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マホガニー図鑑「YAMAHA 赤ラベル」 その②

赤ラベルとしてはなかなかのセッティング

この「FG-180」を弾いて驚きました。

というのも、同じ年代の下手なマーティンよりも鳴ってしまったからです。

もちろん、そんな訳がないと思われる方も多いとは思います。

でも、良い音というのは個人の主観が入りますが、単純に鳴りという観点であれば客観的に判断することができますからね。

間違いありません。

そして合板であるのにも関わらず、サウンドにはしっかりとマホガニーの質感が残っているんです。

しかもそれは、紛れもないヴィンテージ・マホガニーの質感です。



今まで弾いてきた赤ラベルとは何が違うのかなと考えてみました。

それは、セッティングの違いだということに気が付きました。

この個体では、十分なサドルの高さを残しつつも、弦高を下げることで、鳴りの良さと、高い演奏性を両立することができているのです。

具体的には、12フレット上で1弦側が2.1ミリ、6弦側が2.6ミリという素晴らしいセッティングですね。

これならば、現代的なフィンガースタイルでも十分に使うことができます。

もちろん、この赤ラベルはジャパン・ヴィンテージとして過大評価されている部分はあるとは思いますよ。

それでも、音にも深みやキレのようなものは間違いなく感じられますし、合板でもヴィンテージ・サウンドに進化することを証明してくれています

個人的には、レスポンスが良く、クセのない素直な音がでるので、打田十紀夫さんが演奏されるようなラグタイムやカントリーブルースに合うと思います。

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マホガニー図鑑「YAMAHA 赤ラベル」 その③

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「オイルを塗るのか、塗らないのか」メンテナンスについて考える④

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ネック材としてのマホガニーを考える。

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「Collings」の試奏で学んだこと。Martinの魅力を再認識。

「Collings OM2H Cutaway(1997年)」 実はつい最近まで、 コリングスを避けていました 。 なんとなく、本能的にですが、 近づいてはいけないと思っていたからです。 弦を緩めなくても問題がないくらい丈夫だし、 ピッチも驚くほど正確で、 これで音まで良かったらショックだなと。 もしかして、私のマーティン君たちが いらなくなってしまうのではないかと。 そして、実際に弾いてみると、 めちゃくちゃ音が良いんですよね。 本当にやばいです。 ただ、値段はマーティンよりも高いし、 ヘッドが角ばっているところが 好みではなかったりするのですが、 評判通り、いや、 評判以上の素晴らしいアコギですね 、 これは。 でも、コリングスを弾いてみて わかったことがあります。 それは、マーティンでしか 出せない音があるのだなということです。 最近のマーティンの音質について、 いろいろ言われる方も多いですし、 はっきり、くっきりした音を求め コリングスに行きつく方も多いとは思いますが、 「 音の優しさ、柔らかさ、甘さ 」 がマーティンの個性なんだな ということをあらためて認識させられました。 また、マーティン愛好家からは、 音が硬いと言われるコリングスですが、 2000年代の後半からは、 柔らかい音色へシフトしています。 また、1990年代のものは、 作られてから約20年が経過し、 良い感じに枯れてきているので、 今が良い頃合いかもしれませんね。 特に、「 3桁コリングス 」などと呼ばれる 製造番号が3ケタのものは、 現在のUV塗装とは異なり、 ラッカー塗装で仕上げられているので、 音質的にも有利ということもあって、 プレミアがついてきていますからね。 ちなみに、この画像は、友人が購入した 「OM2H Cutaway(1997年製)」です。 一緒にかなりの本数を試奏して 決めた一本でしたが、 「音色、演奏性、堅牢性」の三拍子が 揃った素晴らしいアコギでした。 ※Collings関連記事   「Collings」のすすめ  「Collings」を語る。シリーズ  その①:楽器としての魅力   その②:トラディショナルシリーズの誕生   その③:トラディショナルシリーズの評価 ...