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村治佳織さんの、ラプソディ・ジャパンを聴く。

『Rhapsody Japan(通常版)』のジャケット。

村治佳織さん。

私的には、テレビ東京の「タモリの音楽は世界だ」やYOUNG GUITAR誌に連載していたころから、長いこと追いかけているギタリストですね。

とは言っても、それほど筋金入りのファンということでもないのですが、それでも、良い時も、悪い時も、応援し続けてきたと自分では思っています。

自分と年齢が近いこともあり、不思議と親近感がわくんですよね。

村治さんが頑張っていると、自分も頑張らねばと思ったり。。。

そんな村治さんが、5年ぶりのニューアルバムをリリースしたというお話です。



日本トップクラスのクラシックギタリストに対して、大変失礼な言い方になってしまうのですが、この作品を聴いた私の第一印象は、、、

「この人、こんなにギターを歌わせることができたんだ!」

ということでした。

かれこれ20年以上聴き続けているわけですが、これほどまでの感動ははじめてでした。

それくらい、この作品には歌心があるのです。

また、なにか吹っ切れたような自由さがであったり、演奏には躍動感や生命力も満ち溢れていて、今までの作品とは違うと感じさせる何かがあるのです。

もちろん、2013年の休養宣言後、復帰第一弾ということもあって、そういった先入観がないわけではありませんが。



是非、1998年に録音された「カヴァティーナ」(同名タイトルの『Cavatina』に収録)と、本作ラストに収録された演奏を聴き比べて下さい。

大袈裟な表現かもしれませんが、彼女の人間としての成長や、音楽性の広がり、深まりを演奏から感じ取れるはずです。

そしてこのアルバムは『コユンババ』、この一曲に尽きます。

イタリア人のギター演奏家、作曲家であるカルロ・ドメニコーニによって書かれたこのオリエンタルな楽曲を圧巻のスケールと多彩な音色で表現しています。

また、村治佳織といえばロマニリョスというイメージがありますが、『原点に帰る』という意味を込めて、この曲ではデビュー時に使っていたポール・ジェイ・コブソンを使っています。

やはり、何か強い思いがあるんですね。

思えば(通常版の)ジャケット写真も、今までの作品とは異なり、どこか彼女の強い意志や、決意のようなものを感じさせます。

とても強い眼差しです。



リリースからちょっと間が空いてしまいましたが、何かを始めたい、何かを変えたいといった思いを抱く新年に相応しい作品だなと思い、紹介させていただきました。

よし、私もまた一年、頑張るぞ!

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