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マホガニー図鑑「OMC-18LJ Laurence Juber(2008年製)」


ついに友人が入手しました、

ローレンスジュバーモデル。

発売当初から名器と呼ばれている

人気モデルですね。


それだけになかなかお目にかかれない

レアギターとなっています。


最初に発売されたのが2002年でしたが、

当然のことながら入手困難となり、

2008年にMartinのカスタムショップから

限定で再発されました。


このギターはその再発ものですね。

友人のご好意で、たくさん試奏させて

もらえましたので、

早速、図鑑に登録させてもらおうかと。



まずはスペックから。

サイドバックはマホガニー、

トップにはアディロンダックスプルース。


フィンガースタイル向きと言われるOMサイズ。

そして、ハイポジションでの演奏性の高い

カッタウェイ付き。


まさに即戦力、実戦向きのギターと言えます。



そして音色のインプレッションですが、

アディロン・マホの最強の組み合わせが〜とか、

力強い低音が〜、

美しい高音域が〜とか、

色々語れるのかなと思っていたのですが、、、


弾けば弾くほどこれはちょっと違うな

という印象を持ちました。



このギターを弾いていて強く感じたのは、

とにかく、

「圧倒的にバランスのいいギターだ」

ということでした。



このギターのレビューなどを見ると、

アディロンとマホガニーの組み合わせだから

音がすごい!!

などと評価される方もいらっしゃいますが、

私はそうは感じませんでした。



このブログでもアディロン・マホのギターを

数多く紹介してきていますし、

ジュバーモデルに関しても、

今まで5本程度試奏してたこともあるのですが、

やはり私的にはあまりアディロンらしさを

感じなかったんですよね。

これは意外に思われる方も

多いかもしれませんね。



なぜその結論に至ったのかというと、、、


たまたまなのですが、

このギターを購入時にOM-18 Authenticが

お店にあったので、

比較させていただいたのです。



いわゆるアディロンダックらしい倍音感や、

ロングスケールのOMらしい

暴れ馬のような力強い鳴り、


音の立体感などは、

やはりオーセンティックの方が各上だなとは

感じてしまうのですが、

この二本を弾き比べることで、

それまで想像していたのとは異なる魅力が

このジュバーモデルにはあるということに

気づかされたんですよね。



ジュバーと比較すると、、、


例えば、以前所有していた

ゴールデンエラシリーズ(D-18GE、000-18GE)は、

今思えば、あざといくらいにアクの強い

アディロンマホらしさを感じさせてくれる

音色だったなと思います。



これが格上の

オーセンティックシリーズになると、

楽器としての完成度が高まり、

単体での音色(クセ)は大人しくなるものの、

演奏時の音色のバランスや音の立体感などは

さすがだなと思わせてくれる仕上がりに

なっているんですよね。



一方、このジュバーモデルは

単音の個性は弱く、

「平面的」な鳴りではあるのですが、

使う人や目的によっては、

全てがちょうどいいギターだなと

思ったわけです。


そしてこの「平面的」

という表現についてですが、

ギターの設計思想として、あえて、

鳴りを抑制しているように感じています。

軽くコンプレスをかけたような音色です。


それは決してネガティブな意味ではなく、

実はこの抑制感こそが絶妙で、

フィンガーでもストロークでも何にでも

使える素晴らしいバランスに

仕上げられていると感じているのです。



人によって

さまざまな評価ポイントがあるとは思うし、

ジュバーモデルよりも優れたギターも

沢山あるとは思いますが、、、


これだけ高いバランスで

様々な要素が揃っているギターって

なかなかないなと。


それがこそが、

このギターを名器と呼ぶ人が多い

理由かなとも思いました。


また、このギターはわかりやすさよりも、

使いやすさに重点が置かれた

通好みなギターであり、

様々なギターを経験された人でこそ、

この魅力がより一層わかるのではないか、

とも思いました。


そして、最後に手元に残したいと思えるのは

このようなギターなのかもしれない、

と今は考えています。


素晴らしいギターでした。


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