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マホガニー図鑑「Fraulini Guitars Erma-Concert Size」

 



みなさん、FRAULINI Guitarsという

ギターをご存じでしょうか?


こんなにもオタクなギターがあることを

私は全く知りませんでした。


というわけで、

今回のマホガニー図鑑でご紹介するのは

友人が購入した

フラウリーニのErma-Concert Sizeです。


戦前の伝説的なブルースマンたちに愛された

Stella Giutarの復刻版ですね。


ステラは、オスカー・シュミットによって

製造されたギターで、とにかく安くて丈夫

ということで、黒人ブルースマンなどに

愛用されることになります。


オリジナルのステラは、

サイドバックにマホガニーやバーチ、

オーク、メイプルなど様々な材が

使われていたのですが、

このギターはマホガニーのサイドバックに

スプルーストップの仕様です。




私はオリジナルの戦前ステラを

弾いたことはありませんが、

このギターを弾くと、

CDで聴くことのできる

あのブルース・フィーリングを

いとも簡単に表現できてしまうのです。


実際に弾いてみると、

大きな音が出ない上に、

すぐに音が飽和してしまい

ポコポコ鳴ってしまいます。


サステインも少なく、倍音も貧弱。

はっきりいうとしょぼいですw


この一見ダメそうな

要素ばかりのギターなのですが、

このショボさが実に音楽的なのです。


この『音楽的』という表現は、

よくあるオーディオ機器の

レビューのように、ポエムのようで

あまり使いたくはない表現なのですが、


このギターを語る上では、

これ以上の表現は見当たらないので

あえて使わせてもらいたいなと。



似たようなコンセプトでは、

Collingsのサブ・ブランドである

Waterloooもありました。


故ビル・コリングスは、

ステラやカラマズーのような

ギターを称賛し、古き良き時代の

ギターを再現しようと試みました。


そうして作られたウォータールーは

確かに素晴らしいギターでした。


しかし、CDで聴くことのできる

戦前ステラなどの音と比べると、

どうしても現代的な音色が

してしまうんですよね。


性能が良すぎるのです。


でもこのフラウリーニは、違うんです。


むしろ、脚色しすぎなんじゃないか

というくらい『あの音』が出るのです。


これはウォータールーが、

あの当時のギターはこれくらい

素晴らしかったはずだという希望的観測で

作られているのとは対照的ですよね。


フラウリーニは、

とにかくあのフィーリングを出すことに

徹しているのです。




あまりにも戦前ブルースサウンドに

寄せすぎているこのギターの音色。


当然、使い方も限られますし、

持つ人も相当絞られます。


でも、この手の音色が好きな人には

堪らない魅力が絶対ありますので、

見かけたら是非試奏をして頂きたいです。


性能を追求したギターというのも

面白いのですが、音楽を奏でるために

ギターってあるんだよなと、

久しぶりに再認識させられた次第でした。


聞くところによると、

米国ではオーダーから三年待ちくらい

人気があるらしく、入手困難なギターのようですね。


見た目もかなりチャーミングで、

手元に置きたいギターだなと思いました。


そしてこのカタログも魅力的ですよね。

久しぶりに面白いギターを弾くことができました。




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