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「オイルを塗るのか、塗らないのか」メンテナンスについて考える④

 


今回は、前回の椿油に引き続き、オイル繋がりで、指板のメンテナンスで使われるレモンオイル、オレンジオイルを取り上げてみようと思います。たかがオイルの話なのですが、これもまた以前取り上げたことのある「弦を緩めるのか、緩めないのか」と並び、諸説のあるテーマで、取り扱うのが面倒なネタだったりします。

「弦を緩めるのか、緩めないのか」メンテナンスについて考える②


そもそも、オイルを塗った方がいいのか、悪いのか、それすらはっきりしていません。効果についても、これといって目に見えるものでもないですし、数値で表すことも難しいので、判断できないのです。


また、個人的な見解ですが、そもそも指板をオイルで綺麗に掃除するような人であれば、きっと楽器そのものも丁寧に取り扱っているはずですからね。そもそも、トラブル自体が少ないのではないかと思うわけです。つまり、その方がオイル塗った方が良いですよと言ったところで、必ずしもオイル単体の効果とは言いきれないのではないかと。


オイルを塗った方が良い派の意見としては、指板の保湿効果をあげる人が多いと感じます。オイル自体も自然蒸発しますが、少なくとも水分よりは蒸発に時間がかかるので、短期的に見れば保湿効果はあるのでしょう。でも、みなさん考えてみてください。


例えば自分の手を例にあげてみます。細胞も生きていて、水分補給もされている人間の手でさえ、冬場には乾燥して肌が荒れてしまいます。ハンドクリームを塗ったところで効果は一時的で、肌は荒れてしまいますよね。


それにも関わらず、細胞が死んでいて、かつ、自分では水分補給もできない状態になっている指板が、オイルを塗るだけで保湿が可能なのでしょうか。しかも、塗ったとしても、年に1~2回とか、多くて弦交換の都度塗るだけです。それだけで、木を乾燥から守ることができるのでしょうか。


もちろん、オイルを塗らないよりは塗った方が短期的には保湿できます。でも、乾燥対策ということであれば、指板が乾燥して問題が発生する前に、その他の部分、例えばトップ材のスプルースなどが先に影響が出てしまうのではないでしょうか。


ですので、保湿を気にするのであれば、指板にオイルを塗るような局所的な対応ではなく、ギター全体の湿度管理を徹底した方が効果的ではないかと思うわけです。


でも、リペアマンやメーカーなどでもオイルを使っているじゃないかと、反論される方もいらっしゃると思います。ただ、それは顧客に手渡す時にベストな状態にしておきたいというだけなのではないかと考えています。


指板はどうしても、汚れが蓄積しやすい場所ですからね。しかも皮脂のような油系の汚れが堪りやすいので、よく「油汚れは油で落とす」と言われるように、オイルが効果的というわけです。


さらには、ギターのメンテナンスでよく使われるレモンオイル、オレンジオイルのような柑橘系のオイルには「リモネン」と呼ばれる物質が多く含まれており、これが油系の汚れに効果が高いのです。


ただ、ここで一つ問題が出てきます。このリモネンという物質、かなり酸性が強いのです。強い酸性の物質を指板に塗ると、当然のことながら木材以外の部分にも影響を与える可能性が考えられます。


例えば、フレットなどの金属に使うと、サビやくすみの原因になりますし、指板のポジションマークやインレイ、バインディングなどにも影響があるかもしれません。また、万が一、ラッカー塗装のボディ部分についてしまうと、塗装が割れたり、溶けたりする可能性があります。これはかなりのリスクですよね。


また、実はこの柑橘系オイルの取り扱いがとても難しくて、オイルの中でも酸化しやすい部類に属しています。酸化しにくいと言われる、椿油でさえも、取扱説明書を見ると開封後、6カ月程度を目安に使いきるように書かれていますからね。柑橘系オイルの場合、もっと早く使いきることが望ましいと考えられます。


そして我々素人の使用量で考えると、レモンオイルを一本使い切るなんてなかなかできないので、実は酸化しまくったオイルをひたすら指板に塗りたくっているのが実情なのかもしれないのです。これが本当にギターにとって良いことなのでしょうか。もちろん、お店やメーカーの方であればオイルが新鮮なうちに使いきれるとは思いますが。


総合すると、少なくともオイルが自然蒸発するまでの間は保湿効果は得られるでしょうし、指板の清掃にも非常に効果が高いので、目的にあった正しい使い方をすればオイルは効果的だと考えられます。


ただ、日々のメンテナンスにおいて、レモンオイルを塗る頻度などから考えると、保湿効果は限定的ですし、オイルの鮮度や使用時のリスクなどを考えると、我々素人が使用するにはあまり適さないメンテナンス方法なのではないかと私は考えます。


やはり保湿を気にするのであれば、ギター全体の湿度管理を徹底すべきだし、汚れを落とすには丁寧な乾拭きが一番安全なのかなと思うわけです。どうしても指板の汚れが気になるということであれば、柑橘系ほどの効果は期待できませんが、それこそ椿油を使用してもいいのかもしれません。


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