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お陰様でこのブログも10周年を迎えることができました。

とはいえ、私の性格上、 10 周年だからといって特別な記事を書く気もないのですが。 ただ、滅多にない機会ですので、普段の記事としては書きにくいことを書いておきたいなと思います。 この 10 年で私が学んだこと、、、 やはり「音色の評価は難しい」ということに尽きますね。 この難しさとは、 ・音の感じ方は人それぞれ ・音の言語表現も人それぞれ ・楽器の使用目的も人それぞれ ということです。 そもそも音を聴く耳の構造にも個人差があるし、聴こえた音に対する脳での処理も違うはずです。 つまり、すべての音がすべての人に同じように聴こえているとは限らないのです。 さらには、その聴こえた音を言語化しようとすると、個人的な感性に基づいたバラバラな表現になってしまいます。 つまり、よほど近い環境・経験や価値観を持った人同士以外では、ギターの音色の良し悪しのコミュニケーションは成立しにくいのです。 ぶっちゃけ、これが一番この 10 年で痛感させられたことかもしれません。 また、そういった人間の個体差を除いたとしても、その日の体調や気分、天候によっても聴こえ方、感じ方は変わります。 高音域が耳に痛いと感じるギターでも、梅雨時の湿度が高い時期にはバランスが良く聞こえることもあるかもしれません。 もしくは、音の抜けが悪いなと思うギターでも、冬の乾燥した時期になるとちょうどいいバランスで鳴り出すなんてこともあるかもしれません。 さらには環境による影響も大きく、試奏した楽器屋と持ち帰った自宅でも当然のことながら響きは変わってきます。 また、同じ自宅だとしても、壁の近くで演奏するだけで高音域が反射しやすくなり、音のバランスが変わって聞こえるようになります。 これだけの変動要素があるのに、ギターの良し悪しをあたかも絶対的なもののように語るって何なのかなと、ブログを書きながら自問自答することがよくありました。 と言うこともあり、私の書いている記事も含め、あまりギターの音色について語っている人を信用しない方がいいですよというのが、 10 年続けて辿り着いた答えかもしれません(笑) ですので、もっと客観的に捉えられるもの、例えばボディサイズやシェイプ、スケールの長さといった定量的に評価できる要素を軸に語り合うべきかなと今は考えるに至っています。 もしくは、現在研究中ではありますが、周波数特性を基にした分析で...

これだけアコギに散財してきた男が、どのようなエレキを購入するのか④:Brownie(ブラウニー)を手に入れる。

散々引っ張ってしまいましたが、私が購入したのは Fender Custom Shop の 1956 年仕様のストラトキャスターでした。 56 年前期を再現したメイプル指板、アッシュボディ、 2 トーンカラーのサンバーストのモデルですね。 私もうっかりしていて、購入した時には全く意識していなかったのですが、実はこの仕様はあの「 Brownie (ブラウニー)」をイメージしたものだったんですよね。 ブラウニーと言えば、エリック・クラプトンがデレク・アンド・ザ・ドミノス期に使用していたサンバーストのストラトですね。アルバム「愛しのレイラ」でも使用されたことでも有名です。 アッシュボディということもあってか硬質な音色が特徴で、「美しすぎる高音域」が最大の魅力ですかね。また、低音域もブーミーにならず締まりのある音色で、まさに私の好みでした。 正直なところ、この音色がアッシュと言う材による影響なのか、 56 年前期の音色の特徴に似せているからなのかはわからないのですが。その両方かな。 ちなみに友人が購入したアルダーボディの 57 年仕様と比較すると、大まかな音色の傾向は近いのですが、 57 年仕様 は アルダーボディらしい落ち着いた中域寄りの音色が特徴といったところでしょうか。 汎用性が高く、ヴィンテージらしさと現代的な使い勝手の良さが絶妙にバランシングされた素晴らしいギターだと思いました。 一方、 56 年仕様はギターそのものの個性が強いので、エフェクターで音を変えるよりもアンプ直か軽いオーバードライブなどでギターの音色を活かすような使い方が向いているかなと感じています。そのため、現代的な楽曲で使う場合には難しい場面もあるかもしれません。 また、このギターを買う際にその他のカスタムショップもひと通り試奏させてもらいましたが、総じてこの 50 年代仕様のモデルに言えることは極めてアコースティックな質感であると言うことです。 当然のことながらエレキギターの音ではありますが、とにかく空気感や音の抜け感が優れていて、弾いている時のニュアンスやレスポンスがまるでアコースティックギターを弾いているような感覚に近いんですよね。 また、倍音が多く、ダイナミックレンジも広いので、単体で弾くととても心地良い音色なんですよね。その反面、バンドの中では埋もれてしまう可能性もありますが。 一方、 60...

これだけアコギに散財してきた男が、どのようなエレキを購入するのか③:Blackie(ブラッキー)にまつわる話を少々。

  画像は 2004 年にクリスティーズのオークションでエリック・クラプトンのギターが出品された時に作られたカタログです。当時、このカタログがどうしても欲しくて、海外から取り寄せたんですよねー。 そしてカタログの表紙を飾っている「ブラッキー」ですが、 95 万 9,500 ドル(当時の為替レートで約 1 億円)で落札されたんですよね。当時は凄いなと思いましたが、今思えば相当安かったのかもしれませんね。もちろん、買えるわけはないのですが笑 この「ブラッキー」ですが、クラプトンがデレク・アンド・ザ・ドミノスの米国ツアー中に入手したものです。 1970 年のお話です。 当時、テネシー州ナッシュビルの楽器屋ショー・バッドで、中古の 1950 年代のストラトキャスターを 6 本購入したと言われています。その中の 3 本からパーツを選りすぐって組み上げられたのが通称「ブラッキー( Blackie )」と呼ばれているギターなんですよね。 個人的に面白いなと思ったのは 1970 年の時点で新品のギターを買うのではなく、 1950 年代の中古を選んでいるということです。 クラプトンほどの知名度があれば、スペシャルなギターをオーダーできたであろうに、あえて中古を選んだわけですよね。 クラプトンは既にこの時点でヴィンテージの魅力というものを理解していたのかもしれませんね。もしくは、この 1950 年代の仕様に特別なマジックを感じていたのか。 で、この「ブラッキー」ですが、 1973 年 1 月にロンドンで行われたレインボーコンサートにてお披露目され、 1985 年 5 月のコネチカット州ハートフォード公演まで使われました。 ということもあり、「ブラッキー」と言うとなんとなく 1970 年代のクラプトンというイメージがあるのですが、実は 1974 年のツアーではメインギターとしてギブソンのエクスプローラが使われてたりするんですよね。歪み成分が多く、太い音色が特徴です。 そして 1975 年のツアーからは「ブラッキー」の使用頻度は増えるものの、それでもサンバーストのストラトや日本公演で使われたテレキャスターなど、この時期はあまりブラッキーにこだわりがなかったのかな?なんて思ったりしています。 その後、完全に「ブラッキー」に一本化されたのは 1976 年頃と思われます。個人的には、この...

1940年製の「Martin D-45」の音色を味わう。

  「 NHK MUSIC SPECIAL  福山雅治〜時を超えるギター」 みなさん、番組見られましたか? ちなみに昔、ブログでも書かせていただきましたが、私は福山さんのラジオを 20 年以上聞き続けている筋金入りのヘビーリスナーだったりします。(あえて、ファンとは言いません) 本当にラジオの福山さんは楽しくて(特に結婚前は)、自分の生活の一部として欠かせない存在でしたし、誠に勝手ながら自分のアニキのような存在だと思い、今でも慕っています。 そんな福山さんが購入したプリウォーの D-45(1940年製) をマーティン本社を訪問し、リペアしてもらうという企画で、アコギ好きには堪らない素晴らしい番組でした。 しかも、戦前にその D-45 が作られたであろう工房で弾き語りまでしてしまうのです。 普通の人間なら恐れ多くてできないことを福山さんならやってしまう、許されてしまうのが凄いところだと思います笑 流石に本人も、歴史あるマーティンの工房でそんなことするなんてと考えたとは思いますが、福山さん本人の意思に関わらず、やってくださいと頼まれてしまうのでしょうね。 そしてその役割を理解し、演じ切れてしまうのが福山さんが『福山雅治』たる所以なのでしょう。ただギタープレイを見る限り、いつもよりは思い切りがないように感じました。そんなところも好きです笑 内容はみなさんの目で見てほしいですが( 11 月 13 日 23:50 から再放送あり)、マーティンが好きな方なら、間違いなくロマンを掻き立てられるような内容でしたね。 しかし、以前ラジオでは、プリウォーの D-45 を買いませんか?というお誘いはあったけど、高すぎるからお断りしたみたいなことを言っていた記憶はあるのですが、、、ついに買ってしまったのですね。 福山さんが買えないわけはないのですが。 ただ、アコギ好きな人間から言わせてもらうと、今回の映像ではプリウォーの D-45 の音色の魅力は伝えきれていなかったように感じます。 また、福山さん自身の歌声もいつもより低音が弱く感じられたので、きっと D-45 も豪華な倍音感を録音しきれていなかったのではないかと思うんですよね。 この辺りは今後使われるであろうレコーディングでの音色に注目していきたいところですかね。 この流れだと、紅白でプリウォーの D-45 使ったりする...