スキップしてメイン コンテンツに移動

はじめてのネックリセット(サドル&弦高調整)②


サドルは、弦の振動をギター本体に伝える非常に重要な部分です。

ただ、、、

ネットを見ていると、象牙、牛骨、TUSQなど、素材にこだわっている人は多いのですが、サドルの高さにこだわりを持っている人は少ないなと感じているんですよね。

もちろん、弾きやすさを重視して、弦高をどれくらい下げたかという記事は見かけますが、『音色』という観点で語られている記事はほとんど見かけません。

フィンガースタイルでは低い方が弾きやすいというのも理解できますが、サドルを下げ過ぎてしまい、鳴らなくなってしまったギターを見ると、ちょっと悲しい気持ちになるんですよね。

特に、ヴィンテージが好きな私にとっては、やはりあの『音』が魅力なわけですからね。

演奏性も重要ですが、それ以上に、そのギターが持つポテンシャルを最大限に引き出してあげたいと思うわけです。



十分なサドルの高さがあるギターを弾くと、力強さがあり、気持よい箱鳴りを感じることができます。

これは感覚や経験則で書いていますが、物理学的にも証明できるそうですね。

簡単に言ってしまうと、弦の振動効率が向上するそうです。

振動効率が上がることで、弦の振動をボディにしっかりと伝えることができるようになるわけですね。

つまり、、、

サドルを上げると箱鳴りが強まり、下げると箱鳴りが弱まるので、相対的に弦鳴りが出てきます。



箱鳴りが強まれば、ボディによって音が増幅され、ダイナミックレンジがひろがってきます。

一方、弦鳴りが強まると、ダイナミックレンジは減り、コンプレッサーをかけたように、低音から高音、1弦から6弦までが全体的に均一なバランスになっていきます。

アンプを通す場合は、むしろその方が音色をコントロールしやすいということもあるかもしれませんね。

でも、私の場合は「生音」にこだわりたいと考えていますからね。

しっかりとサドルの高さを出して、箱鳴りを引き出せるセッティングになるよう依頼したいと思います。

それでは、リペアに出してきます!!!

Popular Posts

マホガニー図鑑「YAMAHA 赤ラベル」 その①

「YAMAHA FG-180(1968年製)」 第二回にして、早くも番外編的なギターを取り上げてみたいと思います。 マホガニーの合板が使われた、国産初のアコースティックギター「YAMAHA FGシリーズ」こと、 通称「赤ラベル」です 。 ジャパンビンテージ と言われ、人気の高い赤ラベル(FG-180、FG-150)ですが、私はとても懐疑的でした。 現在もテリーズテリーで活躍されている方々が作られた単板のギターと言われればわからなくもないです。 でも、 サイドバックだけではなく、トップにまで合板が使われたギターから、ビンテージサウンドが出るわけがないと思っていたんです 。 そもそもこの 赤ラベルには、構造的な欠陥がある と考えていました。 それは ネックの仕込み角度に起因する弦高の高さ です。 当時は、コードストローク中心のプレイスタイルだったこともあり、弦高が高くても問題はないと考えられていたのかもしれません。 それでも、現代の水準では高すぎると思うし、それが経年変化することでネックが起き、さらに弦高が上がってしまった個体が多いんですよね。 その対応策として、サドルを削って弦高を下げるわけです。 でも、それによって弦のテンションが下がり、音質に悪い影響が出てしまうんです。 よく見かける赤ラベルは、このような状態のものばかりで、どれを弾いてもイマイチに感じられて、赤ラベルのビンテージサウンドなんてありえないと考えていたんです。 このFG-180と出会うまでは。 <関連記事> マホガニー図鑑「YAMAHA 赤ラベル」その① マホガニー図鑑「YAMAHA 赤ラベル」その② マホガニー図鑑「YAMAHA 赤ラベル」その③

マホガニー図鑑「YAMAHA 赤ラベル」 その③

「YAMAHA FG-150(1969年製)」 赤ラベルの音色は十分に魅力的だとは思います。 ただ「FG-180」の場合、合板の特性なのでしょうか。 低音を上手くコントロールできず、締まりのないモコモコと膨らんだ音になってしまうんです。 低音の膨らみを解消するには、ボディサイズを小さくすればいいというのが私の持論です。 となると「FG-180」よりも一回り小さい「FG-150」を試してみたくなりますよね。 というわけで入手してみました。 いくつかパーツは取り替えられていますが、十分にセッティングされた1969年製の「FG-150」です。 それでは、実際に弾いてみましょう。 予想通り、低音の量感が減っているので、中高音域が前面に出てきて、楽器としてのバランスがとても良いです。 それに、音の深みだったり、ヌケの良さといった、熟成したマホガニーらしさも感じられます。 ただ、 ボディサイズが小さいため、箱鳴りよりも弦鳴りが強く出るので、ヴィンテージ感は「FG-180」の方が上 ですね。 この中間のサイズが欲しかったな。 1970年代に入ると、たくさんの国産アコギが作られるようになりましたが、いろいろ調べてみると、マホガニーが使われたギターは廉価ものばかりなんですよね。 その大半がローズウッドの「D-28」や「D-35」をベースにしたものばかりですからね。 今になってみると、なぜヤマハが、国産第一号のアコギにわざわざマホガニーを選んだのか不思議に思います。 赤ラベルは、国産初のアコースティックギターとか、フォークギターの元祖とか、ジャパン・ヴィンテージとして評価されています。 でも、 個人的には、国産マホガニーの名器として評価したい と考えています。 過大評価されている部分もあるとは思いますが、コストパフォーマンスは抜群だと思います。 <関連記事> マホガニー図鑑「YAMAHA 赤ラベル」その① マホガニー図鑑「YAMAHA 赤ラベル」その② マホガニー図鑑「YAMAHA 赤ラベル」その③

「オイルを塗るのか、塗らないのか」メンテナンスについて考える④

  今回は、前回の椿油に引き続き、オイル繋がりで、指板のメンテナンスで使われるレモンオイル、オレンジオイルを取り上げてみようと思います。たかがオイルの話なのですが、これもまた以前取り上げたことのある「 弦を緩めるのか、緩めないのか 」と並び、諸説のあるテーマで、取り扱うのが面倒なネタだったりします。 「弦を緩めるのか、緩めないのか」メンテナンスについて考える② そもそも、オイルを塗った方がいいのか、悪いのか、それすらはっきりしていません。効果についても、これといって目に見えるものでもないですし、数値で表すことも難しいので、判断できないのです。 また、個人的な見解ですが、そもそも指板をオイルで綺麗に掃除するような人であれば、きっと楽器そのものも丁寧に取り扱っているはずですからね。そもそも、トラブル自体が少ないのではないかと思うわけです。つまり、その方がオイル塗った方が良いですよと言ったところで、必ずしもオイル単体の効果とは言いきれないのではないかと。 オイルを塗った方が良い派の意見としては、指板の保湿効果をあげる人が多いと感じます。オイル自体も自然蒸発しますが、少なくとも水分よりは蒸発に時間がかかるので、短期的に見れば保湿効果はあるのでしょう。でも、みなさん考えてみてください。 例えば自分の手を例にあげてみます。細胞も生きていて、水分補給もされている人間の手でさえ、冬場には乾燥して肌が荒れてしまいます。ハンドクリームを塗ったところで効果は一時的で、肌は荒れてしまいますよね。 それにも関わらず、細胞が死んでいて、かつ、自分では水分補給もできない状態になっている指板が、オイルを塗るだけで保湿が可能なのでしょうか。しかも、塗ったとしても、年に1~2回とか、多くて弦交換の都度塗るだけです。それだけで、木を乾燥から守ることができるのでしょうか。 もちろん、オイルを塗らないよりは塗った方が短期的には保湿できます。でも、乾燥対策ということであれば、指板が乾燥して問題が発生する前に、その他の部分、例えばトップ材のスプルースなどが先に影響が出てしまうのではないでしょうか。 ですので、保湿を気にするのであれば、指板にオイルを塗るような局所的な対応ではなく、ギター全体の湿度管理を徹底した方が効果的ではないかと思うわけです。 でも、リペアマンやメーカーなどでもオイルを使っているじゃな...

ネック材としてのマホガニーを考える。

ネックはプレイヤーにとって最も重要な演奏性に関わる部分です。そのため、最高のフィーリングを作り出すために、細かな調整ができるよう、製作者にとって加工しやすい素材である必要がありました。それに加えネック材には、軽さ、弾力性、剛性といった特性が求められるため、それらの特性を備えるマホガニーは、最良のネック材として扱われてきたのです。 それが2005年頃のことでした。Martin社のネックの表記が「Genuine Mahogany」から「Select Hardwood」に変更されてしまったのです。エントリークラスのモデルだけならばまだしも、Style 40系やAuthentic Seriesといった上位モデルでさえも変更されてしまったので、正直、驚かされました。もしかすると、それ以前にもマホガニー以外の素材が使われていた可能性もありますが。 ちょうどよい年代のアコギがありますので、比較してみましょう。画像左が「D-18GE(2004年製)」、右が表記が変更された後に販売された「000-18GE(2006年製)」です。木目から判断して、両方ともマホガニーネックですね。ただ、トリプルオーは、塗装が厚く、写真だとわかりにくいかもしれませんが、実物ではうっすらとマホガニー特有の黒い導管が確認できます。そのため「Select Hardwood」だからと言って、マホガニーが使われなくなったというわけではないのです。 これは人から聞いた話ですが、Martinでは「Select Hardwood」として、マホガニーや、その代替材として期待されているサペリ、クラシックギターなどでも使われているスパニッシュシダー(セドロ)を使用しているそうです。私がマホガニー以外で見たことがあるのは、スパニッシュシダーのネックで、明るめの色合いと木目から、それとなく判断できるものでした。一応、試奏はしてみましたが、音色の違いまでは感じられませんでした。 というのも、音だけの観点であれば、ネック材よりも、トップやサイドバックの個体差の方が影響は大きいですし、ネックに限定した場合でも、多くのルシアーが重要なのはネックの種類よりも密度だと言っていますからね。ですので「音」よりも「モノ」としてどこまでマホガニーにこだわるのかということになりますね。

「Collings」の試奏で学んだこと。Martinの魅力を再認識。

「Collings OM2H Cutaway(1997年)」 実はつい最近まで、 コリングスを避けていました 。 なんとなく、本能的にですが、 近づいてはいけないと思っていたからです。 弦を緩めなくても問題がないくらい丈夫だし、 ピッチも驚くほど正確で、 これで音まで良かったらショックだなと。 もしかして、私のマーティン君たちが いらなくなってしまうのではないかと。 そして、実際に弾いてみると、 めちゃくちゃ音が良いんですよね。 本当にやばいです。 ただ、値段はマーティンよりも高いし、 ヘッドが角ばっているところが 好みではなかったりするのですが、 評判通り、いや、 評判以上の素晴らしいアコギですね 、 これは。 でも、コリングスを弾いてみて わかったことがあります。 それは、マーティンでしか 出せない音があるのだなということです。 最近のマーティンの音質について、 いろいろ言われる方も多いですし、 はっきり、くっきりした音を求め コリングスに行きつく方も多いとは思いますが、 「 音の優しさ、柔らかさ、甘さ 」 がマーティンの個性なんだな ということをあらためて認識させられました。 また、マーティン愛好家からは、 音が硬いと言われるコリングスですが、 2000年代の後半からは、 柔らかい音色へシフトしています。 また、1990年代のものは、 作られてから約20年が経過し、 良い感じに枯れてきているので、 今が良い頃合いかもしれませんね。 特に、「 3桁コリングス 」などと呼ばれる 製造番号が3ケタのものは、 現在のUV塗装とは異なり、 ラッカー塗装で仕上げられているので、 音質的にも有利ということもあって、 プレミアがついてきていますからね。 ちなみに、この画像は、友人が購入した 「OM2H Cutaway(1997年製)」です。 一緒にかなりの本数を試奏して 決めた一本でしたが、 「音色、演奏性、堅牢性」の三拍子が 揃った素晴らしいアコギでした。 ※Collings関連記事   「Collings」のすすめ  「Collings」を語る。シリーズ  その①:楽器としての魅力   その②:トラディショナルシリーズの誕生   その③:トラディショナルシリーズの評価 ...