと。
戦前のスキャロップ・ブレーシングのようにパッと見でわかるような削り方ではなく、ボディのリム側に向かって滑らかな削り込みがされているようですね。
※今度、実物を見させてもらったときにアップデートします。
従来の情報だと、この時期の仕様はノンスキャロップ・ブレーシングとされていましたからね。かなり判別しにくい削り方なのだろうと推察します。
ここで、個人的にちょっと思ったことが。これは私の邪推にすぎませんが、、、
マーティンとしては、本当はこれくらいの軽い削り込みをいれたかったのではないかと思うんですよね。
今となっては、これもまたひとつの個性のようにノンスキャロップ・ブレーシングも人気がありますが、仕様変更した当時としては楽器として鳴りにくい方向にシフトしたわけですからね。
※あくまでも、狙いは強度の向上だったはず。
そう考えると、、、ノンスキャロップというのは大量生産に向けた妥協策で、マーティンが本当に使いたかった強度と音色のバランスを備えているのはこの40年代後半のノンテーパードだと考えられたりはしないでしょうか。
これは40年代後半の仕様を持ちあげすぎなのかもしれませんが。ただ、そう言われてみると・・・
自分が弾いたことのある40年代後半のギターを思い出してみると、確かに音が良い印象だったりするんですよね。
例えるならば、ゴールデンエラ期のような一音一音の粒立ちの良さ(分離感)を備えつつ、音の重心が低音域から中音域にシフトしたようなバランスへと変化している印象です。
これって、むしろ現代の音楽にマッチさせやすい音作りではないかとも思ったりするわけです。
また、50年代に入ると、さらにストローク向けな音作りに変わっていくので、フィンガーでも使いやすいこの40年代後半の仕様は非常に魅力的なのではないかと。
この音色について、自分なりの解釈としては、シトカスプルースが使われはじめた直後ということもあってよい材が選定されていたのではないかとか、この時期特有の丸みを帯びた少し肉厚なネック形状の影響かなと考えていましたが、実はブレーシングにも秘密があったんですね。
ただ、この40年代後半というのは、アディロンダックスプルースからシトカスプルースに変更されたことや、Style 28系でいうとヘリンボーンがなくなったタイミングということもあって、仕様的には微妙な位置付けとされていたりもします。値段もそれほど安いというわけでもないし。
なので、もう少しお金を出して本物のプリウォーを買うか、出費を抑えるなら50年代で鳴りの良い個体を探すのかといった選択肢が浮かんでしまうのも事実かと。なかなか難しいものですよね。
書籍に話を戻しますが、上記以外ではエボニーロッドやアディロンダックスプルースがいつごろまでなのかみたいな解説が面白かったですね。過渡期の仕様っていろいろなものがありますからね。
例えば1930年代にはロングスケールの000-18があったりもしますし(それってOMじゃないのかと)。
ネタバレになるので、詳細は雑誌を読んで頂きたいところですが、Blue-Gのスタッフさんの発言は、相当数の実物を見てきたからこそと感じさせる発言ばかりで、信頼感や説得力も抜群ですし、本当に勉強になりますよね。
ちなみに、2021年12月号のVol.90から継続している特集なので、興味をもたれたらそちらも目を通してみてください。