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左が1941年製、右が1963年製。驚異的な'41年製の美しさ! |
1941年製と1963年製の最大の違いはトップ材です。
'41年製はアディロンダックスプルース、'63年製はシトカスプルースが使われています。
なんとなくですが、、、
「アディロントップのプリウォー最高!シトカトップの'60年代普通!」
といった予想をしていたのですが、意外や意外。
実際に弾き比べてみると、、、
やはり、プリウォーは素晴らしかったです(笑)
でも、トップ材やスキャロップの有無による音色の違いというものも感じられますが、不思議とこの二本の共通点というものが見えてきたんですよね。
それは、バランスの良さです。
ヴィンテージの魅力というと、材の乾燥や、弾きこまれたことによって熟成された音色というのが一般的ですよね。
特に、プリウォーともなると「激鳴り!爆鳴り!極太!」なんて音量に関する表現が多い気がします。
幸運なことに私は、それなりの本数のプリウォーを試奏させて頂いたことがありますが、個人的には、そういった音量的なことよりも、バランスの良さに惹かれることが多いんですよね。
6本の弦の音が全て繋がっているというか、単音だけでも十分に個性的で魅力的な音色が、和音になっても、とてつもなく高度にバランシングできているというか。
文章だけではうまく表現できない、不思議な体験です。
そういった、プリウォーの魅力の秘密について、あらためて考えてみたいなと。
今では手に入れることのできない、素晴らしい材もひとつの理由ですよね。
でも、同等の材が使われているはずの'40年代のヴィンテージと比較しても、明らかに音色に違いがあるんですよね。
しかも、'40年代であれば、弾きこまれた年月もそれほど大きな差はないはずですからね。
もちろん、仕様の違いがあるので、単純に比較することはできませんよ。
でも、スキャロップの有無やロッド材の違い(エボニーロッドとスチールTバー)といった違いを差し引いたとしても、大きな差を感じるんですよね。
となると、残されているのは「作りの違い」ではないかと。
これは近年のルシアもののブームとも一致していますね。
つまり、行きつくところは、材や設計だけではなく、作り手の音作りのセンスと、高い技術力になるのではないかと。
マーティンの黄金期の職人たち、おそるべし。
そして、また面白いのが、'60年代のシトカトップも、また違ったバランスの良さを持っているということです。
正直、シトカトップなので、これといって音色に個性はありません。
かといって、音が悪いという意味ではないですよ。
というのも、この年代であれば、良質な材が使われていますからね。
素晴らしいヴィンテージ・マーティンの音色を楽しむことができます。
話は脱線しますが、、、
最近、トップ材について、思うことがあるんですよね。
というのも最近は、個性的なトップ材ばかりが注目されているように感じるんです。
確かに、ギター選びは材選びでもあるので、楽しい要素ではあります。
でも音色に限った話をすれば、良質なシトカスプルースは本当に癖がなくて、バランスが良いものが多いんです。
それだけに、オールマイティなギターとして幅広く活用することができると思うんですよね。
私個人としては、アディロントップの音色が好みではありますが、もっとシトカトップの音色が評価されてもいいんじゃないかと思っています。
当初、プリウォーの圧勝を予測していたのですが、良質なシトカトップならではのバランスの良さを持つ'60年代のシトカトップも捨てたものじゃないなと再認識させられました。
しかも、'60年代はコストパフォーマンスが良いですからね。
持ち出し用のギターとして、そして、ヴィンテージの入門編としては最適なのではないかと。
ちなみに、この後、マーティンはよりストローク向けの音作りになっていきます。
そのため、フィンガースタイルの方には、この頃までのヴィンテージをオススメしたいところですね。