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まだまだ続くのか、弦を緩めるのか、緩めないのか論争(夏の高湿度対策)

 


エ、エフ?


これは弦を緩めずに張ったまま放置していたギターを久しぶりに弾いた時の6弦開放の音程です。


私は基本的に「弦を緩める派」ですが、実は所有するYamahaの赤ラベルFG180だけは緩めずに張りっぱなしにしているんです。


これは単純に面倒だからという理由と、いつでもすぐに弾けることを目的として、弦を緩めない用のギターとして赤ラベルを所有しているためです。


たしか、この前チューニングしたのが4月だったと思うので、2ヶ月くらい放置したら6弦の音がEからFに上がったわけです。


これが何を意味するかというと、夏を迎え、湿度が上がってくることでネックが逆反りしてきたということなんですよね。


逆反りは弦を張っている側を上とした場合、ヘッド部分が裏側に反っていく動きになります。


※島村楽器さんのサイトが丁寧でわかりやすかったのでこちらを参照してみてください。


逆反りの場合、押弦した時のビビりや音詰まりを問題にされる方が多いですが、この弦の張力の変動こそが一番気にすべきポイントだと考えています。


弦を張ると約60kgの力がギターにかかると言われますが、逆反りすることでさらに張力が増すわけです。


これは明らかにギターに悪い影響を与えますよね。


というのも、アコースティックギターの場合、構造上、トップ板に接着剤でブリッジが付けられているだけなので、接着剤が弱ければブリッジが剥がれ、強ければトップ板を変形させる可能性があるわけです。


ネックの動きを気にされる方が多いですが、ネックは季節や湿度で動くものなので気にしても仕方がなく、むしろ、ギター本体へのダメージを気にした方がいいのではないかと私は考えています。


また、ネックの反りは直せても、トップ板の歪みは直せません。これが弦を緩めるべき大きな理由と考えています。


逆に、夏から冬にかけての変化、すなわち乾燥してネックが順反りしていく場合には、弦の張力は弱くなるので問題は出にくいとも考えられますね。


だから、弦を緩めなくてもいい、もしくは影響が小さい季節という考え方もある意味正しいとも考えられます。


とはいえ、何もしなくても60kgの力でギターを引っ張り続けているわけですからね。緩める方が安全だと考えますが、皆さんはどのようにお考えでしょうか。


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