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マホガニー図鑑「YAMAHA 赤ラベル」 その③

「YAMAHA FG-150(1969年製)」 赤ラベルの音色は十分に魅力的だとは思います。 ただ「FG-180」の場合、合板の特性なのでしょうか。 低音を上手くコントロールできず、締まりのないモコモコと膨らんだ音になってしまうんです。 低音の膨らみを解消するには、ボディサイズを小さくすればいいというのが私の持論です。 となると「FG-180」よりも一回り小さい「FG-150」を試してみたくなりますよね。 というわけで入手してみました。 いくつかパーツは取り替えられていますが、十分にセッティングされた1969年製の「FG-150」です。 それでは、実際に弾いてみましょう。 予想通り、低音の量感が減っているので、中高音域が前面に出てきて、楽器としてのバランスがとても良いです。 それに、音の深みだったり、ヌケの良さといった、熟成したマホガニーらしさも感じられます。 ただ、 ボディサイズが小さいため、箱鳴りよりも弦鳴りが強く出るので、ヴィンテージ感は「FG-180」の方が上 ですね。 この中間のサイズが欲しかったな。 1970年代に入ると、たくさんの国産アコギが作られるようになりましたが、いろいろ調べてみると、マホガニーが使われたギターは廉価ものばかりなんですよね。 その大半がローズウッドの「D-28」や「D-35」をベースにしたものばかりですからね。 今になってみると、なぜヤマハが、国産第一号のアコギにわざわざマホガニーを選んだのか不思議に思います。 赤ラベルは、国産初のアコースティックギターとか、フォークギターの元祖とか、ジャパン・ヴィンテージとして評価されています。 でも、 個人的には、国産マホガニーの名器として評価したい と考えています。 過大評価されている部分もあるとは思いますが、コストパフォーマンスは抜群だと思います。 <関連記事> マホガニー図鑑「YAMAHA 赤ラベル」その① マホガニー図鑑「YAMAHA 赤ラベル」その② マホガニー図鑑「YAMAHA 赤ラベル」その③

マホガニー図鑑「YAMAHA 赤ラベル」 その②

赤ラベルとしてはなかなかのセッティング この「FG-180」を弾いて驚きました。 というのも、 同じ年代の下手なマーティンよりも鳴ってしまった からです。 もちろん、そんな訳がないと思われる方も多いとは思います。 でも、良い音というのは個人の主観が入りますが、単純に鳴りという観点であれば客観的に判断することができますからね。 間違いありません。 そして 合板であるのにも関わらず、サウンドにはしっかりとマホガニーの質感が残っている んです。 しかもそれは、 紛れもないヴィンテージ・マホガニーの質感 です。 今まで弾いてきた赤ラベルとは何が違うのかなと考えてみました。 それは、 セッティングの違い だということに気が付きました。 この個体では、 十分なサドルの高さを残しつつも、弦高を下げることで、鳴りの良さと、高い演奏性を両立することができているのです。 具体的には、12フレット上で1弦側が2.1ミリ、6弦側が2.6ミリという素晴らしいセッティングですね。 これならば、現代的なフィンガースタイルでも十分に使うことができます。 もちろん、この赤ラベルはジャパン・ヴィンテージとして過大評価されている部分はあるとは思いますよ。 それでも、音にも深みやキレのようなものは間違いなく感じられますし、 合板でもヴィンテージ・サウンドに進化することを証明してくれています 。 個人的には、レスポンスが良く、クセのない素直な音がでるので、打田十紀夫さんが演奏されるようなラグタイムやカントリーブルースに合うと思います。 <関連記事> マホガニー図鑑「YAMAHA 赤ラベル」その① マホガニー図鑑「YAMAHA 赤ラベル」その② マホガニー図鑑「YAMAHA 赤ラベル」その③

マホガニー図鑑「YAMAHA 赤ラベル」 その①

「YAMAHA FG-180(1968年製)」 第二回にして、早くも番外編的なギターを取り上げてみたいと思います。 マホガニーの合板が使われた、国産初のアコースティックギター「YAMAHA FGシリーズ」こと、 通称「赤ラベル」です 。 ジャパンビンテージ と言われ、人気の高い赤ラベル(FG-180、FG-150)ですが、私はとても懐疑的でした。 現在もテリーズテリーで活躍されている方々が作られた単板のギターと言われればわからなくもないです。 でも、 サイドバックだけではなく、トップにまで合板が使われたギターから、ビンテージサウンドが出るわけがないと思っていたんです 。 そもそもこの 赤ラベルには、構造的な欠陥がある と考えていました。 それは ネックの仕込み角度に起因する弦高の高さ です。 当時は、コードストローク中心のプレイスタイルだったこともあり、弦高が高くても問題はないと考えられていたのかもしれません。 それでも、現代の水準では高すぎると思うし、それが経年変化することでネックが起き、さらに弦高が上がってしまった個体が多いんですよね。 その対応策として、サドルを削って弦高を下げるわけです。 でも、それによって弦のテンションが下がり、音質に悪い影響が出てしまうんです。 よく見かける赤ラベルは、このような状態のものばかりで、どれを弾いてもイマイチに感じられて、赤ラベルのビンテージサウンドなんてありえないと考えていたんです。 このFG-180と出会うまでは。 <関連記事> マホガニー図鑑「YAMAHA 赤ラベル」その① マホガニー図鑑「YAMAHA 赤ラベル」その② マホガニー図鑑「YAMAHA 赤ラベル」その③

マホガニー図鑑「Martin 000-18GE」④

Martin OOO-18GE(2006年製) ペグはゴトーのオープン、ナットとサドルは牛骨。 ナット幅は1930年代のマーティンの標準仕様であるワイドネックの44.5mmです。 トリプルオーサイズですので、ネックはショートスケール。 ネックシェイプは30年代仕様のModified Vですね。 オーセンティックも同じネックシェイプですが、ゴールデンエラは、若干、細身に作られているようで、とても握りやすく感じます。 ちなみに、オーセンティックとの違いですが、ロッドはTバーロッドではなく、アジャスタブルロッドが使われています。 高い品質と素晴らしい音色。 そして抜群のコストパフォーマンス! ということで人気のモデルではありますが、私的に注目して欲しいのは、、、 現代的な演奏にも適合できる弾きやすいネックシェイプ 細かい調整が可能なアジャスタブルロッドの採用 といった、実用性の高さなんですよね。 そして、アディロン・マホの組み合わせをもっともコストパフォーマンス高く、楽しめるモデルという位置づけも魅力だと思います。 まさに、プリウォーマーティンと現代技術が融合した、素晴らしいギターです。 ちなみにこの「000-18GE」ですが、、、 残念なことに、2013年に生産が完了してしまったそうです。 <関連記事> マホガニー図鑑「Martin 000-18GE」① マホガニー図鑑「Martin 000-18GE」② マホガニー図鑑「Martin 000-18GE」③ マホガニー図鑑「Martin 000-18GE」④ 「赤い黄金」マホガニー マホガニーに合うトップ材を考える サイドバック材としてのマホガニーを考える ネック材としてのマホガニーを考える 近年モノのアディロンを考える(ゴールデンエラのススメ) 「Style 18」ゴールデンエラシリーズの音質比較

マホガニー図鑑「Martin 000-18GE」③

Martin OOO-18GE(2006年製) サイドバックですが、マーティン社のカタログでは「Genuine Mahogany」と記載されています。 直訳すると本物のマホガニーという意味ですね。 産地を明記しないのは、年々、規制が厳しくなる木材の輸出時の対策として、あえて産地をわかりにくくしているという説がありますね。 私がマホガニーを選ぶときは、木の密度を確認するのですが、材が枯渇している昨今において、ゴールデンエラシリーズは、なかなか良い材が使われていると思います。 ネックは「Select Hardwood」と記載されています。 サイドバックとは異なり、音への直接的な影響が少ないこともあってか、マーティン社は早々にマホガニーからその代替材に変更しています。 たしか、2005年頃のことだったと思います。 ただ、「Select Hardwood」と記載されていても、マホガニーネックのものは存在します。 ですので、こだわるのであれば、できるだけ初期ものを探された方が、マホガニーネックの確率が高いと考えています。 ただ、マホガニーであればよいというわけでもなく、品質の良い、密度の高い材の方が望ましいので、何にこだわるのか、ということになりますね。 <関連記事> マホガニー図鑑「Martin 000-18GE」① マホガニー図鑑「Martin 000-18GE」② マホガニー図鑑「Martin 000-18GE」③ マホガニー図鑑「Martin 000-18GE」④ 「赤い黄金」マホガニー マホガニーに合うトップ材を考える サイドバック材としてのマホガニーを考える ネック材としてのマホガニーを考える 近年モノのアディロンを考える(ゴールデンエラのススメ) 「Style 18」ゴールデンエラシリーズの音質比較

マホガニー図鑑「Martin 000-18GE」②

Martin OOO-18GE(2006年製) トップは、アディロンダックスプルースです。 この個体は、近年モノのアディロンにしては比較的珍しい、目の詰ったものが使われています。 一般的には、目の詰まったものは音が鳴り始めるのに時間がかかると言われています。 でも個人的には、基本的にアディロントップは激鳴りなので、多少、鳴りが悪くても気にしなくてもいいと考えています。 それよりも、音の太さや艶、そしてバランスなどなど、、、 その個体が持つ音色の個体差に着目して選んだ方がいいと思います。 ブレーシングは、ゴールデンエラスタイルのスキャロップドXブレーシングです。 マーティン社では、ギターの強度の問題や、演奏スタイルの変化から、トップの鳴りよりも、強度を重視する必要性に迫られ、1944年からノンスキャロップに移行してしまったんですよね。 それだけに、鳴りを優先したこのブレーシングの再現は嬉しいものがあります。 エボニーのブリッジや、牛骨のロングサドルも、戦前仕様を踏襲していて、本当に美しいギターだと思います。 <関連記事> マホガニー図鑑「Martin 000-18GE」① マホガニー図鑑「Martin 000-18GE」② マホガニー図鑑「Martin 000-18GE」③ マホガニー図鑑「Martin 000-18GE」④ 「赤い黄金」マホガニー マホガニーに合うトップ材を考える サイドバック材としてのマホガニーを考える ネック材としてのマホガニーを考える 近年モノのアディロンを考える(ゴールデンエラのススメ) 「Style 18」ゴールデンエラシリーズの音質比較

マホガニー図鑑「Martin 000-18GE」①

Martin OOO-18GE(2006年製) 定番モノから、レアもの、変わりものなどなど。 私のお気に入りのマホガニーを紹介していきたいと思います。 第一弾ということもありますので、無難に定番の「Martin 000-18GE」にしたいと思います。 このゴールデンエラシリーズですが、マーティンの黄金期(ゴールデンエラ)と呼ばれる1930年代の再現を目指したモデルです。 オーセンティックシリーズが出るまでは、マーティンのマホガニーのラインナップでは最上位に位置付けられていました。 それだけに品質、音ともに素晴らしいものがあり、オーセンティックが出た今でも、コストパフォーマンスの高いギターとして、根強い人気を誇ります。 一応、1937年製の000-18をモデルにしているようですが、後に発売されたオーセンティックシリーズなどと比較すると、復刻の度合いは若干弱いです。 あえて言うなら、重箱の隅をつつくような復刻の再現性にこだわるよりも、、、 現代的なセッティングのしやすさであったり、生産性やコストパフォーマンスを高めるための標準化・規格化を狙ったモデルという位置づけですかね。 そういった中で、最大のポイントといえるは、トップにアディロンダックスプルースが使われていることでしょう。 マーティンでは戦前から、アディロンをトップ材として使用していたのですが、材の枯渇に伴い、1946年以降はシトカスプルースが使われるようになりました。 それが、1999年に発売されたゴールデンエラシリーズ「D-18GE」から、通常のラインナップとしてアディロントップを入手できるようになったのです。 それまでは、ヴィンテージを購入することでしか、アディロントップのアコギを手に入れることができなかったわけですからね。 発売当初は売り切れ続出で、試奏することすらできない状況だったそうです。 <関連記事> マホガニー図鑑「Martin 000-18GE」① マホガニー図鑑「Martin 000-18GE」② マホガニー図鑑「Martin 000-18GE」③ マホガニー図鑑「Martin 000-18GE」④ 「赤い黄金」マホガニー マホガニーに合うトップ材を考える サイドバック材としてのマホガニーを考える ...

打田十紀夫&ミッシェル・オーモンのライブに行ってきました。

モリダイラ楽器のM’s Spaceにて行われた打田十紀夫氏とミッシェル・オーモン氏のライブに行ってきました。ミッシェル氏はフランス人のギタリストで、2010年以来の2回目の来日だそうです。まずは打田氏が演奏し、その後、ミッシェル氏、二人のセッションという構成でした。 開演前のステージの様子 ヨーロッパ系のソロギターを見るのは初めてだったので、どんな演奏をするのか、とても興味深かったのですが、思っていたよりもオーソドックスなスタイルでした。ヨーロッパ系ということでイメージしていたクラシカルな感じでもなく、ちょっと気取ってボサノバを演奏するわけでもなく、色々な音楽の要素が混ざり合っているような感じでした。そういえば、パリってアメリカと並ぶ「人種のるつぼ」と言われているんですよね。そういった影響もあるのかもしれません。 なかなかつかみどころがない演奏に感じられたのですが、ふと、これって澤野工房さんでリリースされているようなヨーロピアンジャズに通じるものがあるのではないかと思いました。黒人的なフィーリングは皆無で、適度なポップさと、とても洗練された楽曲と、ちょっとお洒落な演奏が魅力なんですよね。このちょっとお洒落な感覚というのも、フランス人らしさなのかなと。 左:打田氏のシグネーチャーモデル「SC-123U」、右:ミッシェル氏のLAG ミッシェル氏が使用していたのはLAGというメーカーのギターです。日本ではあまり見かけませんが、1978年に設立されたフランスでは大手の楽器メーカーだそうです。ローズウッド系で、太くて芯のはっきりした音色で、個人的には、ソロギターよりも、リードに合うギターだと感じました。二人のセッションでは、打田氏をバックに、素晴らしいリードプレイを聞かせてくれました。

ギタリストの爪の乾燥対策 その③(ニベアの使用状況)

ニベアを塗り始めて一カ月の爪の状態 「 その① 」「 その② 」の続編です。 かれこれ一カ月くらいですが、 朝昼晩と日に三度、ニベアを塗っていますので、 現在の爪の状況を報告したいと思います。 ちなみに、ニベアの効果を確認するため、 しばらくの間、爪の補強液は使わないことにしています。 最初は自分でも冗談半分だったのですが、使ってみてびっくり。 三日目くらいから効果を感じました 。 もちろん、今まで乾燥対策をしたことがなかったので、 何を使っても変化はあったのかもしれませんが、 爪に艶が出て、柔軟性・弾力性がでてきた ように感じています。 さらに使い続けると、 なかなか治らなかった 二枚詰も3週間くらいで完治 しましたし、 最近は 爪のシワも目立たなくなった ような気がしています。 本当の効果がわかるのは、爪が生え変わる3か月後なのかもしれませんが、 今のところ良い感じですね。

ショートスケールのアコギについて考える その③

ロングスケールのD-18GE(2004年)とショートスケールのOOO-18GE(2006年) 今回はショートスケールのデメリットについて、考えてみたいと思います。 ※過去記事はこちら ↓↓↓ 「 ショートスケールのアコギについて考える その① 」 「 ショートスケールのアコギについて考える その② 」 私が尊敬する中川イサト師匠、岸部眞明氏などなど。 ギターインストの世界では、変則チューニングを使われる方が多いですよね。 ギターは、チューニングを変えることで、演奏しやすくしたり、独創的な響きを作り出すことができる楽器ですので、その特性を活用しているわけですね。 でも、私にはそれが厳しかったりします。 なぜならば、これがショートスケールのデメリットだからです。 変則チューニングは、スタンダードチューニングから音階を落とした設定が基本になります。 というのも、ギターはスタンダードチューニングを前提に設計されているので、音階を上げるとテンションがきつくなって弦が切れたり、ギターに負荷がかかってしまうからです。 そのため、弦を緩めた時に、演奏できるだけのテンションを保てるのかが、変則チューニングでは重要になります。 変則チューニングにした場合、弦のテンションが強いロングスケールであれば問題はありませんが、ショートスケールだとテンションを保てない場合があります。 テンションを保てないと、弦の鳴りが弱くなりますし、チューニングも不安定になります。 定番のダドガド(DADGAD)やオープンG(DGDGBD)くらいであれば影響はないと思いますが、それ以上、チューニングを落とす場合は、厳しい場合もあります。 たった13ミリのスケールの違いで、響きや演奏性まで変わってくるからアコギは面白いのですが、、逆にそれだけシビアな世界ということでもあります。 個人的には、ショートスケールはメリットが多いと思っていますが、当然のことながらデメリットもあるわけで、アコギを選ぶ際には、その点に注意して頂きたいと思います。