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1948年製のMartin 000-18 |
過去記事「最近話題?マーティンのノーテーパード・ブレーシング」の続編です。
まずは、簡単に『ブレーシング』の説明からはじめましょうかね。
ブレーシングとは、ギター内部にある力木と言われる木で、ギターのトップやサイドバックを補強するために使われています。そもそもは補強が目的だったとは思うのですが、その力木の構造(組み方)や、形状、材質によってギターの音色が変わってくるんですよね。
で、今回は形状(スキャロップド・ノンスキャロップド)のお話になります。
マーティンでは、戦前から伝統的にこの力木をスキャロップド(削る)ことで素晴らしい音色を作ってきたんですよね。
ところが1944年、このスキャロップドは廃止されてしまいます。一般的には、より強度を求めてという話もありますが、個人的にはギター販売本数(製作本数)の増加に伴い、より生産の効率化が求められたんじゃないかと考えています。
スキャロップされていようが、なかろうが、結果としての音色が素晴らしければそれでいいはずなのですが、削って調整することをやめたと言われると、なんとなく手抜きに感じてしまうのが人間の性というものですよね。
それに加えて、戦前マーティンのプレミアムもあり、スキャロップこそ最高みたいな風潮があったりするからややこしいんですよね。
例えば、同じノンスキャロップドのギターを買うのであれば、同じスペックの1950年代、1960年代のギターであれば、1940年後半のギターよりも安く買えてしまうんですよね。そういったこともあって、なかなか手を出しにくい年代のものでした。
※Style-28系ではヘリンボーンも廃止されていたりするので、尚更、1940年代後半スペックは人気がなかったんですよね。
そこに突如として話題となったのが「1945~1948年のモデルはスキャロップされていた!」だったというわけです。画像を見て頂いても、わかるような、わからないような、とてもなだらかなスキャロップなのですが。
ここからわかることは、マーティンの職人たちが当時、試行錯誤を重ねていたのであろう事実ですね。強度をあげ、製作本数も増やさないといけない、でも、音色に影響を与えたくない。その妥協点がこのノン・テーパードブレーシングだったのではないかと。
今回はたまたま1948年の000-18を試奏させてもらうことができたのですが、実際に弾いてみても、玄人好みなバランスの良さがあり、低音から高音までコントロールされた鳴りが特徴なように感じます。
逆を言うと、プリウォーのようなアディロンダックスプルース&スキャロップドブレーシングのような派手さもなく、1950年代以降の無骨でストレートな鳴りもないので、地味な印象とも言えます。
私自身、1940年代後半のギターとはあまり縁が無く、10本くらいしか弾いた記憶がないのですが、それでもこのバランス型というのが共通した特徴のように感じています。
すっかり、ビンテージギターが値上がってしまい、なかなか購入できる値段ではなくなってしまいましたが、1940年代後半のノンテーパード・ブレーシングのギターもなかなか面白いですね。