![]() |
Gibson L-00 1935年製 |
「L-00」は、1926年から製造が開始されたL-0やL-1の後継機種として1932年に登場。
1945年まで製造されていました。
いわば、歴史あるギブソン・フラットトップギターの先駆けともいえる存在です。
そして、「ブルースキング」の異名を持ち、ブルースマンが愛用したとされています。
でも、実際は、、、
戦前の多くのブルースマンが使っていたのは、ステラやリーガルなどの安価なギターなんですよね。
いやいや、ロバート・ジョンソンが「L-1」を抱えた写真があるじゃないか!
と言われるかもしれません。
でも実際は、レコーディングで使われたかどうかすら定かではありません。
また、1960年代の比較的録音の良好なアコースティック・ブルース、、、
例えば、ミシシッピ・ジョン・ハート、マンス・リプスカム、ロバート・ピート・ウィリアムズなどを見ても、ギルドやハーモニーをメインに使っていますよね。
あえて言うなら、ライトニン・ホプキンスの「J-50」が有名ですが、1940年代の後半以降です。
既に、L-0も、L-1も、L-00も作られていない時期にあたります。
それだけに「L-00=ブルースキング」というイメージにどうしても同調できないんです。
特に、この1930年代のL-00をそんな狭い範囲で括ってほしくない、、、
というのも、「オリジナルのL-00は、表現力豊かな素晴らしい楽器だ」と考えているからです。
もちろん、ボディサイズも小さく、スケールも短いので大きな音はでません。
サイドバックもマホガニーですので、ローズウッドと比べたら倍音も乏しく、音の遠達性も劣ります。
それでも、とてつもなく魅力的な音色を奏でるのです。
その豊かな表現力の秘訣は、、、
それは、当時のギブソン職人の「音に対する感性の豊かさ」ではないでしょうか。
残念ながら木工精度という観点では、マーティンに劣ります。
個体によってネックの形もブレーシングの削り具合も違いますし、ぱっと見ただけでも作りの荒さ、雑さがわかる程度の品質ですからね。
ただ、木工精度は訓練で上達するかもしれませんが、音に対する感性だけは、その職人の音楽性がどうしても必要になってくると思うんです。
その観点では、ギブソン・ヴィンテージというのは間違いなく超一級品だと思うのです。
そして、設計という観点でも、このL-00は優れていると考えています。
サイズはマーティンでいうところのダブルオーとトリプルオーの中間で、抱えやすく、弾きやすい。
そして、ショートスケールならではの単音の太さとプレーン弦の粒立ちの良さ。
レスポンスに優れ、音色も弾き手の思い通りに反応してくれます。
むしろ、現代的とさえ言える、ソロギターに適した仕様と考えられるのではないでしょうか。
そんな魅力的な「L-00」をご紹介していきたいと思います。