前回に引き続き、オーセンティックシリーズとメリルについて考えていきたいと思います。
マーティンのオーセンティックシリーズの誕生には、もう一人のトップルシアであるジュリアス・ボージャスが大きく関わっています。
ヴィンテージサウンドの肝と言われる、ニカワ接着の技術をマーティンに指導したんですよね。
このことは、アコースティックギター界にとって衝撃だったのではないかと想像しています。
というのも、このメリルでさえも、昔はタイトボンドでもニカワでも音は変わらないと雑誌のインタービューなどで答えていましたが、オーセンティックが発売されて以降、あっさりニカワに切り替えましたからね。
そして音色も、どんどんナチュラル指向に変わっていきました。
そして、楽器としての品質と精度の高さでマーティンを圧倒していたコリングスでさえも、音作りの変更を余儀なくされます。
例えば塗装。
コリングスも初期のものはラッカー塗装がされていました。
それが、ラッカーでもポリウレタンでも変わらないといってポリウレタンに変更したくせに、、、
オーセンティックが発売されて以降はヴァーニッシュをはじめて、さらには2016年に発売されたヴィンテージシリーズではラッカーまで復活させるようです。
しかも、ニカワ接着をまではじめているんですよね。
明らかに迷走しています。
マーティン社を例にあげても、2000年代前半にはゴールデンエラシリーズが人気を博していました。
このシリーズも、音作りは当時のコリングスに通じるところがあって、ヴィンテージサウンドの復刻というテーマではありましたが、その本質はパワー&低音重視だったように感じています。
それがやはり、オーセンティック以降は、よりナチュラルなものを目指すようになったんですよね。
メリルも2000年代まではパワー&低音重視のように感じていますが、2010年頃からは、よりナチュラルに、そしてフィンガーでも使えるバランスの良さを目指すようになったと感じています。
そして2012年頃からのニカワ導入により、さらなるヌケの良さが加わるわけです。
つまり、力強い低音や、枯れたニュアンスこそがヴィンテージサウンドと思われていたものが、プリウォーギターの研究が進み、バランスの素晴らしさや抜けの良さなど、、、
プリウォーギターの楽器としての完成度そのものを再現する方向性に変わっていったんじゃないかと思うんですよね。
そしてその極みが「ニカワメリル」だと私は感じたわけです。