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鷲見さんの工房訪問 その②

調整前の「S-00MC(2014年製」
知らなかったのですが、、、

木材と同様、牛骨で作られているナットやサドルも、変化するんだそうです。

この「S-00MC」もサドルが抜きにくくなるくらい膨張していました。

そのため、弦高調整で高さを削るだけではなく、
少しだけ細身になるように調整していましたね。

こうすることで、ジャストすぎるものよりも
弦の振動をナチュラルにボディに伝えることができるとのことです。


サドルの高さを調整中
そしてナット側も丁寧に調整していきます。

ナットの角度は音質に影響を与えますが、
鷲見ギターの全てを知り尽くしている鷲見さんだけに、
長年の経験と勘に基づいて、最適な角度に削り出していきます。

自分の作ったギターのどこをどう変えると、
どういう音になるのか、イメージがあるんですね。

逆に、自分が作っていないギターはどうしたらいいか
全くわからないと言われていましたが(笑)


サドルの細さも調整中
これだけの調整で、かなりの変化があったので驚きました。

まず、サドルを削り、トラスロッドを調整したので、
弦高が下がり、フィンガー向けのギターに生まれかわりました

しかし、サドルを削って弦高を下げると、弦のテンションが弱くなるので、
ボディの鳴りまで弱くなってしまうのではないかと心配していたのですが、
それは大きな間違いでした。


ナットの角度、トラスロッドでの調整
ナット側の角度を調整することで弦のテンションを保ち、
サドルを細身にすることで震度の伝達をスムーズにして、

なんと「ボディの箱鳴りを増幅」させてしまったのです。

これにより、プレーン弦の固さも取れて音は柔らかくなり、
バランスが向上しました。まさにリクエスト通りの調整です!

ギターは、木工技術だけではなく、
そのギターの個性・特性を知り尽くしていないと、
適切なリペアはできないのだなと、改めて感心させられました。

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