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ギタリスト向けのオーディオを考える④

現在の私の愛器「ADAM A5X」

オーディオシステムがPCとFireface/Babyfaceという組み合わせになったことで、机の上もすっきりして満足していたのですが、CDプレイヤーがなくなることで、ひとつ問題がでてきました。

それは、、

今までは特に意識することなく、CDプレイヤーとセットで置いていたアンプの存在です。

CDプレイヤーがあると気になりませんでしたが、いざなくなると、アンプのためだけに場所を取られてしまうのもなんだかなぁと思うようになりました。

しかも、わざわざ高いラックや、インシュレーターまで揃えていましたからね。

今回は、机の上だけでオーディオシステムを完結させることがテーマなので、なおさらです。



というところで、登場したのがアクティブスピーカーでした。

簡単に言ってしまうと、アンプ内蔵のスピーカーのことで、これまたピュアオーディオの世界からは邪道とされているシロモノです。

レコーディングスタジオではモニタースピーカーとして使われることが多く、個人的にも、ちょうど、宅録用の機器を探していたということもあり、興味を持っていたところでした。

そんなとき、RME社のFirefaceと出会ったように、これまた「ピュアオーディオとしても使える」ほどの高品質なアクティブスピーカーと巡り合うことができたんですよね。

それは、Adam Audio GmbHのスピーカーでした。



RME社と同じく、比較的新しいメーカーで、1998年にベルリンで創業されています。

「スピーカー界におけるノーベル賞ものの発明?」と称されるハイルドライバーという技術を取り入れたARTツイーターを武器に、世界的にも高い評価を得ています。

このARTツイーターは、可聴帯域を超える50KHzまでをフラットな位相特性でカバーしているそうで、カタログスペックを見るだけでも、その性能の高さがわかりますね。

そして、あの「アビーロードスタジオ」での採用を機に、一気に知名度があがったようです。



音作りは、いわゆるモニター系といわれるもの。

モニター系とはいっても様々な個性があるのですが、このアダムの特徴は、圧倒的な解像度とスピード感にあります。

私が購入したのは、ミッドレンジのA5Xというモデルですが、このサイズでも日本の一般的な家庭であれば十分すぎるほどの音量です。

そしてニアフィールドリスニングに限定するのであれば、いわゆるピュアオーディオといわれる超高額のスピーカーにも負けない、感動的な音場空間を再現することができます。



ちなみに、アダムを購入する前は、ELAC社のCL330JETという定価で40万円くらいのものを使っていました。

こちらもハイルドライバーの技術を採用したJETツイーターを搭載していて、高い解像度と、官能的ともいえる美しい高音域が魅力のスピーカーでした。

とても私好みのスピーカーではあったのですが、ぶっちゃけ、この10万円程度のアダムでも十分だと思えるほどの音質なのですよね。

アダムが凄いのか、技術の進歩が凄いのか、定かではありませんが。

というところで、気になってよくよく調べてみると、ELAC社のエンジニアとしてJETツイーターを開発していたクラウス・ハインツ氏がアダムの社長を務めているようで。

ということもあり、音の傾向がELAC社のスピーカーに近いのは当たり前で、そこから、いかにも高級オーディオ的な音作りを排除したような音作りのスピーカーだったというわけですね。

音の好みは移り変わるものですが、ハイレゾ再生やモニタースピーカーとして活用しようと考えている今の私にとっては、スピーカーでは余計な色づけをしたくないわけで、まさにアダムは最適なスピーカーだったわけです。



それ以外でも、、、

アンプとスピーカーがくっついているので、スピーカーケーブルで悩んだり、散財することがありません(電線病対策ですね)。

アンプが内蔵されていることをデメリットと考えることもできますが、スピーカーの性能を最大限に引き出すために設計されたアンプが付いていると考えるとメリットと捉えることもできること。

また、モニタースピーカーですので、敷居の高い高級オーディオ点にいかなくても、気軽に試聴できるということ(都内であれば、何店舗かで視聴可能なお店があるので、是非、試して下さい)。

などなど、良いこと尽くしなのです。



というわけで、私の結論。

もう、ピュアオーディオはいりませんね。

絶対的におすすめできるスピーカーです。

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