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道具としてのギターに求められるもの。

この画像は、
前回ご紹介した1938年製の000-18(左)と
初登場の1938年製の000-28(右)です。


どちらもフォワードシフトブレーシングの

44.5ミリ幅のワイドネック仕様です。

実はかなり無茶をして2本揃えていました。



価格的にはOMという選択肢もあったのですが、

私的には、マーティンではやはり

ロングスケールのOMではなく、

ショートスケールの000が好みなんですよね。



また、オリジナルのOMは、

演奏性など、まだ改良点があるように

思ったりもしていて、

OMを買うならマーティンを発展させた

ルシアものかなと考えています。

ただ、あの暴れ馬的な魅力は、

オリジナルOMでなくては感じられないので、

難しいところではありますね。



ま、結局のところ、

無理がたたり、家計がおかしくなり、

個人的に破産(笑)

000-28は泣く泣く手放すことに

なってしまったのですが。。。


でも、もうこれ以上はないと言える

ギターを所有できたということだけでも

幸せだったと思うようにしています。



だからというわけではありませんが、

ヴィンテージギターという点では

行き着いてしまったなと感じていたりします。

ここまでくると、ヴィンテージにはないものを

求めたくなるのが男心というもので。



では、ヴィンテージギターでは満たせない

部分とは何なのか。

それは実用性であったり、実践力かと。

すなわち道具としてのギターですよね。



楽器なので道具で当たり前と言われれば

それまでですが、

ヴィンテージギターを骨董品のように

集めることも楽しみのひとつなわけで。



では、ギターを道具としてみた場合、

求められるものは何でしょう。

傷をつけても気にならないような

お手軽さというのも重要だとは思いますが、

今回は性能として何が必要かを

考えたいと思います。



それはいかなるコンディションでも

良い音色を出せる安定性だったり、

トラブルの起こらない堅牢さ、

そして音程などの楽器としての精度

ではないでしょうか。



ぶっちゃけ、ゴールデンエラ期の

マーティンも精度は高いです。

これは本当に技術力の高い職人がいたのか、

はたまた、価値のあるギターだから

丁寧にメンテナンスがされてきたからなのか。

実際のところはわかりませんが、

職人の技術力が高かったということに

しておきましょう。



それだけに、

やはり、量産されるようになった

戦後のギターには作りの甘さを

感じてしまうのです。

※量産されたことで多くの人の手に

ギターが行きわたったわけですが



では、その精度を求める場合、

どのようなギターがあるのでしょうか。

その答えの一つがルシアが作る

ハンドメイドギターです。



以前、メリルの00-18を

所有していた時期がありました。

やはり、これまた素晴らしい

ギターだったのですが、

耐久性に難があるようなことを

言う人がいるんですよね。


実際に所有していた

私から言わせてもらうと

全く問題はなかったですし、

販売しているお店でも

実際にそんなトラブルはないと

言ってました。



ただし、トラブルを訴える人が

いると言われる以上、

悪条件での使用には向かない

可能性があったのかなと。

なので、どうしても取り扱いには

気を使っていました。

やはり、現代のギターであれば、

この辺の丈夫さ、

使い勝手の良さというのが

求められるのではないかと、

あらためて考えさせられた次第です。



ここまで言えば、

わかる人にはわかるかもしれませんね。

堅牢かつ最高峰の精度を誇るギター。

そう、ついにずっと気になっていた存在であった

コリングスに手を出したというお話になります。


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