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マホガニー図鑑「Merrill 00-18」①

Merrill 00-18 マホガニー図鑑の第八弾は「Merrill 00-18」です。 まず、ルシアーのジム・メリルですが、マーティンのゴールデンエラ期の再現ということでは、世界でもトップクラスのルシアとして有名ですね。 バージニア州に工房を構え、年間60台程度製作しているとのことなので、ハンドメイドギターとしてはかなりの製作本数ですね。 これは、世界的にも知名度が高く、相当売れているということなのでしょう。 音にうるさい、あのさだまさし氏も自宅ではメリルを弾いているとかいないとか、、、 この「00-18」ですが、1930年代のプリウォーサウンドを再現すべく、カスタムオーダーしたものです。 メリルを持ってまず最初に思うこと。 それは「とにかく軽い!」ということです。 それだけに「メリルは材が薄く、割れやすい」などと言われてたりもしますね。 実際のところ、マーティンよりも軽量に作られてはいるものの、そこまで極端に薄いわけでもないようです。 ただ、押尾コータロー氏がトップを割ったなんて話もあったりしますが、日本の正規代理店に確認したところ、それ以外でトップが割れたというトラブルはないそうです。 でも、この薄さ・軽さからは想像できないくらいの太い低音が鳴り響くんですよね。 普通、トップが薄いと薄っぺらな音がしちゃいますからね。 不思議だなーと思って、プロの方に聴いてみると、メリルはブレーシングを相当研究していて、トップが薄くてもブレーシングでコントロールすることで、力強い低音と強度を両立させているのだそうです。 なるほどー。 ただ、トップを薄くするだけでは、ここまで軽く仕上げることはできません。 他にも秘密があります。 それは、メリルが考案したと言われるトラストロッドです。 仕様を再現するだけであれば、マーティンと同じスティールTバーを使えば簡単なのですが、演奏性やセッティングのしやすさなどを考慮し、軽量なトラストロッドを開発したのだそうです。 つまり、マーティンの仕様を単純に復刻させるだけではなく、楽器のトータルバランスとして、極めて高度な設計をしている。 それがメリルの魅力だと考えています。

海外ルシアが作るハンドメイドギターについて考える

三大名工の特集が組まれたアコースティックギターブック 有名な海外ルシアーはたくさんいますが、私の好みのマーティンタイプとなると、、、 ジュリアス・ボージャス、ジム・メリル、ランディ・ルーカスが三大名工として知られていますね。 いずれも、マーティンのゴールデンエラ期の再現を目指し、ギターを製作しています。 ただ、弾き比べてみると、当然のことながらそれぞれのギターに個性が感じられます。 また、オリジナルのゴールデンエラ期とはまた違った音作りをしていることもわかります。 そんな魅力的な、海外ルシアの作るギターについて少し考えてみたいと思います。 まずは、ジュリアス・ボージャス。 ボージャスは、1990年代後期のショーンバーグギターを製作したことで有名ですね。 独立前も、ソロイストなど数々の名器を残しています。 また、マーティン社にニカワの技法を教えたことでも有名ですね。 これによって、オーセンティックシリーズが誕生したわけです。 技術に関しては、マーティンに技術提供をするほどなので、やはり素晴らしいの一言。 私の感覚では、マホガニーよりもローズの方が得意な印象。 特にOMスタイルのギターに関しては、他を寄せ付けない、素晴らしい音作りだと思います。 プリウォーサウンドを感じさせつつも、どこか主張があるサウンド。 言葉ではうまく表現できませんが、どこかゴージャス感があるんですよね。 それは、Style 45のような装飾されたゴージャス感ではなく、、、 素材の持つ魅力を最大限に引き出したかのようなゴージャス感といったら良いのでしょうか。 そのため、近年のルシアものと比べると、少し地味な印象を受けてしまうかもしれませんね。 それでも、材選びや、木工技術など、わかる人にはわかる玄人好みなギターと言えると思います。 残念ながら、現在は、ギターを作っていないようですね。 続いてジム・メリル。 プリウォーの再現性という意味では、現役のルシアの中ではトップではないでしょうか。 (ランディ・ルーカスは、もうマーティンタイプは製作していないとのこと) 私の感覚では、ローズよりもマホガニーの方が上手。 レスポンスに優れ、フィンガーでもピックでも、弾き手の思い通りに反応してくれます...

はじめてのネックリセット(サドル&弦高調整)③

そういえば、、、 ネックリセットに出していた「Martin 00-18(1953年製)」が帰ってきていました。 既に手元にはあるのですが、リセット中の画像があるので、せっかくなので、ご紹介しておきたいと思います。、 マーティンはボルト等は使っておらず、ダブテイルジョイントと言われる鳩の尻尾のような形の木を組み合わせて、接着して固定しています。 そのため、湿度・温度をあげて、接着剤を柔らかくし、はずしていくんですね。 1950年代のマーティンはニカワ接着が行われていたこともあり、一般的なタイトボンドに比べて、 ギターへのダメージを与えることなく、簡単に外せるそうです(逆にニカワで性格に固定するには高い技術力が必要)。 もちろん、今回のネックリセットでもニカワ接着でお願いしています。 そして、これが鉄製のTバーロッドですね。 近年のオーセンティックシリーズなどで復刻されましたが、これがそのオリジナルですね。 言われなければ気になりませんが、たしかに、T字型しているのがわかります。 そして肝心の音質の変化ですが、、、 音の粒立ちやエッジ感が向上 若干甘かったピッチ(音程)が正確に!!! 6本の弦のバランスが明らかに良くなった 箱鳴り感は減少・・・ 「箱鳴り感は減少」とは書いていますが、これはネックリセット後は音が大人しくなるといわれているやつですかね。 これから弾き込んでいくことで、以前以上の箱鳴りが戻ってくるはずです。 それ以外は、完全に満足のいくセッティングになって戻ってきた感じです。 この辺はまた後日にでも。

ブリッジピンを交換するとアコギの音はどう変わるのか?

私は、あまり小物類にはこだわらない派ではあるのですが、、、 このデジマートの「 地下実験室 」の連載は、とても楽しめる内容だったのでご紹介したいと思います。 企画としては、Gibson J-50(1962年)のブリッジピンをいろいろ交換して、音の変化を試してみるというものです。 録音は、ピックアップを使って集音されていますが、それは同一条件での比較をしやすくすることが狙いのようです。 ただ、生音大好きな私としては、、、 マグネットピックアップのダイナミックレンジの狭さや、どうしてもエレキっぽくなってしまうプレーン弦の鳴りであったり、、、 ピエゾピックアップの空気感のなさや、いわゆるピエゾ臭いといわれるあの独特のアタック感が苦手だったりするのですが、、、 そういう中にあって、コンタクトマイクタイプのL.R.Baggs「Lyric」を選んだというのは、良い選択だと思いました。 でも、アジャスタブルサドルのギターを使うのは、、、と思いつつ・・・ 詳しくは、デジマートのサイトで動画を聴き比べて頂きたいのですが、、、 面白い!やはり、音は変わるのですねー。 でも、この音の変化というのが、、、 温度や湿度の影響による変化と比べてどうなのかとか、、、 弦の劣化による影響と比べてどうなのかとか、、、 しばらく弾いているだけでも鳴りはかわってくるしなーとか、、、 ブリッジピンで音が変わっても、自分の好みの音がでるように無意識のうちに爪やピックの当て方を変えて補正しちゃうだろうしなーとか、、、 つまり、ブリッジピンでの変化以上に、アコースティックギターは環境によって音が変わる要因がたくさんあると思うんですよね。 もちろん、最後の隠し味的に交換するのはありだとは思うのですが、必要以上にマニアックになりすぎず、もっと基本的なところで気にすべきことがあると思うんですよね。 ということで、アコギは日ごろのコンディション管理と、セッティングが重要であるという、私の持論を変えるまでには至らず。 また、記者の方の結論もそうですし、自分で動画を確認してみてもそうなのですが、結局はエボニーでいいんじゃないかという、つまらない結論に至ってしまいました。 なんとなく、結論は最初からわかっていたような・・・ ...

伊藤賢一「ギター・リサイタル」に行ってきました(2016年)

Martin D-18 (1952年) とKen Oya Model-J (2008) 昨年に引き続き 、伊藤賢一@近江楽堂(新宿オペラシティ)に行ってきました。 ライブではなく「リサイタル」としているあたりにも、伊藤さんのコダワリが感じられますね。 会場は100人程度のキャパですが、昨年に引き続き満員御礼。 いかに、伊藤さんの音楽、 そしてアコースティックギターの生音を求めている人が多いかということがわかります。 今回は、いつものハウザー、大屋に加え、1952年製のMartin D-18が使われていました。 このリサイタルでは、毎回、ゲストが参加することになっているそうです。 今回のゲストは、クラシックギタリストの垂石雅俊さん。 伊藤さんの同窓生だそうです。 垂石さんは、埼玉で音楽教室「ギター&エアスト」を主宰されており、自身のCDも多数リリースするなど、ギタリスト業界の中では、かなり稼いでいる部類ではないかと(笑) もちろん、、、 全日本ギターコンクール、ギター音楽大賞アンサンブル部門での優勝、 ドイツに渡欧し、クラシックギターをアレクサンダー・セルゲイ・ラミレス氏、アコースティックギターをドン・ロス氏に師事するなど、 実績・実力も十分なギタリストです。 「伊藤君とは1ミリも趣味が合わない」など、 ゲスト出演とは思えないMCで会場を沸かしていましたが、会場は同窓生でなくてはだせない、やさしい雰囲気で包まれていました。 使用ギターは、ガットが「Kazuo Sato」、スティールはローデンでした。 肝心のリサイタルの内容ですが、、、 「はじめて手に入れたまともなギターがMartin D-18だった」 というMCから演奏された、少年時代をイメージした楽曲のメドレーが良かったです。 使用ギターはもちろん、1952年製のD-18。 マホガニーのやさしい音色と、会場の美しい残響音で、なんだかとても感傷的な気持ちになってしまいました。 また、伊藤さんの定番曲ソリチュードの二重奏が素晴らしかったですね。 いつもはソロでの演奏ですが、垂石さんが二重奏にアレンジしたのだそうです。 伊藤さんが大屋ギター、垂石さんが伊藤さんのD-18を使って演奏していたのですが、アレンジもさる...

マホガニー図鑑「Martin 0-17 1935年製」④

ブレーシングは、もちろん、スキャロップブレーシング。 トップ材には鳴りにくいマホガニーが使われていますが、、、 スキャロップ仕様であること、 そして熟成されたプリウォーヴィンテージということもあって、下手なスプルーストップのギターよりも、良く鳴ります。 これなら、フィンガースタイルのソロギターでも十分に使えるなといった印象です。 特に高音域に関しては、突き抜けるような、それでいて柔らかで美しい音色を奏でてくれます。 もちろん、倍音は少ないのですが、この澄んだ高音域というのは、上質なオールマホでなくては出せない音色だと思います。 そして、ブリッジプレートにはメイプルではなく、ハカランダが使われていますね。 また個人的には、オールマホのギターではピッキングのタッチが重要だと考えています。 というのも、優しく弾くと、とても美しい音色を出すことができるし、 強く弾くと、オールマホ特有の帯域の狭さがでてきて、コンプレスがかかったような独特の泥臭さのような音になります。 この音色が、ブルースやラグタイムに合うとされている理由ですね。 つまり、よいオールマホは、弾き方次第で、多彩な表現力をもったギターと言えると思います。 ちなみに、マーティンではこの「Style 17」以外でも、オールマホのギターがあります。 それは「Style 15」ですね。 同じオールマホということもあり、見た目も似ているのですが、いくつか違いがあるので、まとめておきますね。 一番わかりやすいのは、ポジションマークですかね。 Style 17は、「5、7、9、12、14フレット」にありますが、Style 15は「5、7、9、12フレット」にあり、さらにはダブルドットがありません。 またフレット数も、Style 17は20フレットまであるのに対し、Style 15では19フレットまでしかありません。 ちなみに、1940~1943年までに作られた0-15では、べっ甲柄のヘッドプレートが使われていたりします。 マホガニーは個体差の大きい材ですので、是非、たくさん試奏して、よいオールマホのギターと巡り合ってほしいなと思います。 プリウォーやゴールデンエラと呼ばれる時期の中では、もっとも手に入れやすい価格帯のモデルですので...

マホガニー図鑑「Martin 0-17 1935年製」③

ブリッジと指盤はハカランダです。 廉価版であるこの「Style 17」でも、ハカランダが使われていることからも、当時はハカランダが潤沢に存在した時代であったことが想像できます(端材の有効活用なのかもしれませんが)。 ハカランダの場合、エボニーに比べて軽やかな音になりますので、この軽やかさというのが、当時の職人が狙っていた音作りなのかもしれませんね。 ナット幅は、1938年以前ですので、44.5ミリ。 1939年以降の42ミリ幅のものと比べ、ナット幅が広いことで、その分ネックの質量が増えますので、サステインや響き方にも影響を与えていると考えられます。 また、特徴的な部分としては、ナットにエボニーが使われていることがあげられます。 音作りとしてウッディーな感じを出したかったのか、もしくはこれまた端材の有効活用だったのか。 その辺の事情はわかりませんが、このエボニーナットが0-17らしい「ほっこり 」したオールマホサウンドのポイントと言えます。 ※牛骨の方が現代的な音色を出せるとは思いますが。 ネックはモディファイVの形状で、いわゆる、昨今のオーセンティックと同じですね。 また、1941年以前ですので、ネックのロッドには鉄製のTバーが使われています。 1942年以降のエボニーロッドと弾き比べると、鉄製のTバーの方が質量がある分、重量感があり、高音域に艶と質感を加えてくれているように感じます。 逆にエボニーロッドの場合には、マホガニーの軽やかな感じが増してくるので、ラグタイムのような軽快な楽曲で使っていきたい音色ですね。 ■オールマホ関連記事 私がマホガニーに惹かれたもう一つの理由『オールマホのすゝめ』 『続・オールマホのすゝめ』オールマホを選ぶ理由。 ■オールマホ図鑑 マホガニー図鑑「Martin 0-17 1935年製」① マホガニー図鑑「Martin 0-17 1935年製」② マホガニー図鑑「Martin 0-17 1935年製」③ マホガニー図鑑「Martin 0-17 1935年製」④ マホガニー図鑑「Martin 2-17(1927年製)」

マホガニー図鑑「Martin 0-17 1935年製」②

トップ材は、もちろん、マホガニーです。 一般的にトップ材として使われることの多いスプルースと比べると、振動幅は小さく感じられます。 その影響もあってか、周波数の帯域的にはかなり狭い印象を受けます。 特に低音は弱いですね。 ただ、あえて「鳴りにくい」トップ材を使うことで、まとまりの良い、濃厚なマホガニーらしい中音域を出していると考えることもできます。 個人的にはこの濃厚さ(帯域の狭さ)こそが、オールマホガニーのギターの魅力だと考えています。 特に、よく弾きこまれたヴィンテージともなると、スプルースのギターや、新しいオールマホのギターでは決して表現できない素晴らしい音色を奏でるようになります。 またプリウォーには、キューバンマホガニーが使われているという都市伝説も囁かれていたりもするのですが、木目を見る限り、この個体に関しては、そうではないと思われます。 これ以外でも、それなりの本数のマホガニーが使われたギターを弾いたことがありますが、やはり、ほとんどがキューバンマホガニーではない、もしくは判断できないものでした。 この辺はプロの方にきいても、なかなか判断が難しいようですが、その大半がホンジュラスマホガニーなのだろうと私は考えています。 少なくとも、キューバンマホガニーではなくても、しっかり弾きこまれ、熟成されたマホガニーのギターは、とんでもない美音を出す、そのことだけは間違いありません。 ■オールマホ関連記事 私がマホガニーに惹かれたもう一つの理由『オールマホのすゝめ』 『続・オールマホのすゝめ』オールマホを選ぶ理由。 ■オールマホ図鑑 マホガニー図鑑「Martin 0-17 1935年製」① マホガニー図鑑「Martin 0-17 1935年製」② マホガニー図鑑「Martin 0-17 1935年製」③ マホガニー図鑑「Martin 0-17 1935年製」④ マホガニー図鑑「Martin 2-17(1927年製)」

マホガニー図鑑「Martin 0-17 1935年製」①

Martin 0-17 1935年製 マホガニー図鑑の第6弾は「Martin 0-17(1935年製)」です。 「1935年製!」ということもあり、、、 まさに、マーティンの黄金期と呼ばれているゴールデンエラの真っ只中にあたります。 世界中のミュージシャンやコレクターが血眼になって探している年代のギターです。 そんな中でも、このオールマホガニーのプリウォーに関しては、、、 個性的な音やルックスに加え、なんとか手の届く範囲の価格帯ということもあって、かなりの人が狙っている人気のモデルだったりもします。 そもそもオールマホとは何なのか、ということですが、、、 アコースティックギターのトップ材には「スプルース」が使われることが多いのですが、そこにサイドバックやネック材として使われることの多い「マホガニー」を使っていることが特徴になります。 マーティンだと「0-15」や「0-17」、ギブソンだと「L-0」や「LG-0」といったモデルですね。 一般的にはブルースやラグタイムといった楽曲に合うとされています。 温かくて、優しいマホガニーらしい音色が特徴です。 このオールマホですが、マーティンでは、1921年頃から製造が開始されています。 最初に販売されたのは「2-17」という小振りなサイズのギターでした。 この頃には、既にダブルオーやトリプルオーといったボディサイズが主流になっていましたので、この「2」というボディサイズはかなり小振りなものです。 「1」や「2」といったボディサイズはどちらかというと19世紀に作られていたサイズですね。 くわえて、音の遠達性の劣るマホガニーですからね。 音量はかなり小さめで、自宅で軽く爪弾くような使われ方をしていたものと考えられます。 実際には、スチューデントモデルとして安価で売り出されていたそうです。 この決してハイスペックではない、廉価版のギターと言っても過言ではないこのオールマホのギターが、80年以上の月日を経て、どのような進化を遂げたのでしょうか。 ■オールマホ関連記事 私がマホガニーに惹かれたもう一つの理由『オールマホのすゝめ』 『続・オールマホのすゝめ』オールマホを選ぶ理由。 ■オールマホ図鑑 マホガニー図鑑「Martin 0-17 193...

私がマホガニーに惹かれたもう一つの理由『オールマホのすゝめ』

友人のオールマホ『Gibson L-0(1928年製)』 私がマホガニーに惹かれたきっかけは、マーティンのゴールデンエラシリーズでした。 まさに「開眼」というやつで、アディロンダックスプルースとマホガニーの組み合わせに可能性を感じてしまったんですよね。 ↓↓↓ マホガニーのすゝめ その後、同じアディロン・マホの組み合わせであるオーセンティックシリーズや、 ギブソンのレジェンドシリーズ、 さらには貴重なヴィンテージのギターを試奏していくうちに、 その思いは確信に変わっていきます。 アディロントップならではの艶、コシ、音の太さは、音響特性に劣るマホガニーの短所を補い、長所を引き出す組み合わせなのだなと。 その一方で、純粋にマホガニーの甘さや優しさといった個性を「もっと濃く」味わえる組み合わせはないのかなと、考えるようになっていきました。 それは「オールマホガニー」のギターでした。 もともと、ブルースやラグタイムといった音楽が好きだったこともあり、いつか、渋いオールマホのギターを手に入れたいと思っていたんですよね。 ということもあって、昔からオールマホのギターを見つけるたびに、試奏をするようにしていました。 でも、なかなか良いものに巡り合えなくて。 ところが、ある日、凄いオールマホと出会ってしまったのです。 それまで、オールマホのギターといえば、とにかく軽い音というイメージでした。 悪く言うと、チープでスカスカな音ですね。 これが一般的なオールマホに対する認識ですし、そもそも廉価版という位置づけのギターなので、これがオールマホが目指した音作りなのでしょう。 でも、私が出会ってしまった個体からは、全く違う音色が飛び出したのです。 艶やかで、濃密で、気品すら感じさせる美しい音色。 少しダークで陰りがあり、でも、ウッディーで温かい質感もある。 ダイナミックレンジは狭いですが、その狭い帯域の中での圧倒的な存在感。 「なんだこれは!」となったわけです。 マホガニーの種類が違うのか、作りによるものなのか、熟成のされ方が違うのか。 その理由はわかりません。 でも、音だけは確実に違うのです。 ある意味、アディロンマホ以上の衝撃を感じてしまったのです。 次回は、そんなオール...