ギブソン話もいよいよ終盤戦、1960年代後半のギブソンです。
今回は1965年以降のいわゆるナローネック期について考えていきます。
ナローネックとはナット幅がエレキ並みの39ミリの形状を指します(通常は42〜45ミリ程度)。
使用アーティストで言うと吉田拓郎さん、山下達郎さんなど錚々たる顔ぶれだったりします。
このナローネックですが、箱鳴りよりも弦鳴りが強く、ストロークやカッティングに向いたジャキジャキした音色をイメージしますよね。
ネックが極細なため、エレキギターからの持ち替えでも違和感が少ないなど、演奏性でもメリットがあると感じる人もいて、音色が合うのであればまさに唯一無二の存在となりうるギブソンと言えます。
ただ今回取り上げたいのは、そんなジャキジャキではない1960年代後半のギブソンのお話でして、、、
それは、画像でも使用している秦基博さんの1966年製のJ-45となります。
デビュー直前に購入され、それからずっと使い続けているので、もはやトレードマーク的な存在ですね。
そして、つい最近、国内5人目のギブソン・シグネチャーアーティスト認定とのニュースが。
シグネチャーアーティストとしては、B'zの松本孝弘さん、斉藤和義さん、生形真一さんに続く認定なので、かなり凄いことだと思います。
で、この秦基博さんのJ-45ですが、昔からやけに音がいいと感じていたんですよね。特にライブ。
個人的には弱音時の表現が本当に美しいと思うんですよね。
温もりと澄んだ高音域を併せ持つ理想的なマホガニーサウンド。
ただ、長年、ギブソンをいろいろ試奏して来た身からすると、その年代のギターからその音は出ないはずなんですけどね笑
よく、J-50を何本弾いてもジェームス・テイラーの音は出ないというあるあるネタがありますが、秦基博さんの音はそれ以上の難易度と感じています。
これ、いろいろ考えていたのですが、本質的には、、、
・秦基博さんのダイナミクスの表現及び、ピッキングがとんでもなくうまい
・ギターのセットアップがとんでもなく優秀(ピックアップの取り付けと音作り)
かなと考えています。
きっと生音はそこまで大きくないと想像しますが、鳴りにくく余計な倍音の出ない1966年製だからこそ、マイクやピックアップで音を拾いやすく、録音時やPAを通した後のダイナミクスを表現・加工しやすのかなと考えたりしています。
で、技術的なことだけだと我々素人ギタリストには夢がなさすぎるので、あの音に少しでも近づくためにどうしたらいいのか。
少し仕様の部分にも触れておこうかと思います。
この秦基博さんのギターの特徴としては、アジャスタブルサドルを固定サドルに変更しているんですよね。
もともとは、セラミック製のサドルが付いていたと思うのですが、それを牛骨製のサドルに変更しています。
通常、オリジナル性が損なってしまうので、高価なヴィンテージのサドルを変更することを私はお勧めしませんが、、、
この1960年代後半のギブソンに関してだけは、試してみる価値があるかもしれないと考えています。
というのも、そもそも鳴りやすい1950年代後半から1960年代のアジャスタブルサドルを固定サドルに変えてもあまり大きなメリットは得られないと個人的には思っているのですが、、、
この鳴りにくいとされる1960年代後半を固定サドルにすると、箱鳴り感が増加し、絶妙なバランスに変化するのではないかと考えているからです。
もちろんデメリットとしてジャキジャキ感は薄れ、カッティング適性は落ちてしまいますが、私の好みの方向性にシフトすると考えられます。
そういえば、オットリーヤさんで秦基博ドンピシャの1966年製のJ-45もいい音してたなと思いました。
あれも固定サドルに変更されていましたね。
こうやってみていくと、ネックが細く、薄くなると低音が弱まる傾向があることを再認識させられますね。
そして、低音が弱まれば弱まるほど録音向きになっていくので、言い換えると現代的で使いやすいギターとも言えるかもしれませんね。
この頃を境に、ギブソンはどんどん鳴らないギターに変わっていき、ギブソンはダメになったなぁと言われますが、、、
当時の音楽事情を振り返ると、レコードやテレビ・ラジオ出演がメインだったでしょうからね。
過剰な低音などますます要らなくなっていた時代なのでしょう。
そのため、この変化は極めて自然な流れなんじゃないかなと私は考えています。
やはり、楽器は使い方の問題ですよね。
今でも1960年代後半のギブソンを愛し、第一線で活躍している人がいるわけですしね。
なので、個人的にはギブソンは別に何も悪くなってないでしょ、と思うわけです(もちろん、1960年代後半までの話ですが)
次回、もう少し1960年代後半のギブソンに触れておきたいと思います。
