「マホガニーの達人」第二弾はジョン・レンボーン(John Renbourn)です。
ペンタングルのギタリストであり、古楽、ケルト、ブルースなど幅広い音楽性を持ち、ギタリストとして唯一無二な存在感を誇る英国を代表するギタリストですね。
ジョン・レンボーンの使用ギターというと、Gibson J-50、Guild D-55、Franklin OMあたりが思い浮かびますが、やはり私はJ-50の頃に思い入れがありますね。
アルバムでいうと「Another Monday(1966年)」「鎧面の騎士(1968年)」「The Lady And The Unicorn(1970年)」や、ペンタングル時代全般とバート・ヤンシュとの共演「Bert And John(1966年)」あたりでしょうか。
「The Hermit(1976年)」の頃まではJ-50を使用していたと本人の発言も残されていますし、おそらくこれかな?と思う音色もありますが、既に音楽的にマホガニーサウンドの必要性を感じさせるアルバムではなくなっていると感じます。
この頃になると、変則チューニングを多用するようになっていますので、どうしてもロングスケール(全長の長い)のギターを求めるようになった背景もあるのかもしれませんね。
J-50はギブソンスケールなどとも言われる626mmのショートスケールのため、ダウンチューニングなどでは音程が合いにくくなりますし、弦のテンションも下がり、響きが弱まることを気にしたのではないかと。
ちなみに、彼が使用していたGuild D-55、Franklin OMの音色の共通点としては、どこか哀愁を感じさせる音色といったところでしょうか。
J-50というと、明るくて抜けの良いマホガニーサウンドの代表格という印象がありますが、名手ジョン・レンボーンが奏でると、マホガニーらしい抜けの良さはありつつも、どこか暗くて哀愁のある音色も引き出すことができるんですよね。
この明るさと暗さといった相反するニュアンスを同居させることができるという点が、他のギタリストとは一線を画している部分なのかなと。とにかく表情が豊かなんですよね。そして、このようにマホガニーのギターから様々な表情(魅力)を引き出せる奏者こそ、私がマホガニーの達人と考える所以なのです。
この音色を出したいと思った時には「鎧面の騎士」収録の「The Earle Of Salisbury」を試奏することをお薦めします。言わずとしれた、マホガニーサウンドとバロックの相性の良さを証明してみせた名盤ですが、この曲の冒頭のAmで、どれだけ哀愁のある響きを引き出せるのか、これこそが最大のポイントになります。
ちなみに、哀愁のあるマホガニーの音色という点では、Led Zeppleinの「天国への階段」のイントロ部分でも良いかもしれませんね。なかなか楽器屋で試奏するには勇気のいるベタな選曲ではありますが(笑)
ここでジミー・ペイジが使用しているのは、Harmony Sovereign H1260ですが、J-50と同様にスプルースとマホガニーが使われた大きなボディサイズが特徴のギターですね。
ここでローズウッドのギターを使うと、低音が強く出過ぎてしまったり、倍音が派手に鳴り響いてしまったりして、なかなか哀愁を醸し出すことが難しかったりします。
また、ジョン・レンボーンというと、バロックやトラディショナルなギタリストと分類されがちなのですが、私的には完全にロックなギタリストという分類だったりします。フレージングの構成、タイム感、グルーヴ感など、どれを取っても一流のロックギタリストだと私には感じられます。
そういったこともあって、初期のブルース・スタイルのプレイも大好きだったりします。アルバムの完成度という点では劣るものの、プレイヤー視点で聴くと、実に素晴らしいものがありますよ。
ちなみに、ソロデビュー作「John Renbourn(1965年)」でも、マホガニーに似た音色を聴くことができるのですが、これはScarthという英国製の安いギターだそうで、メイプルのボディだそうです。
まぁ、これだけの名手が弾くと、何を弾いてもジョン・レンボーンの音になってしまうのですが、サステインの短さを活かしつつ強めのタッチで低音のグルーブを醸し出すと言った、後のJ-50を活かしたプレイスタイルに通じるものがあり、非常に興味深いものがあります。
彼のJ-50は年式は判明していないのですが、仕様から判断して1960年前半のものだろうと言われています。となると、当然のことながら、ジャキジャキした音色が特徴と言われるアジャスタブルサドルが使われているのですが、、、
それを使ってもこれだけ温かみのある音色だったり、哀愁のある響きを引き出せるのだから凄い表現力ですよね。音色はピッキングのニュアンスやタッチで作るものなのだと、再認識させられた次第です。