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8月, 2014の投稿を表示しています

坂田さんの工房訪問 その⑤

Sakata Guitars D-28Mの記載を発見! 工房でちょっと話題になったのですが、押尾コータローさんの「10th Anniversary BEST」で坂田ギターが使われているそうですね。しかもそれは、名曲「風の詩」でだそうです。家に帰ってから調べてみると、ブックレットにもスコアにも記載がありましたね。 以前から、透明感のある美しい音色だなと思っていたんですが、まさか、坂田ギターが使われていたとは。使われたのは、 トップにムーンスプルースが使われた「D-28M」だそうです。激鳴りする坂田ギターを完璧コントロールして、これほどまでに抑制された音色を出せるなんて、押尾さんのテクニックって本当に凄いなと思いました。 ちなみに、ムーンスプルースですが、ヨーロピアンスプルースを特定の季節と月齢のタイミングで伐採し、自然乾燥させたものだそうです。これは「植物が持つ水分は、月の満ち欠けの影響を受ける」という考え方に基づいているようです。つまり、キーワードは「乾燥」で、もっとも木材を乾燥させやすいタイミングで伐採して、さらに時間をかけて自然乾燥させるわけですね。音への影響は諸説あるようですが、興味深い話ですよね。

坂田さんの工房訪問 その④

私の好みだったブラジリアンローズウッド(ハカランダ) 今回は注文していませんが、ブラジリアンローズウッド(ハカランダ)もタップトーンさせて頂きました。 こちらは、トップ材のスプルースよりも、さらに個体差が大きくて驚きました。まるで金属やガラスのように高音が響くものや、まるで神社の鐘のようにゴーンと太く鳴り響くもの、そして音の広がり方にも違いがありました。そして、長い年月、湖の底に沈んでいたといわれるハカランダは、少し緑がかっていて、独特な深みのある響きをしていました。製作の過程で緑がかった部分は削られてしまうのだそうですが。 でも、これだけの個体差があると、当然ハズレのハカランダもあるわけで、ハカランダとローズウッドの違いを信じない人がいても仕方ないのかなとも思いました。事実、少し前までの私が、そうでしたし。また、アディロンは音が暴れやすいので、まとまりのいいハカランダに合わせるのが良いのではないかなど、トップとサイドバックの組み合わせについても議論を重ねました。 その他にも、ハカランダの入手経路や、どのルシアーがどういった材を持っているかといった話で盛り上がったりもしました。当然、ここに書ける内容ではありませんが(笑)。ちなみに、私のオーダーは、キューバンマホガニーのサイドバックだったのですが、それはまたの機会にでも。でも、タップトーンをしながら、完成したギターの音を想像するのは、本当に楽しいですね。とても貴重な体験をさせて頂きました。

坂田さんの工房訪問 その③

私の選んだアディロンダックスプルースです。 楽しみにしていた木材選び。はじめてのタップトーンに挑戦してきました。 最初は、素人の私に違いがわかるのか、心配していたのですが、実際に叩いてみると意外とわかるものなんですね。それだけ、個体差があるということなのでしょう。やり方は簡単です。指の腹で叩いて低音の響きを確認し、爪で叩いて高音の響きを確認します。 まずは、トップ材です。もちろん私が選んだのは、マホガニーと相性のいい「アディロンダックスプルース」です。木目を見て、音の良さそうなものを選んでは、ひたすら叩くの繰り返しです。密度が濃くて高音の響きの良いものや、太くて腰のある中低音が特徴のものなど、木の板を叩くだけでも、はっきり違いがわかったので驚きました。 今回のテーマは、「ソロギター向けのマホガニー」なので、高音の響きが美しく、抜けの良さそうなものを選びました。また、アディロンの木目は、中央が狭く、サイドに行くほど広がっていくものが良いとされていますが、その音の違いもタップトーンで体感することができました。これはいい勉強になりましたね。 ちなみに、30年間、自然乾燥させたというシトカスプルースも試させて頂いたのですが、これまた抜けのよい素晴らしい響きでした。何が凄いって、サステインが凄いんです。木の板を叩いただけなのに、ずっと鳴り続けるんです。木材の乾燥が、どれだけ音に影響を与えるのかってことですよね。

坂田さんの工房訪問 その②

製作中のSakata Guitar。見えないところも美しくがポリシー。 坂田ギターに関しては、製作本数も少なく、情報もあまり出回っていません。まさに、知る人ぞ知るギターなのですが、それだけでは、あまりにも勿体ないということで、簡単に特長を紹介しておきたいと思います。ギブソンスタイルも取り扱っていますが、ここでは私の得意なマーティンスタイルについて。 プリウォーマーティンを理想形としながらも、新しいアイディアを取り入れ、コリングスのような堅牢性や実用性を高めているところが特徴です。音的には、マーティンとコリングスの中間に位置付けられて、マーティンが持つ柔らかさと、コリングスが持つ粒立ちの良い芯のある音を両立させています。そして、とにかくバランスが良く、フィンガーでもストロークでも問題なく使えます。 ネックとボディのジョイントには、マーティンのダブテイルではなく、コリングスと同じボルトジョイントが使われています。ボルトジョイントは音が硬くなると言われていますが、新品にも関わらず、マーティンのような柔らかい音が出せてしまうところが、坂田ギターの凄いところだと思います。マーティンサウンドの肝でありながら、構造上の弱点と言われているジョイント部分の課題を克服しているとも言えますね。 ネックは、アジャスタブルロッドに加え、カーボンで補強しています。これもコリングスとアイディアは同じです。軽くて、反りにも強い。日本ではあまりアジャスタブルの人気はないのですが、ジム・メリルでさえも、音質にはロッドの種類よりもネック材の密度の方が影響すると言い、アジャスタブルを採用していますからね。私は実用的なものが好きなので、音さえ良ければ調整可能なアジャスタブルの方がいいと思います。調整の重要さも坂田さんは力説されていました。 そして、外観も「シンプルで美しいものが良い」という考え方にも共感できます。装飾やデザインに力を入れるのではなく、とにかく音で勝負をしたいという考え方なんですよね。それが、これだけ良質の材料を揃えることに繋がっているんでしょう。木材のストックもいろいろ見せて頂きましたが、どれもこだわりのある素晴らしい材だと思いました。使いたくない材を正直に言ってくれるところも好きでした(笑)

坂田さんの工房訪問 その①

坂田さんの工房です。 思い立ったが吉日。というわけで、山梨にあるSakata Guitarsの工房にお邪魔してきました。 坂田さんは本当に気さくな方で、会話も魅力的で面白く、到着してからぶっ通しで6時間もギター談義してしまいました(笑)。音のイメージ合わせは、私の坂田ギターへの感想や、コリングスやマーティンについて議論していく中で、だんだん、深まっていったと思います。特に面白かったのが、コリングスに関する議論でした。 コリングスは素晴らしいギターなのだけれど、音に硬さを感じる人が多い。ビル・コリングスは10年弾き込んでくれれば変わるというけれども、10年弾いてもまだ硬い(笑)。そして、ヴァーニッシュ・フィニッシュという切り札を出し、柔らかい音を実現したが、それは自分たちのギターに対する課題を認めたことになるのではないのか。 簡単にまとめるとこんな感じですね。ここで私が「坂田ギターの音は、ヴァーニッシュ・フィニッシュのコリングスに近いと感じています」とお伝えしてみました。この感覚は、坂田さんご自身も感じられていたようでした。加えて、ワニスを使わなくても、ラッカーで薄く仕上げるだけで、同じような鳴りを出すことができるようになったと言われていました。重要なのは塗装の方法や種類よりも、厚さではないかと。 また、楽器にも「音楽性」を求めるという坂田さんの考え方が自分にはしっくりきました。私自身、いろいろなアコギを弾いてきていますが、音はいいけど、このギターで何を演奏するの?っていうものが多い気がします。坂田さんは、自然と歌いたくなる音や、自然とメロディが浮かんでくるような音を目標にしていると。坂田さんを日本のグレーベンと例える人もいますが、わかる気がしましたね。 そして「とにかく、鳴りが良くて、レスポンスの良いギターであれば、あとはプレイヤーがコントロールすればいい」という考え方がいいですね。耳の痛い話ではありますが、最終的な音を出すのは演奏者ですからね。そのために坂田さんは、最良のギターを作るだけだと。坂田さん自身がシンガーソングライターということもあって、プレイヤーならではの視点が、ギター製作に反映されているのかもしれません。

ソロギターに合うマホガニーを考える。

Sakata Guitars OO-28B 坂田ギターをオーダーするにあたり、テーマを考えてみました。それは「ソロギターに合うマホガニー」です。 一般的にソロギターでは、ローズウッド系のアコギが使われることが多いですね。それは、マホガニーに比べて、低音から高音までのダイナミックレンジが優れているからだと考えています。では、ダイナミックレンジの劣るマホガニーで、ソロギターを演奏する場合には、どのようなアコギが向いているのでしょうか。マホガニーの特性から考えてみたいと思います。 マホガニーの最大の魅力は、美しい高音域にあると考えています。そのため、美しいプレーン弦やハイポジションでの響きをどこまで引き出せるのかがポイントになります。これには、トップ材を変えたり、ブレーシングでも調整できますが、単純にボディサイズを小さくするだけでも、低音の量感を抑えることができるので、相対的に高音域の存在感を高めることができますよね。 続いて、マホガニーの欠点について考えてみます。マホガニーは、軽くて柔らかい素材ですから、どうしても、低音域のダイナミックレンジが落ちてしまい、音に柔らかさや甘さが出てしまいます。そのため、張りのある低音や、深く沈み込むような質感は期待できません。そういった低音を求めるのであれば、マホガニーではなく、重くて硬いローズ系の素材を選ぶべきです。 低音の量感であれば、ボディサイズを大きくすることで増幅できますが、しまりのない低音を増幅するのは、あまり好みではありません。ですので、逆にボディサイズを小さくすることで、量感を押さえ、キレのある低音にした方が、マホガニーの特性を活かせるのではないかと考えました。そう、私にとって、ソロギターに合うマホガニーのキーワードは「スモールボディ」なのです。 さまざまなボディサイズの試奏を行った結果、私はダブルオーが好みだという結論に達しました。ダブルオーは、音の透明度の高さや、レスポンスの速さ、そして6本の弦のバランスの良さが特徴で、通好みのギターと言われたりもします。そして何よりも、お気に入りの「00-28B」の兄弟のようなマホガニーが欲しいと思ったんですよね。