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マホガニー図鑑「Gibson L-00 1935年製」②

Gibson L-00 1935年製 トップはアディロンダックスプルース、サイドバックはマホガニー。 ブリッジ、指盤には、この時代には潤沢に存在していたハカランダが使われています。 この長方形のブリッジ(レクタングラー)は、1950年代頃までの仕様ですね。 一方、ナットはエボニー製で44.5ミリ幅。 そして、ネックのスケールは、ギブソンスケールといわれる628.65ミリ。 ちなみに、マーティンはというと、、、 ドレッドノートやOMのロングスケールが645.2ミリ。 トリプルオーやダブルオーのショートスケールは632.2ミリ。 つまり、マーティンのショートスケールよりもさらに短いんですね。 このことが、音の太さや、サステインに大きく影響するわけです。 弦の張力が減るので、音は太くなり、サステインは弱まります。 そして、ギブソンと言えば塗装ですね。 L-00の場合、初期モノはブラック・フィニッシュ。 1934年頃からサンバーストが作られるようになります。 年代が古い方が、サンバーストの明るい部分の面積が狭いそうです。 そして1941年になると、ナチュラル・フィニッシュが作られるようになります。 また、1937年頃からはバック側にボディ・バインディングが施されていますね。 この個体は、サンバーストの色合いと、バック・バインディングがないことから、1935年頃のものと想定されます。 ネックの形状は、基本的には三角ネックなのですが、、、 個体によって、太さや、削り方がバラバラなんですよね。 ですので、自分の手にフィットするかどうかは、弾いてみないとわかりません。 トラストロッドはアジャスタブル。 とは言っても、ここまでのヴィンテージだと動かす勇気もありません(笑) ちなみに、ギブソンもマーティンと同じく、戦時中はエボニーロッドで代替されていました。 音色的には、金属製のアジャスタブルの方が音に質感と艶があり、エボニーの方が軽くてよりヌケがよくなる傾向です。 ブレーシングはXブレーシングですが、削り方はかなり個体差があります。 ほぼ、作り手のフィーリングに任されていたんじゃないかと思ったりもします。 私が確認したことがある範囲だけでも、ほとんど削られ...

マホガニー図鑑「Gibson L-00 1935年製」①

Gibson L-00 1935年製 「L-00」は、1926年から製造が開始されたL-0やL-1の後継機種として1932年に登場。 1945年まで製造されていました。 いわば、歴史あるギブソン・フラットトップギターの先駆けともいえる存在です。 そして、「ブルースキング」の異名を持ち、ブルースマンが愛用したとされています。 でも、実際は、、、 戦前の多くのブルースマンが使っていたのは、ステラやリーガルなどの安価なギターなんですよね。 いやいや、ロバート・ジョンソンが「L-1」を抱えた写真があるじゃないか! と言われるかもしれません。 でも実際は、レコーディングで使われたかどうかすら定かではありません。 また、1960年代の比較的録音の良好なアコースティック・ブルース、、、 例えば、ミシシッピ・ジョン・ハート、マンス・リプスカム、ロバート・ピート・ウィリアムズなどを見ても、ギルドやハーモニーをメインに使っていますよね。 あえて言うなら、ライトニン・ホプキンスの「J-50」が有名ですが、1940年代の後半以降です。 既に、L-0も、L-1も、L-00も作られていない時期にあたります。 それだけに「L-00=ブルースキング」というイメージにどうしても同調できないんです。 特に、この1930年代のL-00をそんな狭い範囲で括ってほしくない、、、 というのも、「オリジナルのL-00は、表現力豊かな素晴らしい楽器だ」と考えているからです。 もちろん、ボディサイズも小さく、スケールも短いので大きな音はでません。 サイドバックもマホガニーですので、ローズウッドと比べたら倍音も乏しく、音の遠達性も劣ります。 それでも、とてつもなく魅力的な音色を奏でるのです。 その豊かな表現力の秘訣は、、、 それは、当時のギブソン職人の「音に対する感性の豊かさ」ではないでしょうか。 残念ながら木工精度という観点では、マーティンに劣ります。 個体によってネックの形もブレーシングの削り具合も違いますし、 ぱっと見ただけでも作りの荒さ、雑さがわかる程度の品質ですからね。 ただ、木工精度は訓練で上達するかもしれませんが、音に対する感性だけは、その職人の音楽性がどうしても必要になってくると思うんです。...

ギブソンでのソロギターについて考える。

Gibson L-1を抱えるロバージョ・ジョンソン 個人的なイメージですが、、、 ギブソンと言えば「J-45」。 コードを掻き鳴らし、アグレッシブなカッティングでグルーヴを刻む。 まさに、男のギターって感じですよね。 そして、どんなに強くピッキングしても音が破綻することはなく、、、 強く弾けば弾くほど、魅力的なギブソンサウンドを奏でる。 いやー、痺れますね。 ただ、言いかえると、、、 タッチの弱いフィンガースタイル(ギターインスト)には向かない。 また、ベースボールバットとも揶揄される極太三角ネックや、、、 1960年代の激細ナローネックなど、、、 ネックの形状からくる演奏性もソロギターの人たちから敬遠される理由だったりもします。 でも、このギブソンの魅力をソロギターで活かせないのか。 誰もが考えるテーマではないでしょうか。 私見ですが、、、 ギブソンも1930年代頃までは、フィンガースタイルを意識した設計だったと考えています。 1940年代以降は、流行りの音楽の変化もあり、ストローク寄りの音作りに変わっていきますからね。 ということもあって、フィンガーでも使いやすいギブソンというと、、、 1930年代頃までの「L-0」、「L-1」、「L-00」あたりかなと考えています。 おっ、全てサイドバックがマホガニーでしたね(笑) これらの小さいギターというと「ブルース」というイメージをお持ちになられる方が多いと思います。 でも、私はちょっと違った感覚を持っているんですよね。 というのも、、、 この頃のギブソンはもっと表現力豊かで、キャパシティの広い楽器だと考えているからです。 力強く弾けば、ロックやブルージーなサウンドを奏で、 優しく弾いてやると、何とも言えない魅惑的な美しいトーンを奏でます。 まさに弾き手の技量が試されるギターですね。 しかも、この時期はアディロンダックスプルースがトップ材に使用されています。 さらには、80年以上も熟成されて自然乾燥し、弾きこまれているわけですからね。 これ以上のものはない、まさに理想的なマホガニーサウンドを奏でるわけです。 というわけで、次回はマホガニー図鑑の第5弾として「Gibson L-00...

憧れのギター「Martin 000-42」を弾く。

1940年製の「Martin 000-42」 私がアコースティックギターに興味を持ったきっかけは、エリック・クラプトンのアンプラグドから。 ということもあって、あの「Martin 000-42」は憧れの存在でした。 とても購入できるような価格ではないのですが、いつか弾いてみたいと思っていたんですよね。 そして、ついに今年。 その憧れのギターと出会うことができました。 しかも幸運なことに、画像のものを含む二本もの「000-42」を試奏させて頂くことができました。 これもギターを通して、色々な方々と交流を持てたおかげだなと。 本当にありがとうございます。 普段、試奏させて頂いたギターの写真を撮ることなんてないのですが、今回は思わず撮影させて頂きました(笑) それ以外にも、ルシアものから、プリウォーを含むヴィンテージまで、様々なギターを経験することができました。 ルシアものは、私の好みであるメリルはもちろんのこと、ソモジやグレーベンの芸術性には感動させられましたね。 そういったこともあって、ルシアやメーカーの違い、ボディサイズやスケールの違い、素材によって音がどのように変わっていくのか、自分の中で体系立てて整理できてきました。 この辺は、おいおいブログで紹介していきたいと思っています。 今年は本当に実りある一年でした。 また来年もよろしくお願いします!

機材について考える③(伊藤賢一さん編)

無料の電子書籍「Acoustic Guitar World」 機材について考える上で、もうひとつヒントになる記事を見つけました。 「アコースティックギターワールド」という電子書籍です。 無料ですし、メルマガでも読めるので、未読の方は是非お試しください。 ↓↓↓URLはコチラ 「 Acoustic Guitar World 」 その中で、何度かライブにお邪魔している伊藤賢一さんのコラムがありました。 伊藤さんというと、スチールの大屋ギター、ガットのハウザー。 クラシックギターでの経験を活かした、繊細で美しいタッチ感。 今年の夏の「 近江楽堂@東京オペラシティでの生音ライブ 」も記憶に新しいところです。 ということもあり、音色には人一倍こだわっているというイメージがありました。 でも昔は、なんとオベーションのスチールとガットでライブをしていたんだそうですね。 意外でした。 しかし、オベーションの楽器としての限界を感じ、カオルギター、ラミレスを購入。 その後、ライブでのマイク録りをはじめてみたものの、、、 ピックアップの利点を取り入れたいと思い、M-Factoryを導入。 などといった試行錯誤が綴られています。 これは面白い! そういえばプロのギタリストの試行錯誤って今まで読んだことがなかったなと。 そして今では、、、 コンデンサーマイク(AKG 451B)を持って会場に行き、PAのミキサーに直結しているのだそうです。 これを読んでいた思ったのが、自分の目指したいスタイルに近いなということでした。 伊藤さんのスタイルとかくとかっこよく聞こえるかもしれませんが、、、 別にカッコつけたいわけでもなくて、これが一番シンプルで安価な方法ではないかなと思ったわけです。 一見、生音を極めたプロ向けのスタイルにも思えますが、同時にアマチュアのスタイルにも最適なのではないかと思ったわけです。 それにコンデンサーマイクがあれば、宅録でも使えますので、汎用性も高いですしね。 当然のことながら、ソロギター(ギターでの独奏)という前提ですし、 ハウリングの問題や、マイク集音の難し...

機材について考える②(南澤大介先生編)

南澤先生がライブで使用されている「Zoom A2」 そういえば、Zoomを使われているプロをもう一人思い出しました。 「ソロ・ギターのしらべ」でお馴染みの南澤大介先生です。 どうして、そんなにZoomを使いたがるのかなと、悩んでいたのですが、、、 よくよく考えてみると、ツアーで全国を回るプロの機材としては、 丈夫で壊れにくい いつでもどこでも同じものを入手できる(品質を維持しやすい) といったところは、当然評価ポイントになるはずです。 となると、、、 ギターを担いで全国行脚しているようなプロにとって、Zoomというのは、むしろ使い勝手がいいのかもしれませんね。 では「趣味としてのアコースティックギター」での機材はどう考えるべきなのか。 結局のところ、自分が楽しめればいいわけですからね。 ひたすら音質にこだわる(生音重視、原音主義) いろいろな組み合わせで、ユニークな自分だけの音を探す ハンドメイド等、ひととは違うものを持つ など、いろいろな楽しみ方があるはずです。 となると、しっかりと自己分析をして自分の好みを整理しておく必要がありますね。 私の場合は、、、 ヴィンテージが好き やはり生音だよねとコダワリをみせつつ、本当はギターに穴をあけることに罪悪感を感じる ギターヲタク( もっと欲しいギターはあるし、機材にはお金をかけたくない性分) などが特徴としてあげられます。 しかも、普段は自宅で生音で楽しむアコースティックギターですからね。 機材にどこまで投資するのかは悩ましいところです。 どこかいい、落とし所はないのでしょうか。

機材について考える①(打田十紀夫先生編)

打田先生がプリアンプとして使用されている「Zoom A3」 ソロギターをはじめてから、もう少しで2年になります。 残念ながら、ギターの演奏技術はまだまだなのですが、、、 それでも最近は、人前で演奏したいなと考えたりすることもあったりするんですよね。 そういったこともあって、ちょこちょこ機材関係についても調べはじめているところなんです。 というところで、今年の私の教科書である打田先生の「39歳からの本格アコースティックギター」に「ライブのセッティング」というコラムがありましたので、取り上げてみたいと思います。 そこで紹介されている打田先生の機材というと、、、 ピックアップは「Waver WPS-1」でマグネティック・タイプですが、ピエゾをブレンドできるもの。 それをスイッチャーを通して、プリアンプの「ZoomA3」に接続しています。 それだけ??? あれ、なんか普通だぞ??? 弘法は筆を選ばずという見方もできなくはないですが、、、 打田先生曰く、、、 「会場のPA設備に関わらず、同じ音でライブができるように」 とのことですが、 実際のところは、かなり割り切った考え方をされているのだと思います。 というのも、 お世辞にも高音質とは言えない機材ですからね。 それでもライブでは、こういった機材を使っているんです。 ということは、、、 PAを通すのであればこれで十分という判断をしているのであり、そして、ライブにおいて、 生音にこだわりすぎることは得策ではないと考えているのでしょう。 ましてや、オープンチューニング用やリゾネーターなど、3~4本のギターをライブで使うので、音量やエフェクトのコントロールしやすさを最優先しているのかもしれませんね。 ライブでのアコースティックギターの音をどう作るか。 アーティストの音に対する姿勢が良く表れる部分ですよね。 生音こそが本物であるという考え方。 多くの人に音を届けられるPAを通した音こそがライブでのギターの音だという考え方。 どちらも一理あり、これまた答えのない議論です。 ですので、他人がどう考えるのかよりも、自分がどう考えるのかを大切にすべきですね。 ...

岸部眞明さんのライブに行ってきました。

M-Factoryのプリアンプと、LexiconのリバーブLXP-1 岸部眞明さんのインストアライブ@恵比寿ドルフィンギターズに行ってきました。 岸部さんのライブは昨年の夏以来ですかね。 「 岸部眞明さんのライブに行ってきました(2014年) 」 平日にも関わらず、満席でしたので、やはり人気は高いですね。 最近は、中国などで、かなり大規模なライブもされているようですからね。 ライブは二部構成で、一部は岸部さんの名曲&カバー、二部は出る出るいってなかなか出ないニューアルバムからの楽曲でした。 新作は、今までの作品以上に、バラエティに富んだ楽曲が揃っていたので、とても楽しみだなと思いました。 また、岸部さんの楽曲を再録したもの&ピアノアレンジの二枚組の作品を出す企画などもあるようで、これまた楽しみですね。 個人的には、最近、機材関連がとても気になっていて、いろいろチェックをして帰ってきたのでした。 機材関連の話はまたの機会にでも。 いつもよりも、Lexicon LXP-1のリバーブ加減が少なかったので、それが岸部さんのトレンドなのかわかりませんが、Water Roadの素に近い音を聞けてちょっと得した気がしました。

マホガニー図鑑「Harmony Sovereign H1260」③

なかなか曲者のピンレスブリッジ 肝心の音色ですが、、、 レッド・ツェッペリンの「天国への階段」や「レインソング」そのもの です。 あーだこーだ書かなくても、本当にあの音がします。 ですので、CDを聞いてもらった方が手っ取り早いです。 ただ、ギターそのものの音色というと、、、 正直、マーティンやギブソンのような明確な個性というものは感じられません。 それでもあの ジミー・ペイジが、自分が表現したい音を求めて探し出したギター ですからね。 このギターでしか出すことのできない、不思議な魅力があることは確かです。 この音色を、是非、自分の耳で、体で、感じて頂きたいところです。 そういえば、ジミー・ペイジと言えば、チープな独特な響きを求めて「 Danelectro 3021」を発掘したことでも有名ですよね。 ダンエレクトロの場合は、DADGADチューニングとの相性の良さを見出したわけですが。 やはり、彼の音に対する感性、探求心は本当に凄いなぁと、改めて感心してしまいました。 ちなみにですが、、、 私の敬愛するブルースマン「Mance Lipscomb(マンス・リプスカム)」も同じソブリンのH1203というモデルを使用しています。 H1203は、マーティンで言うところのトリプルオーサイズにあたるので、ブルースやラグタイムといった音楽にはどハマりしますね。 でも、ラグタイムなどでミュートをしようとすると、このピンレスブリッジが邪魔をしてミュートできなかったりするのですが(笑) 彼の残した作品は、どれも1960年以降の録音ということもあり、良好な音質でカントリーブルースを楽しめるので、オススメです。 <関連記事> マホガニー図鑑「Harmony Sovereign H1260」① マホガニー図鑑「Harmony Sovereign H1260」② マホガニー図鑑「Harmony Sovereign H1260」③

マホガニー図鑑「Harmony Sovereign H1260」②

日本ではあまり知られていない存在ですが、、、 ハーモニー社は ヴィルヘルム・シュルツによって 1892年に創設。 1974年に倒産するまで、米国では最大規模を誇るギターメーカーだったそうです。 そしてこのSovereign(ソブリン)シリーズですが、、、 ハーモニー社の最高グレードのギター として位置付けられていました。 それだけに、作りもしっかりしているし、材もなかなかのものが使われています。 仕様は、スプルースのトップに、マホガニーのサイドバック。 ボディはちょっと不恰好なジャンボサイズです。 スケールは642mmなので、マーティンのロングスケールに近い長さです。 ナット幅は44.5mm。 また、この当時としては当たり前なのですが、指盤やブリッジはハカランダです。 極めて地味なギターですが、あえて特徴をあげるなら、この ピンレスブリッジ ですかね。 スルータイプのブリッジとも呼ばれたりしますが、弦交換のしやすさや、音色の変化を狙って、こだわっている人もいたりしますね。 ただし、 コスト削減のためか、、、 ヘッドには化粧版すらなく「Sovereign」とデザインされた塗装がされているだけです。 ただ、装飾がほとんどないことは、まぁ良しとしたとしても、、、 ハーモニー社の最高グレードのギターだというのにこの売る気のないデザインは何なんですかね(笑) でも、このチープさこそが、ハーモニーらしさだったりもします。 <関連記事> マホガニー図鑑「Harmony Sovereign H1260」① マホガニー図鑑「Harmony Sovereign H1260」② マホガニー図鑑「Harmony Sovereign H1260」③