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『続・オールマホのすゝめ』オールマホを選ぶ理由。

 

クロサワ楽器さんの企画で00-17 Authentic 1931を弾く藤原さくらさん

今年に入って、Blue-GさんやHobo'sさんに戦前モノのオールマホガニーの名器「Gibson L-0」や「Martin 0-17」の入荷が続いたためか、オールマホで検索された方のアクセスが増えているんですよね。ありがたい話です。


とはいえ、人気のギターですからね。入荷したらすぐにホールド、ソールドアウトとなってしまうわけで。お茶の水に通っている私でさえ、なかなか実物を見ることもできませんし、ましてや遠方の方となると、なおさらですよね。


そこで、私自身が「Martin 0-17(1935年製)」や「Martin 2-17(1927年製)」を所有していたこともありますので、何かの参考にでもなればいいかなと思い、オールマホを選ぶポイントについて、考えをまとめておきたいなと思いました。


実際に自分で所有してみて、そして色々なギターを弾いてきて思ったこと、それは突き詰めると「見た目のインパクト=オールマホを選ぶ理由」なのかなと考えるに至っています。


一般的には「オールマホ=渋い、素朴」といったイメージからブルースに合うと思われる方が多いように感じていますが、私的にはそんな印象はないんですよね。むしろ、「お洒落でかわいらしいギター」だと思っています。


というのも、ブルースに求められるサウンドでは、ピッキングしたときのエッジ感であったり、低音のグルーヴ感などが重要になると思うのですが、そういった音を出せるギターは、スプルーストップのものでも存在するんですよね。いや、むしろスプルーストップの方が合うのではないかとさえ個人的には思っています。


やはりオールマホは、独特の帯域の狭さや倍音の少なさが特徴だと思いますし、それをどう活かして使っていくのかがポイントになるのだと思うわけです。


そして、歌モノとの相性としてはソフトなヴォーカルに合うと思います。使用ギターの例としては、海外だとジャクソン・ブラウン(1950年代のMartin 00-17)、国内だと藤原さくら(1943年製のMartin 00-17)が愛用していますね。


偶然、二人ともダブルオーサイズを選んでいるわけですが、弾き語りでの合わせやすさという意味でコダワリのボディサイズかもしれませんね。シングルオーよりもストロークがまとまりやすいですし、歌モノのオールマホでは確かにダブルオーの方が使いやすいかもしれません。


また、サウンド面でオールマホの必要性は感じられませんが、AKB48の山本彩さんの使用ギター「Martin D-15M Street Master」などはヴィジュアル面で抜群のインパクトがありますよね。これもオールマホを効果的に使った一例かと。個人的には、女性が持つと、オールマホのかわいらしさが引き立つように感じています。


ですので、値段がお手頃ということもありますし、唯一無二の存在感もあり、そして何よりも「本物のマーティンを所有できる」という喜びもあるので、初心者の方にはお薦めできるギターかなと思ったりもしています。個人的には「000-15M」や「000-15M StreetMaster」あたりが使いやすいと思いますね。


ちなみに近年モノのオールマホは、音の粒立ちを良くしやや硬めの音作りにしていて、いかにもオールマホ的な音色よりもむしろスプルーストップの音色に近づけている印象を持っています。


結局のところ、ギター材の音への影響も大きいですが、どんな音を出そうとしているのかという設計の部分の影響も大きいので、見た目のインパクトを生かしつつ、いかにもオールマホ的な音色のギターを選ぶのか、見た目はオールマホだけどスプルーストップ寄りの音を選ぶのかと言った観点でオールマホのギターを選ぶのが良いのではないかと考えています。



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