今回の友人のオーダーですが、ことの始まりは
このHobo's Works OM-18 Spureme（岡健男）
との出会いからだったんですよね。
これがとにかく凄くて、
ヴィンテージ的な音の抜け感や、
楽器全体が振動しているかのような
心地良さが圧倒的なのです。
メリルやジュリアス・ボージャスなど、
いわゆる巨匠と言われる人たちのギターも
たくさん弾いてきましたが、
この感覚は岡さんのギターがピカイチです。
ギターの仕様も紹介しておきましょうね。
トップは最高グレードの
アディロンダックスプルース、
サイドバックはホンジュラスマホガニーの
組み合わせ。
こだわりポイントとしては、
オリジナルのマーティンのOMと同様に
ネックの補強にはエボニーロッドが
使われていることでしょうか。
エボニーロッドということでは、
以前良い音だと記事を書いたこともある
Martin OM-18 Authenticにも
使われていましたね。
鉄製のTバー・ロッドやSQロッドと
比べると軽さのためなのか、
木材ならではの振動特性なのか、
なぜか新品の状態でも
ヴィンテージのような鳴りを
感じることができるんですよね。
オリジナルOMの仕様から意図的に
変えているのは、Xブレーシングの位置を
ブリッジ側に寄せていることです。
リアシフトなどと呼ばれたりもしますね。
リアシフトですが、本家マーティンでは
1939年以降に採用されました。
ブレーシング位置を変えることで、
太いスチール弦を張れるように
強度をあげたという説もありますが、
当時の音楽の流行に合わせ、
歌物に使いやすいようにコードの響きに
まとまり感を出すことも目的のひとつ
だったのではないかと推測しています。
では、なぜ、今回あえて変えたのか。
岡さんいわく、そこには明確な狙いがあり、
一般的にはフィンガー向きと言われる
OMではありますが、ストローク時の音の
まとまり感を出したりだとか、和音の響き
などで出したい音のイメージがあったようです。
そのバランスを実現するにはリアシフトだと。
実際に弾いてみると、
その狙い通りの仕上がりとなっていて、
ストロークでもフィンガーでも使える
バランスに仕上げられているんですよね。
ちょっとありきたりな表現なので
もう少し突っ込んだ表現をすると、、、
どちらでも使えるギターというと、
普通は鳴りが平面的だったり、
コンプレスがかかったような感じになって
しまうのですよね。
でも、このギターはフィンガーで弾くと
音の立体感や分離感をしっかりと感じさせて
くれるんですよね。いやー、音の焦点の
合わせ方が滅茶苦茶凄いなと。
そして、ヴィンテージスタイルでありながらも、
単なる再現ではなく、実用性やオリジナリティを
加えつつ、更なる高度なバランスを実現している
点はさすがとしか言いようがありません。
私などはどうしても、
オリジナルに近い仕様であったり、
何となくフォワードシフトの方がいいはずだ
などと思ってしまいますが、やはり楽器は
仕様の良し悪しよりも、トータルバランス
なんだなと実感させられました。
ちなみに、
巷で話題のプリウォーギター（ブランド名）は、
トップ材を加工することで硬質化させ、
枯れた音色の感じや、ピッキング時の
チャリーンという倍音感を強調することで、
ヴィンテージ感を出しているように感じますが、
この岡さんのギターは、そんなことをしなくても
リアルヴィンテージと言った仕上がりです。
これは本当に凄いです。
そして、
このギターを弾いて痺れているところに店長から
「いいマホガニー入ってますよ」の一声が。
この時点で勝負ありでした笑
これが友人がオーダーに至る経緯でした。